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- 2016・2017年度経済見通し(16年8月)
2016年08月16日
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1.2016年4-6月期は年率0.2%と2四半期連続のプラス成長
2016年4-6月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.0%(前期比年率0.2%)と2四半期連続のプラス成長となった。
外需寄与度は前期比▲0.3%と4四半期ぶりのマイナスとなり、企業収益の悪化を受けて設備投資は前期比▲0.4%と2四半期連続で減少した。一方、1-3月期のうるう年による押し上げの反動にもかかわらず民間消費が前期比0.2%の増加となり、住宅ローン金利低下の追い風や消費増税延期決定前に駆け込み需要が発生していた影響から住宅投資が前期比5.0%の高い伸びとなった。また、政府消費は1-3月期の前期比0.9%から同0.2%へと伸びが鈍化したものの、2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行の効果から公的固定資本形成が前期比2.3%と1-3月期の同0.1%から伸びが加速し、国内需要は1-3月期に続いて民需、公需ともに前期比プラスとなった。
4-6月期の成長率は1-3月期から大きく低下したが、GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われておらず、1-3月期は日数増により年率1%程度押し上げられる一方、4-6月期は年率▲1%程度押し下げられている(当研究所による試算値)。この影響を除けば実質GDPは1-3月期、4-6月期ともに前期比年率1%程度となる。景気が2015年度初め頃から続く足踏み状態から完全に脱したとは言えないが、消費増税後低迷が続いてきた個人消費が持ち直しつつあることは明るい材料と考えられる。
外需寄与度は前期比▲0.3%と4四半期ぶりのマイナスとなり、企業収益の悪化を受けて設備投資は前期比▲0.4%と2四半期連続で減少した。一方、1-3月期のうるう年による押し上げの反動にもかかわらず民間消費が前期比0.2%の増加となり、住宅ローン金利低下の追い風や消費増税延期決定前に駆け込み需要が発生していた影響から住宅投資が前期比5.0%の高い伸びとなった。また、政府消費は1-3月期の前期比0.9%から同0.2%へと伸びが鈍化したものの、2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行の効果から公的固定資本形成が前期比2.3%と1-3月期の同0.1%から伸びが加速し、国内需要は1-3月期に続いて民需、公需ともに前期比プラスとなった。
4-6月期の成長率は1-3月期から大きく低下したが、GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われておらず、1-3月期は日数増により年率1%程度押し上げられる一方、4-6月期は年率▲1%程度押し下げられている(当研究所による試算値)。この影響を除けば実質GDPは1-3月期、4-6月期ともに前期比年率1%程度となる。景気が2015年度初め頃から続く足踏み状態から完全に脱したとは言えないが、消費増税後低迷が続いてきた個人消費が持ち直しつつあることは明るい材料と考えられる。

政府は8月2日に「未来への投資を実現する経済対策」を閣議決定した。事業規模は28.1兆円と過去3番目の大きさで安倍政権下では最大となるが、直接的な財政支出(国+地方)は7.5兆円である。
また、雇用保険料率の引き下げ、年金受給資格期間の短縮、簡素な給付措置などは家計所得の押し上げに寄与するが、これがそのまま消費につながるわけではない。さらに、この金額は2016年度補正予算だけでなく、2017年度当初予算も含んだものとなっており、今回の対策で積み増された分、2017年度当初予算が抑制されれば経済効果は減殺されることになる。GDPの押し上げ効果はみかけほど大きくないことには注意が必要だ。
政府は今回の対策による実質GDPの押し上げ効果を1.3%程度と見込んでいるが、当研究所では0.7%程度と試算している。実質GDPの押し上げ幅は2016年度が0.3%、2017年度が0.4%、実質GDP成長率への影響は2016年度が0.3%、2017年度が0.1%となる。対策の効果は2016年度末から2017年度初めにかけて最も大きくなり、その後は押し上げ幅が大きく縮小する。経済対策の効果剥落による景気の下押し圧力を緩和するために、2017年度も補正予算の編成が不可避となるだろう。なお、当研究所では6月の経済見通し作成時点で5兆円程度の経済対策を織り込んでいたため、今回の経済対策によって成長率の見通しが大きく変わることはない。
(円高局面では消費が景気を下支え)
2016年に入ってから、世界経済の減速懸念、米国の利上げに対する慎重姿勢の高まり、英国のEU離脱決定などから円高傾向が続いている。2015年末には120円程度だったドル円レートは2016年1-3月期が115.5円、4-6月期が108.2円となった後、7月以降は概ね100円台前半で推移している。
円高の進展はすでに日本経済に明確な影響を及ぼしている。法人企業統計の経常利益は2015年10-12月期に前年比▲1.7%と4年ぶりの減益となった後、2016年1-3月期は同▲9.3%と減益幅が拡大した。消費者物価(生鮮食品を除く総合)はエネルギー価格の大幅下落を主因として2016年3月以降、前年比でマイナスが続いているが、足もとでは円高に伴う輸入物価の下落が食料品を中心に物価の押し下げ要因となっている。
また、円安の追い風を受けて急増が続いていた訪日外国人旅行者数は前年比で二桁の伸びを続けているものの伸び率は鈍化傾向にあり、当研究所が試算した季節調整値では2016年4-6月期に前期比▲0.1%とほぼ横ばいにとどまった。円高は訪日外国人旅行者の消費単価の低下につながり、百貨店の外国人観光客向け売上高は2016年4月以降、前年比でマイナスとなっている。
2016年に入ってから、世界経済の減速懸念、米国の利上げに対する慎重姿勢の高まり、英国のEU離脱決定などから円高傾向が続いている。2015年末には120円程度だったドル円レートは2016年1-3月期が115.5円、4-6月期が108.2円となった後、7月以降は概ね100円台前半で推移している。
円高の進展はすでに日本経済に明確な影響を及ぼしている。法人企業統計の経常利益は2015年10-12月期に前年比▲1.7%と4年ぶりの減益となった後、2016年1-3月期は同▲9.3%と減益幅が拡大した。消費者物価(生鮮食品を除く総合)はエネルギー価格の大幅下落を主因として2016年3月以降、前年比でマイナスが続いているが、足もとでは円高に伴う輸入物価の下落が食料品を中心に物価の押し下げ要因となっている。
また、円安の追い風を受けて急増が続いていた訪日外国人旅行者数は前年比で二桁の伸びを続けているものの伸び率は鈍化傾向にあり、当研究所が試算した季節調整値では2016年4-6月期に前期比▲0.1%とほぼ横ばいにとどまった。円高は訪日外国人旅行者の消費単価の低下につながり、百貨店の外国人観光客向け売上高は2016年4月以降、前年比でマイナスとなっている。
円高は物価、企業収益、輸出、設備投資などを下押しする一方で、家計にとっては物価上昇率の低下が実質購買力の上昇につながるというメリットもある。実際、1980年以降の実質GDPの需要項目毎の動きを円高局面と円安局面に分けてみると1、円安局面では輸出、設備投資が経済成長の牽引役となっているが、円高局面では設備投資が失速する傾向がある一方で、民間消費が景気を下支えしていることが分かる。言うまでもなく、円高は企業収益の減少を通じて家計部門にも悪影響が及ぶ。実際、名目ベースの雇用者報酬は円安局面のほうが円高局面よりも伸びが高い。しかし、円安局面では物価上昇率の高まりとともに実質雇用者報酬の伸びが低下するのに対し、円高局面では物価上昇率の低下によって実質雇用者報酬の伸びが名目雇用者報酬を上回るようになり、このことが消費の下支えにつながっていることが推察される。
足もとの雇用所得環境を確認すると、一人当たり名目賃金は伸び悩みが続いている。厚生労働省が7/29に公表した「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によれば、2016年度の賃上げ率は2.14%となり、2015年度を0.24ポイント下回った。賃金総額の約4分の3を占める所定内給与は春闘賃上げ率が前年を下回ったことを受けて、2016年度入り後は前年比ほぼ横ばいとなっており、所定外給与、特別給与と合わせた現金給与総額も低い伸びにとどまっている。
一方、企業の人手不足感の高さなどを反映した雇用者数の高い伸びが雇用者所得の増加に大きく寄与している。さらに、年明け以降の円高、原油安の影響で物価上昇率がマイナスとなっていることが実質ベースの雇用者所得を押し上げている。実質雇用者所得(一人当たり実質賃金×雇用者数)は2016年3月以降、前年比で2%台の高い伸びを続けている。年明け以降の円高の進展を受けて企業部門は厳しさを増しているが、家計にとっては円高による物価下落がむしろ追い風となり、消費を取り巻く環境は徐々に改善している。
一方、企業の人手不足感の高さなどを反映した雇用者数の高い伸びが雇用者所得の増加に大きく寄与している。さらに、年明け以降の円高、原油安の影響で物価上昇率がマイナスとなっていることが実質ベースの雇用者所得を押し上げている。実質雇用者所得(一人当たり実質賃金×雇用者数)は2016年3月以降、前年比で2%台の高い伸びを続けている。年明け以降の円高の進展を受けて企業部門は厳しさを増しているが、家計にとっては円高による物価下落がむしろ追い風となり、消費を取り巻く環境は徐々に改善している。
1 名目実効為替レートの動きをもとに、円高局面:85/1Q~、90/2Q~、98/3Q~、02/1Q~、07/2Q~、円安局面:88/4Q~、95/2Q~、00/4Q~、04/1Q~、12/3Q~とした。
(2016年08月16日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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