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若年層の生保加入の状況と要因 -就労形態の差異を考慮したコミュニケーションの必要性-

井上 智紀
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若年層が生保離れしていると言われるようになって久しい。この背景としては、非正規雇用者の増加や所得の伸び悩み、家族形成に関する意識や実態の変化など、様々な要因が語られている。本稿では、若年層におけるいわゆる生保離れの実態とその要因について、明らかにすることを試みた。
20~30歳代若年層の生命保険加入の状況については、就労形態や家族の状況、価値意識により、また、日常的な保険との接点によって異なり、非正規雇用者では、特に男性で、30歳代後半になっても正規雇用者に比べ加入が進んでおらず、加入者においても「死亡保障」への加入が低い水準に留まっていることが明らかとなった。若年層における加入率の低迷は、若年男性における非正規就労の拡大に起因している可能性があるといえる。
一方で、加入を左右する要因については、家族形成に関する実態・意識や保障準備に関わる意識、日常生活における保険との接点の多寡が影響していることも示された。加えて、就労形態別の分析からは、正規雇用者、非正規雇用者のいずれにおいても、「結婚」ではなく、「子ども」が加入を左右する要因となっている可能性が高いこと、非正規雇用者では、加入の有無を左右する日常生活上の保険との接点が、ほぼプッシュ型のチャネルに限定されていることも示された。
人口減少下において市場の縮小に直面する生保業界としては、男性非正規雇用者にどのようにアプローチし、開拓していくかが大きな課題といえるだろう。非正規雇用者の日常的な保険との接点が、主として広告媒体に限られており、営業職員や代理店などのチャネルを通じたニーズ喚起が困難であることを考えれば、様々なメディアを組合せた複合的な広告コミュニケーションを通じて保障の必要性を訴えかけるとともに、彼らにとって身近な家族や友人等を通じた間接的な加入勧奨が必要となろう。
一方で、生命保険の非加入理由の最上位として挙げられている経済的な要因については、就労形態の差異による副次的なものと考えられた。ただし、低所得であることが家族形成を妨げているのであれば、経済的な障壁についても、引き続き大きな要因として捉えていくべきだろう。
(2013年04月15日「基礎研レポート」)
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