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- 大学卒女性の働き方別生涯所得の推計-標準労働者は育休・時短でも2億円超、出産退職は△2億円。
2016年11月16日
4|女性の賃金等の変化~1995年以降、女性全体では微増、大学・大学院卒では横ばい・微増
生涯所得推計の前提として最後に、近年の賃金の状況等を確認する。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、所定内給与額(超過労働給与額を差し引いた月々の現金給与額)は、1995年以降、男性では横ばい・微減で推移しているが、女性では、全体は微増、大学・大学院卒では横ばい・微増で推移している(図表6)。これは、詳しく見ると(本稿では省略)、女性の待遇改善というより、比較的賃金の高い中高年層の女性労働者に占める割合が上昇した影響である。よって、冒頭の政府推計と同条件で推計する場合、大きな差異はないと予想される。
なお、本稿では大学卒女性に注目するが、近年、女性の大学進学率は男性に追随して上昇傾向にあり、2015年では47.3%である(図表7)。
生涯所得推計の前提として最後に、近年の賃金の状況等を確認する。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、所定内給与額(超過労働給与額を差し引いた月々の現金給与額)は、1995年以降、男性では横ばい・微減で推移しているが、女性では、全体は微増、大学・大学院卒では横ばい・微増で推移している(図表6)。これは、詳しく見ると(本稿では省略)、女性の待遇改善というより、比較的賃金の高い中高年層の女性労働者に占める割合が上昇した影響である。よって、冒頭の政府推計と同条件で推計する場合、大きな差異はないと予想される。
なお、本稿では大学卒女性に注目するが、近年、女性の大学進学率は男性に追随して上昇傾向にあり、2015年では47.3%である(図表7)。
3――大学卒女性の生涯所得の推計
2|生涯所得の推計条件
生涯所得の推計方法を以下に示す。
・生涯所得=生涯賃金+退職金(正規雇用者のみ)
・生涯賃金=年齢別賃金の合計(※)
※1 正規雇用者及び非正規雇用者の場合
年齢別賃金=きまって支給する現金給与額3×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
※2 パートの場合
年齢別賃金=(実労働日数×1日当たり所定内実労働時間数×1時間当たり所定内給与額)
×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
生涯賃金の推計は、厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査」における「きまって支給する現金給与額」及び「年間賞与その他特別給与額」から各年齢の賃金を推計し、それを合算する4。なお、大学卒業後、同一企業でフルタイムの正規雇用者として働き続ける労働者として、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」における「標準労働者(学校卒業後直ちに企業に就職し、同一企業に継続勤務しているとみなされる労働者)」を用いる。その理由は、他ケースとの比較を想定し、現在のところ、育児休業や短時間勤務などを利用しやすい環境にあり、正規雇用者比率も高い労働者と考えたためである。ただし、標準労働者は、「所定内給与額」は存在するが、「きまって支給する現金給与額」が存在しないため、同条件の一般労働者における両者の比率から、標準労働者の「きまって支給する現金給与額」を算出する。(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2015」)
・育児休業利用時の取扱い
育休中は、休業前の賃金水準で「育児休業給付金」が支給されるものとする。育休から復職時は休業前の賃金水準に戻るが(参考:「改正育児・介護休業法」によれば、休業を理由とした不利益取扱いは禁止)、復帰初年度のみ「年間賞与その他特別給与額」は半額とする。
・短時間勤務制度利用時の取扱い
短時間勤務時は残業を行わないため、超過労働給与額を含む「きまって支給する現金給与額」ではなく「所定内給与額」を用いて年収を推計する。また、賃金水準は労働時間数比率(6時間/8時間=5%)を乗じた値とする。また、短時間勤務期間の経過年数は、実年数の75%とし(例えば、短時間勤務を8年間利用した場合、フルタイム勤務6年分に相当)、フルタイム復帰時には、その経過年数に相当するケースAの年齢別賃金に接続する。
・55歳以降の取扱い(正規雇用者)
正規雇用者における55歳以降の賃金は、ケースによらず同水準とする(標準労働者では55歳を境に「所定内給与額」が大きく減るが、ケースによる違いには様々な仮定が必要であり、今回は設定していない)。
・非正規雇用者の取扱い
非正規雇用者の生涯賃金の推計は、「正社員・正職員以外」の値を用いる。育休から復職時の賃金水準は、標準労働者と同様に、休業前と同等とする。なお、ケースA-Bにて標準労働者が非正規雇用者として復職する際の賃金水準は、第1子出産退職時と同年齢の非正規雇用者と同等とする。
・退職金の取扱い
正規雇用者の退職金は、厚生労働省「平成25年就労条件総合調査」の1人平均退職給付額を用いる。ただし、男女別の数値がないため、男女計のものを用いる。出産等による休業のない場合は、勤続年数階級35年以上の値、育休を利用した場合は勤続年数階級30~34年の値、第1子出産時に退職した場合は勤続年数階級20~24年の値に勤続年数比率を乗じた値とする。
3 労働契約等により予め定められている支給条件により支給された6月分現金給与額(基本給、各種手当等含む)。ここから超過労働給与額を差し引いたものが「所定内給与額」。
4 本稿の推計は、独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2015」における生涯賃金推計を参考に、現在の各年齢の賃金を足し合わせて求めている。長期に渡る就業期間では物価・賃金水準は変化するが、賃金水準を現在のものに合わせるという考えに立つ。この方法とは別に、物価水準等を調整して生涯所得を得る方法も考えられ、賃金の世代間格差などを把握するために適しているが、今年、新卒で働き始めた者の生涯所得という見方は難しい。
生涯所得の推計方法を以下に示す。
・生涯所得=生涯賃金+退職金(正規雇用者のみ)
・生涯賃金=年齢別賃金の合計(※)
※1 正規雇用者及び非正規雇用者の場合
年齢別賃金=きまって支給する現金給与額3×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
※2 パートの場合
年齢別賃金=(実労働日数×1日当たり所定内実労働時間数×1時間当たり所定内給与額)
×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
生涯賃金の推計は、厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査」における「きまって支給する現金給与額」及び「年間賞与その他特別給与額」から各年齢の賃金を推計し、それを合算する4。なお、大学卒業後、同一企業でフルタイムの正規雇用者として働き続ける労働者として、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」における「標準労働者(学校卒業後直ちに企業に就職し、同一企業に継続勤務しているとみなされる労働者)」を用いる。その理由は、他ケースとの比較を想定し、現在のところ、育児休業や短時間勤務などを利用しやすい環境にあり、正規雇用者比率も高い労働者と考えたためである。ただし、標準労働者は、「所定内給与額」は存在するが、「きまって支給する現金給与額」が存在しないため、同条件の一般労働者における両者の比率から、標準労働者の「きまって支給する現金給与額」を算出する。(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2015」)
・育児休業利用時の取扱い
育休中は、休業前の賃金水準で「育児休業給付金」が支給されるものとする。育休から復職時は休業前の賃金水準に戻るが(参考:「改正育児・介護休業法」によれば、休業を理由とした不利益取扱いは禁止)、復帰初年度のみ「年間賞与その他特別給与額」は半額とする。
・短時間勤務制度利用時の取扱い
短時間勤務時は残業を行わないため、超過労働給与額を含む「きまって支給する現金給与額」ではなく「所定内給与額」を用いて年収を推計する。また、賃金水準は労働時間数比率(6時間/8時間=5%)を乗じた値とする。また、短時間勤務期間の経過年数は、実年数の75%とし(例えば、短時間勤務を8年間利用した場合、フルタイム勤務6年分に相当)、フルタイム復帰時には、その経過年数に相当するケースAの年齢別賃金に接続する。
・55歳以降の取扱い(正規雇用者)
正規雇用者における55歳以降の賃金は、ケースによらず同水準とする(標準労働者では55歳を境に「所定内給与額」が大きく減るが、ケースによる違いには様々な仮定が必要であり、今回は設定していない)。
・非正規雇用者の取扱い
非正規雇用者の生涯賃金の推計は、「正社員・正職員以外」の値を用いる。育休から復職時の賃金水準は、標準労働者と同様に、休業前と同等とする。なお、ケースA-Bにて標準労働者が非正規雇用者として復職する際の賃金水準は、第1子出産退職時と同年齢の非正規雇用者と同等とする。
・退職金の取扱い
正規雇用者の退職金は、厚生労働省「平成25年就労条件総合調査」の1人平均退職給付額を用いる。ただし、男女別の数値がないため、男女計のものを用いる。出産等による休業のない場合は、勤続年数階級35年以上の値、育休を利用した場合は勤続年数階級30~34年の値、第1子出産時に退職した場合は勤続年数階級20~24年の値に勤続年数比率を乗じた値とする。
3 労働契約等により予め定められている支給条件により支給された6月分現金給与額(基本給、各種手当等含む)。ここから超過労働給与額を差し引いたものが「所定内給与額」。
4 本稿の推計は、独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2015」における生涯賃金推計を参考に、現在の各年齢の賃金を足し合わせて求めている。長期に渡る就業期間では物価・賃金水準は変化するが、賃金水準を現在のものに合わせるという考えに立つ。この方法とは別に、物価水準等を調整して生涯所得を得る方法も考えられ、賃金の世代間格差などを把握するために適しているが、今年、新卒で働き始めた者の生涯所得という見方は難しい。
(2016年11月16日「基礎研レポート」)
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03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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