- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- アジア経済 >
- 【インド】紙幣刷新で景気下振れも、政治的には成功か
2016年12月30日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■要旨
■目次
・突然のデマネタイゼーションで国中が混乱
・短期的には消費の落ち込みが懸念
・紙幣刷新のメリットは長期に渡って続く
・国民の反応は良好、政治的には成功か
- 11月8日、インド政府が高額紙幣の刷新に踏み切った。発表から4時間後に廃貨となった旧500ルピー札と旧1000ルピー札は貨幣の86%を占める。しかし、あまりに突然すぎる実施のために新紙幣の流通が遅れて銀行やATMの前には長い行列ができるなど国中が大混乱に陥った。
- 経済面では、短期的には現金不足による消費の落ち込み、仕入れや賃金の支払いに窮して生産活動が停止するなど景気の落ち込みは避けられない状況だ。しかし、その後はペントアップデマンドで消費が高い伸びを示し、徐々に本来の水準に落ち着いていくだろう。もっとも地下経済対策の影響で不動産など高額取引は引き続き弱含むだろう。
- 紙幣刷新によるメリットはブラックマネー対策であり、不正所得の捕捉による一時的な税収増、また長期的にも犯罪・テロの抑制、汚職是正がビジネス環境の改善にも繋がるものとみられる。また廃貨のショックが現金文化からの脱却に寄与し、銀行貸出の増加や電子決済の普及を促す効果も期待される。結果、今回の紙幣刷新は、短期的には景気の下振れに繋がるものの、その後は長期に渡ってプラスの影響が上回ると考えられる。
- 紙幣刷新の手法としては計画的に廃貨を進めることで景気の下振れをなくしつつ、現金文化からの脱却をターゲットにした方が良かったように思えるが、国民の反応は概ね良好だ。自身の経済的困窮よりも不正所得で潤う悪人に大打撃を与えたという痛快さが上回ったためであろう。しかし、国民感情は一ヵ月程度の現金不足に耐えたとしても、現在拡がる経済への悪影響が認識されるなかで支持率が低下する可能性もあるだろう。来春の州議会選挙までに国民感情がどう変化するか注目すべきポイントだ。
■目次
・突然のデマネタイゼーションで国中が混乱
・短期的には消費の落ち込みが懸念
・紙幣刷新のメリットは長期に渡って続く
・国民の反応は良好、政治的には成功か
(2016年12月30日「基礎研レター」)

03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/06/23 | 東南アジア経済の見通し~政策対応で内需は底堅いが、外需は不透明感増し、景気減速へ | 斉藤 誠 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/06/13 | インド消費者物価(25年5月)~5月のCPI上昇率は+2.8%、食品価格の低下が続いて6年ぶりの低水準に | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
2025/06/12 | インド株式市場における国内投資家の存在感と資金構造の変化 | 斉藤 誠 | 基礎研レポート |
2025/06/09 | インド経済の見通し~金融・財政政策の下支えにより+6%台半ばの堅調な成長が続く | 斉藤 誠 | Weekly エコノミスト・レター |
新着記事
-
2025年06月27日
銀行と保険の気候関連リスク管理の強化にむけた取り組み(英国)-PRAの協議文書より。 -
2025年06月27日
資金循環統計(25年1-3月期)~個人金融資産は2195兆円と伸びが大きく鈍化、家計のリスク資産投資は加速 -
2025年06月27日
雇用関連統計25年5月-新規求人倍率は3年6ヵ月ぶりの低水準も、労働市場全体の需給を反映せず -
2025年06月27日
米減税の実現で無保険者急増の可能性-減税・歳出法案(OBBBA)成立で無保険者が今後10年で1,090万人増加する見込み -
2025年06月27日
中国「親ガチャ」就活?-2億円預金で大手企業インターン
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
【【インド】紙幣刷新で景気下振れも、政治的には成功か】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
【インド】紙幣刷新で景気下振れも、政治的には成功かのレポート Topへ