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【アジア・新興国】韓国政府が個人年金法の制定案を立法予告-個人年金は今後普及するだろうか?-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
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韓国の保険開発院が発表した資料1によると、韓国における個人年金の加入率は2015年末現在17.6%で、加入者数が初めて900万人(904.8万人)を超えた(図表1)。年齢階層別加入率は、40代(30.6%)、50代(26.6%)、30代(26.5%)の順で高く、30代~50代の年齢階層が個人年金の全加入者に占める割合は約76.8%に達した。一方、30代~50代の年齢階層に比べて相対的に所得水準が低い60代や70歳以上の年齢階層の個人年金加入率はそれぞれ12.5%と2.6%で低かった。
地域別加入率は、蔚山が23.9%で最も高く、次はソウル(21.6%)、光州(19.9%)、大田(17.3%)の順であり、加入率と一人当たり所得の相関を見ると、一人当たり所得が高い蔚山やソウル等の加入率が高く、加入率と一人当たり所得の関係は正で統計的に有意(相関係数:0.829、1%水準で有意)であった(図表2)。
個人年金の積立金は1994年の2.5兆ウォンから2015年には292.2兆ウォンに大きく増加した。個人年金の加入率が増加し、積立金が増加している理由としては公的年金だけでは十分な老後保障ができないという意識が人々の間に広がっている点が考えられる。韓国は国民皆年金になったのが1999年でまだ公的年金が受給面において成熟していない2。公的年金の受給状況を見ると、2016年6月末現在、65歳以上の人口680万人のうち、年金を受給しているのは37.3%である254万人に過ぎない。また、年金受給者の平均年金月額は約49万ウォン3で、健康で文化的な生活を送るために必要な最低限度の生活費として国が定めている1人世帯の最低生活費65万ウォンを下回っている。
今後、国民年金の受給者数が増加することにより、高齢者の平均所得水準は少し改善されると思われる。しかしながら、韓国政府は公的年金の持続可能性を高めるために公的年金の財政安定化政策を行っており、高齢者の平均所得水準はそれほど大きくは伸びない可能性が高い。つまり、韓国では今後も公的年金だけで老後の生活を賄うことは難しいと言えるだろう。
1 保険開発院(2016)「保険会社の個人年金保険加入資料」
2 韓国政府は多くの高齢者が無年金者や低年金者であることを考慮し、2014年から65歳以上の高齢者のうち、所得認定額が下位70%に該当する人々に対して、最低10万ウォンから最大20万ウォンまでの基礎年金を支給している(2008年から2013年まで実施していた基礎老齢年金の適用対象や支給額を拡大)。
3 年金加入期間が5年以上である者に支給する「特例老齢年金」を除外した金額。
(2016年11月30日「保険・年金フォーカス」)
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生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
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