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- 【インドGDP】7-9月期は前年同期比7.3%増~消費主導の高成長も、先行きは減速不可避~
2016年12月01日
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2016年7-9月期の実質GDP成長率1は前年同期比7.3%増と、前期(同7.1%増)から上昇したものの、市場予想2(同7.5%増)を下回った。
需要項目別に見ると、民間消費と政府消費が景気の牽引役となっていることが分かる(図表1)。
GDPの約6割を占める民間消費は前年同期比7.6%増(前期:同6.7%増)と上昇した。政府消費は同15.2%増と、前期の同18.8%増から低下したものの、公務員昇給の影響で二期連続の二桁増となった。一方、総固定資本形成は同5.6%減(前期:同3.1%減)と、マイナス幅が拡大した。
外需については、輸出が同0.3%増とプラスを維持したものの、前期の同3.2%増から低下した。一方、輸入も同9.0%減(前期:同5.8%減)とマイナス幅が拡大した結果、純輸出の成長率への寄与度は+2.3%ポイント(前期:+2.1%ポイント)と2期連続のプラスとなった。
なお、昨年のGDP算出方法の変更以降、成長率を大きく押し上げている統計誤差の寄与度については、7-9月期が+1.5%ポイントと前期の+0.9%ポイントから拡大した。
需要項目別に見ると、民間消費と政府消費が景気の牽引役となっていることが分かる(図表1)。
GDPの約6割を占める民間消費は前年同期比7.6%増(前期:同6.7%増)と上昇した。政府消費は同15.2%増と、前期の同18.8%増から低下したものの、公務員昇給の影響で二期連続の二桁増となった。一方、総固定資本形成は同5.6%減(前期:同3.1%減)と、マイナス幅が拡大した。
外需については、輸出が同0.3%増とプラスを維持したものの、前期の同3.2%増から低下した。一方、輸入も同9.0%減(前期:同5.8%減)とマイナス幅が拡大した結果、純輸出の成長率への寄与度は+2.3%ポイント(前期:+2.1%ポイント)と2期連続のプラスとなった。
なお、昨年のGDP算出方法の変更以降、成長率を大きく押し上げている統計誤差の寄与度については、7-9月期が+1.5%ポイントと前期の+0.9%ポイントから拡大した。
鉱工業は同5.2%増(前期:同6.0%増)と3期連続で低下した。内訳を見ると、好調が続いていた電気・ガス業は同3.5%増(前期:同9.4%増)、製造業は同7.1%増(前期:同9.1%増)と、それぞれ低下した。また鉱業は同1.5%減(前期:同0.4%減)と2期連続のマイナスとなった。一方、建設業は同3.5%増(前期:同1.5%増)と上昇した。
農林水産業は同3.3%増(前期:同1.8%増)と上昇し、3期連続のプラスとなった。9月に一部で収穫が始まったカリフ期(雨季)の生産拡大が追い風となった。なお、10-12月期についても農業生産の拡大が見込まれる。
農林水産業は同3.3%増(前期:同1.8%増)と上昇し、3期連続のプラスとなった。9月に一部で収穫が始まったカリフ期(雨季)の生産拡大が追い風となった。なお、10-12月期についても農業生産の拡大が見込まれる。
7-9月期の消費の再加速は、7月から支給が始まった第7次公務員昇給(平均+23.55%増)と比較的順調だったモンスーンの降雨を背景とする消費者マインドの改善が主因だ。また7-9月期の消費者物価上昇率が同5.2%増(前期:同5.7%増)と、カリフ期の出荷によって豆類や野菜などを中心に低下したことや昨年1月から続く中央銀行の段階的な金融緩和も消費をサポートしたとみられる(図表3)。実際、7-9月期の自動車販売台数(二輪・三輪含む)は同19.1%増と、前期(同13.4%増)から一段と拡大するなど耐久財消費の力強さは顕著である(図表4)。
一方、投資は一段と悪化した。投資の内訳は開示されてはいないが、投資プロジェクトの再開によって政府の投資支出が拡大(7-9月期:同23.5%増)したことから、7-9月期の投資の落ち込みは民間投資によるものだろう。低調な海外経済を背景に企業の投資意欲が依然として弱いことに加え、不良債権問題を抱える銀行は貸出に消極的になっていることが民間投資の低迷に繋がっている。
総じてインドは消費主導の力強い成長が続いているが、先行きの景気は短期的に大きく減速しそうだ。11月8日、政府が突如、地下経済対策として高額紙幣の使用を禁止して新紙幣への交換を始めたことにより、国内では現金が不足し、消費行動に大きな支障が出ている。同国は日本のようにクレジットカードや電子マネーが浸透しておらず、消費支出の約9割が現金決済となっている。特に地方は現金払いが多く、農作物の出荷への影響も懸念される。現在は一時期に比べて紙幣交換のために銀行とATMに並ぶ行列が短くなっているようだが、現金流通額の減少による消費への悪影響は3ヵ月程度続くと見られ、10-12月期と1-3月期の景気の落ち込みは避けられないだろう。
12月の金融政策委員会では、足元の景気減速懸念やインフレ鈍化を評価して2会合連続の利下げが実施されるだろうが、現在の廃貨に伴う混乱が収束した後、再び7%台の成長に戻るかは不透明だ。地下経済対策で高額消費の落ち込みは続くほか、先行きの物価も賃上げ、通貨安と原油高に伴う輸入コスト増、物品・サービス税の導入で上昇すると予想され、消費の力強さが試される展開になりそうだ。
一方、投資は一段と悪化した。投資の内訳は開示されてはいないが、投資プロジェクトの再開によって政府の投資支出が拡大(7-9月期:同23.5%増)したことから、7-9月期の投資の落ち込みは民間投資によるものだろう。低調な海外経済を背景に企業の投資意欲が依然として弱いことに加え、不良債権問題を抱える銀行は貸出に消極的になっていることが民間投資の低迷に繋がっている。
総じてインドは消費主導の力強い成長が続いているが、先行きの景気は短期的に大きく減速しそうだ。11月8日、政府が突如、地下経済対策として高額紙幣の使用を禁止して新紙幣への交換を始めたことにより、国内では現金が不足し、消費行動に大きな支障が出ている。同国は日本のようにクレジットカードや電子マネーが浸透しておらず、消費支出の約9割が現金決済となっている。特に地方は現金払いが多く、農作物の出荷への影響も懸念される。現在は一時期に比べて紙幣交換のために銀行とATMに並ぶ行列が短くなっているようだが、現金流通額の減少による消費への悪影響は3ヵ月程度続くと見られ、10-12月期と1-3月期の景気の落ち込みは避けられないだろう。
12月の金融政策委員会では、足元の景気減速懸念やインフレ鈍化を評価して2会合連続の利下げが実施されるだろうが、現在の廃貨に伴う混乱が収束した後、再び7%台の成長に戻るかは不透明だ。地下経済対策で高額消費の落ち込みは続くほか、先行きの物価も賃上げ、通貨安と原油高に伴う輸入コスト増、物品・サービス税の導入で上昇すると予想され、消費の力強さが試される展開になりそうだ。
1 11月30日、インド中央統計機構(CSO)が2016年7-9月期の国内総生産(GDP)統計を公表した。
2 Bloomberg調査
(2016年12月01日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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