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歯科医療の変化-かかりつけ歯科医は何をすべきか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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6――おわりに [私見]
私見: 国民一人ひとりに、口腔の定期的な予防管理を促すことが、これからの歯科医療の役割
今後、高齢化が進み、地域包括ケアシステムによる地域医療が展開されるに連れて、地域で暮らす高齢者を中心とした歯科口腔保健の重要性は高まるものと見られる。その際、従来の治療中心の歯科医療に、予防管理を、いかに組み合わせていくか、という点が歯科医療の中心的課題となろう。即ち、医科と同様、歯科にも、予防管理の推進が必要となる。
予防管理を通じて、虫歯、歯周病という、歯科の2大疾病の悪化を防ぐだけではなく、病巣感染による全身疾患の予防も可能となる。また、咀嚼、構音等の口腔機能の回復や、口臭の改善も図られる。これらは、患者が高齢者や要介護者の場合、本人の生活意欲の向上や、介護者の負荷軽減をもたらす。併せて、患者の生活の質(QOL)の向上につながり、健康寿命の延伸、国民医療費の節減といった効用をもたらす可能性もある。
これは、歯科医療を、口や歯を診るだけの医療と矮小化するのではなく、患者の全身組織や、QOLを改善するための、手始めの医療と捉えることを意味する。そして、必要に応じて、歯科の患者を、医科に誘導するような、医科歯科連携を推進していくべきであろう。そのためには、これまで以上に、口腔機能が低下する前の、予防管理を促進させるべきと思われる。その促進のための具体策として、例えば、診療報酬制度において、在宅歯科医療で、予防管理についての評価を拡充することや、時間をかけた丁寧な診療の報酬を引き上げることなどの整備を図ることが考えられる。
そして、最終的には、国民一人ひとりが、自らの口腔の定期的な予防管理に、積極的に取り組む24ように促すことこそが、これからの歯科医療が、目指すべき方向性ではないかと考えられる。
今後も、歯科医療の動向を、引き続き、注視していくことが必要と思われる。
24 口腔の定期的な予防管理のために、特定健康診査・特定保健指導と同様、歯科健診の実施を、公的医療保険制度の保険者に義務づけることも考えられる。
【参考文献・資料】
- 「医者は口を診ない 歯医者は口しか診ない」相田能輝(医薬経済社)
- 「ニッポンの歯の常識は?(ハテナ)だらけ」河田克之・赤松正雄(ワニブックス)
- 「歯科医療のおもしろさ -後輩たちへ贈る28のドラマ-」橋本光二・升谷滋行・飯野文彦 編(一般財団法人 口腔保健協会)
- 「残る歯科医 消える歯科医」田中幾太郎(財界展望新社)
- 「歯科医院力を高める保健指導実践ガイド」深井穫博(医歯薬出版)
- 「歯科医療白書 2013年度版」(公益社団法人 日本歯科医師会)
- 「歯科保健関係統計資料 2016年版」(一般財団法人 口腔保健協会)
(下記の文献・資料は、内容の一部を参考にした)
- 「学校保健統計調査」(文部科学省)
- 「歯科医療の専門性に関するワーキンググループ(第1回)資料3」(厚生労働省, 2015年4月23日)
- 「平成23年歯科疾患実態調査」(厚生労働省)
- 「医療費の動向」(厚生労働省)
- 「平成26年医療給付実態調査」(厚生労働省)
- 「平成12年 社会医療診療別調査」(厚生労働省)
- 「平成27年 社会医療診療別統計」(厚生労働省)
- 「歯科医療に関する一般生活者意識調査」(公益社団法人日本歯科医師会, 2016年5月26日)
- 「国民医療費の概況」(厚生労働省)
- 「医師・歯科医師・薬剤師調査」(厚生労働省)
- 「医療施設調査」(厚生労働省)
- 「第20回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -平成27年実施-」(中央社会保険医療協議会, 平成27年11月)
- 「平成27年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)
- 「平成26年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(厚生労働省)
- 「医療の選択」桐野高明(岩波書店, 岩波新書1492)
- 「医療計画について」(厚生労働省医政局長通知, 医政発0330第28号, 平成24年3月30日)
- 「歯科医療による健康増進効果関する調査研究」(公益財団法人 8020推進財団,平成 27年度調査研究事業, 平成26・27年ベースラインデータ集計結果報告書, 2016年6月)
- 「平成28年度診療報酬改定の概要 (歯科診療報酬)」(厚生労働省)
(なお、下記2編の拙稿については、本稿執筆の基礎とした)
- 「医療・介護の現状と今後の展開(前編)-医療・介護を取り巻く社会環境はどのように変化しているか?」篠原拓也(ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート, 2015年3月10日)
http://www.nli-research.co.jp/files/topics/42282_ext_18_0.pdf - 「医療・介護の現状と今後の展開(後編)-民間の医療保険へはどのような影響があるのか? 」篠原拓也(ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート, 2015年3月16日)
http://www.nli-research.co.jp/files/topics/42289_ext_18_0.pdf
(2016年12月12日「基礎研レポート」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
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