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2016年11月08日
米国では、人々はどのように生命保険に加入しているのか(2)~リムラ&ライフハプンズの保険バロメータースタディより-生命保険への加入目的(理由)
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2|日本における生命保険への加入目的(理由)
わが国における生命保険に加入する目的(理由)としては、「病気や災害、事故による万一の場合の保障のため」が56.5%と際立って大きな回答数を集めている。これに「病気やケガの際の治療や入院費用に備えるため」が35.4%で続く。
わが国では、生命保険加入目的(理由)として、この二つが他を圧して大きい。したがって、この二つが日本における中心的な生命保険加入目的(理由)であると判断してもいいと思われる。わが国で生命保険に加入している人、生命保険加入を考えている人全てにとって、納得感のある結果であろう。
この二つから20%以上の間隔をあけて、以下の5つが10%前後の回答数を得て並んでいる。
万が一の遺族への保障と並んで、生命保険の活用が予想される場面である、税金・相続対策の側面については、「節税のため」が2.6%、「相続や相続費用の準備のため」が1.8%と、主に一般の人たちを対象とするこの調査では、極めて小さな回答数しか獲得していない。
また介護が大問題化している昨今、介護特約も開発され死亡保障に付加して販売されているが、生命保険加入の目的(理由)が「介護費用の準備のため」であると答えた生命保険加入者は1.7%とやはり小さな割合に留まっている。
わが国における生命保険に加入する目的(理由)としては、「病気や災害、事故による万一の場合の保障のため」が56.5%と際立って大きな回答数を集めている。これに「病気やケガの際の治療や入院費用に備えるため」が35.4%で続く。
わが国では、生命保険加入目的(理由)として、この二つが他を圧して大きい。したがって、この二つが日本における中心的な生命保険加入目的(理由)であると判断してもいいと思われる。わが国で生命保険に加入している人、生命保険加入を考えている人全てにとって、納得感のある結果であろう。
この二つから20%以上の間隔をあけて、以下の5つが10%前後の回答数を得て並んでいる。
- 「貯蓄のため』13.4%
- 「葬式代の準備のため」13.0%。
- 「老後の生活資金を準備するため」12.8%
- 「子どもの教育や結婚の資金準備のため」10.8%
- 「重病や大ケガの際の生活資金の準備のため」9.7%
万が一の遺族への保障と並んで、生命保険の活用が予想される場面である、税金・相続対策の側面については、「節税のため」が2.6%、「相続や相続費用の準備のため」が1.8%と、主に一般の人たちを対象とするこの調査では、極めて小さな回答数しか獲得していない。
また介護が大問題化している昨今、介護特約も開発され死亡保障に付加して販売されているが、生命保険加入の目的(理由)が「介護費用の準備のため」であると答えた生命保険加入者は1.7%とやはり小さな割合に留まっている。
3| 米国の結果と日本の結果の比較
先に書いたように、日本の調査は、米国では同様の形態があまりない医療保障関連や介護保障関係の特約を付した生命保険への加入者を主な調査対象者としている。このため、日本の調査結果には、「病気やケガの際の治療や入院費用に備えるため」、「重病や大ケガの際の生活資金の準備のため」、「介護費用の準備のため」といった、米国の調査結果にはない項目が登場する。
一方、米国で51%の回答数を獲得している「住宅ローンの支払いを支援するため』は、わが国では団体信用生命保険が専管する保障対応範囲と考えられるため、生命保険を対象とする日本の調査の回答項目にない。
これらを検討対象から外して日米の生命保険加入目的(理由)を比較すると、以下のような状況を見て取れる。
(1)米国で圧倒的な回答数を獲得して第1位の加入目的(理由)となっている葬式代の準備という目的(理由)は、わが国では13%を集めるだけの、その他の雑多な項目中に埋もれる目的(理由)の一つにすぎない。
(2)米国で第2位の理由である「財産を移転するためまたは遺産を残すため」に相当する「相続や相続費用の準備のため」はわが国では1.8%と極めて少数の回答者が注目するだけの、ほとんど注目されない加入目的(理由)にすぎない。
(3)わが国の第1位の理由である「病気や災害、事故による万一の場合の保障のため」は、米国でも「失われる収入の一部を代替するため」として主要な生命保険加入目的(理由)となっている。
(4)生命保険の貯蓄機能に関しては、両国とも一定数の回答者が以下のように回答しているが、米国における方が生命保険商品の貯蓄機能に対する期待が高いように感じられる。
先に書いたように、日本の調査は、米国では同様の形態があまりない医療保障関連や介護保障関係の特約を付した生命保険への加入者を主な調査対象者としている。このため、日本の調査結果には、「病気やケガの際の治療や入院費用に備えるため」、「重病や大ケガの際の生活資金の準備のため」、「介護費用の準備のため」といった、米国の調査結果にはない項目が登場する。
一方、米国で51%の回答数を獲得している「住宅ローンの支払いを支援するため』は、わが国では団体信用生命保険が専管する保障対応範囲と考えられるため、生命保険を対象とする日本の調査の回答項目にない。
これらを検討対象から外して日米の生命保険加入目的(理由)を比較すると、以下のような状況を見て取れる。
(1)米国で圧倒的な回答数を獲得して第1位の加入目的(理由)となっている葬式代の準備という目的(理由)は、わが国では13%を集めるだけの、その他の雑多な項目中に埋もれる目的(理由)の一つにすぎない。
(2)米国で第2位の理由である「財産を移転するためまたは遺産を残すため」に相当する「相続や相続費用の準備のため」はわが国では1.8%と極めて少数の回答者が注目するだけの、ほとんど注目されない加入目的(理由)にすぎない。
(3)わが国の第1位の理由である「病気や災害、事故による万一の場合の保障のため」は、米国でも「失われる収入の一部を代替するため」として主要な生命保険加入目的(理由)となっている。
(4)生命保険の貯蓄機能に関しては、両国とも一定数の回答者が以下のように回答しているが、米国における方が生命保険商品の貯蓄機能に対する期待が高いように感じられる。
- 老後資金・・・米国では「退職後の所得を補うため」が44%、わが国では「老後の生活資金を準備するため」が12.8%の回答率を獲得している。
- 教育資金・・・米国では「大学入学から卒業までの資金を提供するため」が32%、わが国では「子どもの教育や結婚の資金準備のため」が10.8%の回答率を獲得している。
- 貯蓄・投資・・・米国では「税制優遇のある貯蓄・投資手法として」が34%、わが国では「貯蓄のため」が13.4%の回答率を獲得している。
2――米国の生保事業に特徴的な生命保険加入目的(理由)をもう少し見てみると
1| 葬式代の準備があらゆる年代、年収階層でダントツの第1位目的(理由)である
前章で見たように、米国においては「葬式代や終末期の支出をカバーするため」が他の理由を圧倒する第1の加入理由となっている。これはグラフ3の2011年の調査結果でも同様で、「葬式代および終末期の支出」項目がントツの第1位となっている。メジャーな加入目的(理由)と答えた割合で見てもやはり群を抜いた一位である。
次のグラフ4は、2016年の調査結果から、「葬式代や終末期の支出をカバーするため」を加入目的(理由)と答えた回答者の割合を年齢階層別・年収階層別に見たものであるが、あらゆる年齢階層、年収階層で85%~89%の回答率を獲得している(グラフ4)。
わが国では考えづらいことであるが、米国では生命保険に加入している大多数の人が葬式代を賄うために生命保険に加入しているという意識を持っているようだ。
わが国で「葬式代のために」というセールストークで販売されている生命保険商品は、高齢層を対象に、引き受けを保証して、通信販売等で販売される小口の商品である。対照的に米国では、特に高齢層で加入目的(理由)とする割合が高いとか、年収の低い層で加入目的(理由)とする割合が高いということもない。なお、この目的(理由)での生命保険加入の場合は、契約の保険金額は大きなものではないと考えられる。
前章で見たように、米国においては「葬式代や終末期の支出をカバーするため」が他の理由を圧倒する第1の加入理由となっている。これはグラフ3の2011年の調査結果でも同様で、「葬式代および終末期の支出」項目がントツの第1位となっている。メジャーな加入目的(理由)と答えた割合で見てもやはり群を抜いた一位である。
次のグラフ4は、2016年の調査結果から、「葬式代や終末期の支出をカバーするため」を加入目的(理由)と答えた回答者の割合を年齢階層別・年収階層別に見たものであるが、あらゆる年齢階層、年収階層で85%~89%の回答率を獲得している(グラフ4)。
わが国では考えづらいことであるが、米国では生命保険に加入している大多数の人が葬式代を賄うために生命保険に加入しているという意識を持っているようだ。
わが国で「葬式代のために」というセールストークで販売されている生命保険商品は、高齢層を対象に、引き受けを保証して、通信販売等で販売される小口の商品である。対照的に米国では、特に高齢層で加入目的(理由)とする割合が高いとか、年収の低い層で加入目的(理由)とする割合が高いということもない。なお、この目的(理由)での生命保険加入の場合は、契約の保険金額は大きなものではないと考えられる。
(2016年11月08日「保険・年金フォーカス」)
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