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2016年10月19日
通貨スワップ市場の変動要因について考える-通貨スワップの市場環境が与えるヘッジコストへの影響
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5――各資金市場における流動性の観点
2013年末あたりから「信用リスク以外のテーマ」でスワップ・スプレッドが推移してきた可能性が高いことを指摘したが、2013年末は米国市場において資産買取額の縮小(いわゆる「テーパリング」)を始まった時期と一致する。つまり、米国における金融引き締め予想から、米国の金融機関において米ドル調達サイドに対する米ドル資金の貸出スタンスに変化が生じた可能性がある。
各資金市場における金融機関の貸出スタンスに関するストレス状況を測る手段として、本稿ではスワップレート13とOvernight Index Swap(OIS)14のスプレッド(Swap/OISスプレッド:「スワップレート」-「OIS」)を採用する。例えば、3ヶ月に関する資金取引を行う場合、信用リスクに問題がなかったとしても、何かしらの問題により3ヶ月の資金調達が難しい環境になれば、流動性に起因するストレスを織り込む形で、3ヶ月LIBORとOISのスプレッドは開いていくことになる。スワップレートは一定期間においてLIBORと交換するときの固定金利なので、Swap/OISスプレッドは、スワップの取引期間におけるLIBORによる貸出に関する将来のストレス予想を含んでいるものと考えられる。そこで、通貨スワップ市場は米ドルLIBORと円LIBORを交換する取引であるため、米ドルの資金市場における貸出スタンスと円の資金市場における貸出スタンスの違いに関する測度を、米ドル資金市場と円資金市場におけるSwap/OISスプレッドに関する差分(Swap/OISスプレッド差分:「米ドルSwap/OISスプレッド」-「円Swap/OISスプレッド」)で表現しようという意図である。
図表9はスワップ・スプレッド(3ヶ月、1年、3年、5年)と各年限のSwap/OISスプレッド差分を並べたものである。全般的にSwap/OISスプレッド差分とスワップ・スプレッドはある程度の連動性でもって推移してきたことが分かる。特に、米国では2013年春のバーナンキショック辺りからテーパリングを意識しながら推移することになり、Swap/OISスプレッドは縮小から徐々に拡大方向に転換している。一方で、日本では同時期に量的・質的金融緩和政策の導入もあって、Swap/OISスプレッドは縮小傾向であった。その結果、Swap/OISスプレッド差分は、2013年中盤以降は上昇傾向であり、スワップ・スプレッドの動きと連動性があるように見える。
また、図表10はバーナンキショック以降にあたる2013年5月末から直近の2016年9月末までのデータに関して、Swap/OISスプレッド差分とスワップ・スプレッドの散布図を示している。この期間において、Swap/OISスプレッド差分とスワップ・スプレッドの連動性が高いことが分かる。
米国と日本における金融政策の方向性の違いにより、2013年中盤以降は各市場における金融機関の貸出スタンスに違いが生じたのではないかと思われる。その結果として、米ドル調達サイドから見て、流動性に関するコストがスワップ・スプレッドにアドオンされるようになったものと思われる。この観点から見ると、日米の金融政策の方向性の違いが続く限りにおいて、スワップ・スプレッドがゼロに回帰することはなく、これからもマイナス圏を推移する可能性が高いことになる。
各資金市場における金融機関の貸出スタンスに関するストレス状況を測る手段として、本稿ではスワップレート13とOvernight Index Swap(OIS)14のスプレッド(Swap/OISスプレッド:「スワップレート」-「OIS」)を採用する。例えば、3ヶ月に関する資金取引を行う場合、信用リスクに問題がなかったとしても、何かしらの問題により3ヶ月の資金調達が難しい環境になれば、流動性に起因するストレスを織り込む形で、3ヶ月LIBORとOISのスプレッドは開いていくことになる。スワップレートは一定期間においてLIBORと交換するときの固定金利なので、Swap/OISスプレッドは、スワップの取引期間におけるLIBORによる貸出に関する将来のストレス予想を含んでいるものと考えられる。そこで、通貨スワップ市場は米ドルLIBORと円LIBORを交換する取引であるため、米ドルの資金市場における貸出スタンスと円の資金市場における貸出スタンスの違いに関する測度を、米ドル資金市場と円資金市場におけるSwap/OISスプレッドに関する差分(Swap/OISスプレッド差分:「米ドルSwap/OISスプレッド」-「円Swap/OISスプレッド」)で表現しようという意図である。
図表9はスワップ・スプレッド(3ヶ月、1年、3年、5年)と各年限のSwap/OISスプレッド差分を並べたものである。全般的にSwap/OISスプレッド差分とスワップ・スプレッドはある程度の連動性でもって推移してきたことが分かる。特に、米国では2013年春のバーナンキショック辺りからテーパリングを意識しながら推移することになり、Swap/OISスプレッドは縮小から徐々に拡大方向に転換している。一方で、日本では同時期に量的・質的金融緩和政策の導入もあって、Swap/OISスプレッドは縮小傾向であった。その結果、Swap/OISスプレッド差分は、2013年中盤以降は上昇傾向であり、スワップ・スプレッドの動きと連動性があるように見える。
また、図表10はバーナンキショック以降にあたる2013年5月末から直近の2016年9月末までのデータに関して、Swap/OISスプレッド差分とスワップ・スプレッドの散布図を示している。この期間において、Swap/OISスプレッド差分とスワップ・スプレッドの連動性が高いことが分かる。
米国と日本における金融政策の方向性の違いにより、2013年中盤以降は各市場における金融機関の貸出スタンスに違いが生じたのではないかと思われる。その結果として、米ドル調達サイドから見て、流動性に関するコストがスワップ・スプレッドにアドオンされるようになったものと思われる。この観点から見ると、日米の金融政策の方向性の違いが続く限りにおいて、スワップ・スプレッドがゼロに回帰することはなく、これからもマイナス圏を推移する可能性が高いことになる。
また、金融機関の貸出スタンスに影響したものとして、金融政策の方向性の違いだけではなく、金融規制(レバレッジ比率やMMF規制)の影響も指摘されている15。
レバレッジ比率は、バーゼルIIIの中で議論されている規制の一つであり、規制対象となる金融機関のレバレッジの拡大に制約をかけるものである。レバレッジ比率では、通貨スワップ等の為替リスクを含む(特に1年以上の)デリバティブに対する規制面の負担が金利デリバティブなどと比較して厳しく、元本の交換を伴う通貨スワップのようなバランスシートを使った取引に対して一定の制約かかる。また、米国では大手金融機関のレバレッジ比率に関する規制を相対的に厳しくする方向で議論が進められている。よって、米国の大手金融機関がレバレッジ比率を維持または高めようとするならば、通貨スワップを取り組む際に、金融規制によるバランスシートへの制約(分母)に対して資本(分子)を積む必要がある。そのため、米ドル調達サイドの調達ニーズに応えるためには、規制上の資本調達に関する一定のコストを取引相手に徴求する必要も出てくるものと考えられる。
レバレッジ比率は、バーゼルIIIの中で議論されている規制の一つであり、規制対象となる金融機関のレバレッジの拡大に制約をかけるものである。レバレッジ比率では、通貨スワップ等の為替リスクを含む(特に1年以上の)デリバティブに対する規制面の負担が金利デリバティブなどと比較して厳しく、元本の交換を伴う通貨スワップのようなバランスシートを使った取引に対して一定の制約かかる。また、米国では大手金融機関のレバレッジ比率に関する規制を相対的に厳しくする方向で議論が進められている。よって、米国の大手金融機関がレバレッジ比率を維持または高めようとするならば、通貨スワップを取り組む際に、金融規制によるバランスシートへの制約(分母)に対して資本(分子)を積む必要がある。そのため、米ドル調達サイドの調達ニーズに応えるためには、規制上の資本調達に関する一定のコストを取引相手に徴求する必要も出てくるものと考えられる。
13 円のスワップレートの原資産は6ヶ月LIBORであり、本来であれば通貨スワップに合わせて、3ヶ月LIBORを原資産とするスワップレートに調整するべきだが、本稿ではその調整を行っていない。
14 OISは無担保コールO/N(日本)やFFレート(米国)と一定期間について交換する固定金利を指す。一般的にデリバティブ市場ではOISが無リスク金利であると考えられている。
15 “Covered interest parity lost: understanding the cross-currency basis”(BIS, 2016年)、「グローバルな為替スワップ市場の動向について」(日本銀行, 2016年)、「金融機関のドル資金調達と金融規制改革の影響」(日本銀行, 2016年)など。
(2016年10月19日「基礎研レポート」)
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