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健康保険組合の役割の拡大-公平性の確保と、連帯意識の醸成を、どう両立させるか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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2――被用者保険の現状
3 協会けんぽは、保険給付費等の16.4%分が、国から補助されている。
4 法律上、健康保険組合と協会けんぽの保険料率は、3~13%の範囲内で決定するものとされている(健康保険法 第160条 第1項および第13項)。範囲の上限は、2016年度に、それまでの12%から引き上げられた。
3――被用者保険の保険者の役割
1|被用者保険には、事業主や被保険者に対する対内的機能と、医療機関等に対する対外的機能がある
保険事業の運営に関する、基本的な機能がいくつかある。主なものを、次表にまとめている。
まず、事業主や被保険者に対する機能として、加入管理や、保険料の徴収などがある。(1)~(4)は、保険給付事業、(5)は、保健事業と呼ばれることもある。一方、医療機関や支払基金に対する機能として、レセプトの審査や、診療報酬の払込みなどがある。(8)の診療報酬改定は、中央社会保険医療協議会(中医協)で行われる。被用者保険の保険者は、支払側委員の一角として、審議に加わっている5。
これまで、医療制度改革の検討において、被用者保険の対外的機能について、議論されることが多かった。例えば、被用者保険どうしの競争を促すことで、医療の効率性を高めて、医療費の削減を図るべきではないか、といったことが論じられてきた。しかし、保険者の根幹は、自立して、加入管理、給付額の見積り、保険料率の設定等を行うことであろう。近年は、医療費の削減とともに、加入者の健康を保持し、予防医療等の保健事業を展開することが、急務となってきている。
3|被用者保険の事務体制は脆弱で改善の余地がある
被用者保険は、多くの重要な機能を担っているが、それを支える事務職員の規模を見てみよう。
このように、現在の事務職員体制は、人員が限られている。このままでは、加入管理やレセプトの審査といった、従来の業務を進めることで手一杯なのではないかと考えられる。今後、健康保険組合は、事業主と協力して、従業員の健康に取り組む、コラボヘルス6の動きが進むと見られる。そのためには、事業主と連携を強化する必要がある。事務職員の拡充を含めた、体制の強化が必要であろう。
5 中医協は、支払側委員(健保組合の保険者・被保険者等)7人、診療側委員(医師等)7人、公益委員6人の、20人からなる。
6 一般に、従業員に、健康保険組合が個別にアプローチして保健指導を行うことには限界がある。通常、従業員に対する事業主の影響力は大きい。この影響力を、保健事業に活かして、予防医療等を推進しよう、とする動きが始まっている。
(2016年08月29日「基礎研レター」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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