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- 「保険」との適切な距離感とは-「生活保障調査」からみる若年加入者の加入状況の変化
2017年01月17日
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1――はじめに
これまでにも様々な業界において若年層の「○○離れ」が喧伝されてきた。保険においても例外ではなく、拙稿(2013)1においても、晩婚化や少子化、非正規雇用の拡大に伴う所得の伸び悩みなどを要因とした若年層を中心とした加入率の低下について指摘してきた。一方で、結婚や出産といった家族形成に関わるライフイベントを経験した層では、従来と同様に保障準備に向けて行動している。実際に、(公財)生命保険文化センター(以下、文化センター)の「平成28年度 生活保障に関する調査(以下、生活保障調査)」をみても、20~40代における生命保険・個人年金保険加入率は、男女とも未婚者が6割台となっているのに対し、既婚者や子どもがいる層では8割を超えていることから、結婚や出産といった家族形成にまつわるライフイベントは依然として生命保険加入の契機となっているものと思われる(図表- 1)。
では、生命保険の加入者層では、従前と同様に十分な保障額の生命保険に加入しているのだろうか。本稿では、生命保険の加入金額に焦点をあて、家族形成期にある20~40代の加入状況について概観していく。なお、分析には、文化センターより提供を受けた2004年調査から2016年調査の5回分の「生活保障調査」の個票データを用いる。
1 井上智紀(2013)「若年層の生保加入の状況と要因 -就労形態の差異を考慮したコミュニケーションの必要性-」『基礎研レポート』2013年04月15日
1 井上智紀(2013)「若年層の生保加入の状況と要因 -就労形態の差異を考慮したコミュニケーションの必要性-」『基礎研レポート』2013年04月15日
2――生命保険加入者の加入保険金額
これを未既婚・子どもの有無や所得、夫婦の就業形態別にみても同様の傾向がみうけられる。男性では既婚で子どもがいる片働き世帯こそ、2016年で2,901万円と2007年(3,053万円)との差は100万円程度に留まるものの、その他の層では属性によらずピーク時からは500万円以上減少している(図表- 3)。女性においても保障額の変化の方向性は同様であり、属性によらずピーク時からは200万円以上、減少している。
これらの結果は、伝統的な性別役割分業の形態を取る片働き世帯においては、従前同様、夫側が高額な死亡保障に加入しているのに対し、夫婦双方が主要な稼得者である共働き世帯、特に常雇同士の世帯においては、夫婦ともに保障の圧縮を進め、死亡保障から離れつつあることを示している。また、未婚者では冒頭に示した加入率に加え、加入金額においても所得水準に関わらず減少傾向にあり、加入率、加入金額の両面において保険から離れつつあるようである。
これらの結果は、伝統的な性別役割分業の形態を取る片働き世帯においては、従前同様、夫側が高額な死亡保障に加入しているのに対し、夫婦双方が主要な稼得者である共働き世帯、特に常雇同士の世帯においては、夫婦ともに保障の圧縮を進め、死亡保障から離れつつあることを示している。また、未婚者では冒頭に示した加入率に加え、加入金額においても所得水準に関わらず減少傾向にあり、加入率、加入金額の両面において保険から離れつつあるようである。
(2017年01月17日「基礎研レポート」)
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