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総合診療医の養成-かかりつけ医の配置は、順調に進むか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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日本では、少子高齢化が進行する中で、高齢者への医療・介護の提供の枠組みが整備されつつある。その際、極めて重要な点は、地域医療を担う、総合診療医の養成であろう。
総合診療医は、2017年より研修が始まり、養成が進められる予定である。
本稿では、日本の医師の現状を俯瞰し、その上で、総合診療医の養成について見ていくこととする。
■目次
1――はじめに
2――日本の医師の現状
1|医師数は、徐々に増加している
2|複数の診療科を標榜する、小児科医や産婦人科医は減少している
3|診療所では、50歳代をピークに、多くの高齢の医師が活躍している
4|大都市と過疎地域の間では、医師の偏在が見られる
3――今後不可欠となる総合診療医
1|総合診療医は、全人的な医療を行うことが求められる
2|総合診療医の研修には、ありとあらゆる医療技術や、地域医療の経験が組み込まれている
4――総合診療医を養成する上での留意点
1|総合診療医の需給バランスを、どのようにとるか
2|既存の医師が、総合診療医に転換する仕組みをどう構えるか
3|医師の地域偏在の問題を、どう解消すべきか
5――おわりに (私見)
1――はじめに
総合診療医は、2017年より研修が始まり、養成が進められる予定である。日本でも、以前から、内科医や小児科医の開業医が、かかりつけ医として、地域密着の医療を行ってきた。しかし、これまでは総合診療医のような体系化されたトレーニングはなく、主に、各医師の素養や、経験に委ねられてきた。また、現状では、かかりつけ医を持たない人もおり、社会の認識に陰りも見えている1。
本稿では、日本の医師の現状を俯瞰し、その上で、総合診療医の養成について見ていくこととする。
1 「かかりつけ医機能の強化に向けた調査研究」江口成美(日本医師会総合政策研究機構, 日医総研ワーキングペーパーNo.294, 2013年7月30日)によると、40歳以上の国民に対するアンケート調査(回答回収数2,080票)の結果、かかりつけ医がいないと回答した人は、34.9%であった。
2――日本の医師の現状
2 なお、2016年には、37年ぶりに、東北医科薬科大学(宮城県仙台市)に、医学部が新設された。また、2017年には、国際医療福祉大学でも、千葉県成田市に医学部を開学すべく、準備が進められている。
診療科別の医師数の推移を見てみよう。勤務医で、1つの診療科だけを名乗る医師もいれば、診療所の開業医などで、複数の診療科を標榜する医師もいる。1996年から2014年の18年間で、主たる診療科について見ると、多くの診療科で、医師は増加している。その中で、内科、外科、産婦人科では、減少している。一方、複数回答で見ると、これも多くの診療科で増加している。しかし、小児科、産婦人科では、減少している。その背景として、例えば、乳児や幼児の患者に対する、診療の安全性に、医師が懸念を持った結果、従来、内科兼小児科などとしていた診療所が、内科のみを標榜するように変わるといった、専門分化が進んでいることが考えられる。
今後、地域医療を推進するにあたり、内科や小児科の診療所の医師に、かかりつけ医としての機能を果たすことが期待されている。これらの科の医師を安定的に確保していくことが必要となろう。
3 一次医療圏は市町村、三次医療圏は主に都道府県。二次医療圏はその中間に属し、複数の市町村が1つの単位。2015年より、都道府県は、地域医療構想を策定することとなっている。地域医療構想は、原則として二次医療圏ごとに策定される。
4 図表5-1、5-2の出典データでは、大都市型は、人口100 万人以上または人口密度2,000 人/㎢以上。地方都市型は、大都市型以外で、人口が20万人以上であるか、または人口が10万人以上かつ人口密度が200人/㎢以上。過疎地域型は、大都市型、地方都市型以外、とされている。
5 医療機関のない地域で、当該地区の中心的な場所を起点として、概ね半径4㎞の区域内に50人以上が居住している地区であって、かつ容易に医療機関を利用することができない地区、を指す。
(2016年05月02日「基礎研レター」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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