2016年07月25日

貿易統計16年6月~4-6月期の外需寄与度はほぼゼロに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.原数値の貿易収支は2ヵ月ぶりの黒字

財務省が7月25日に公表した貿易統計によると、16年6月の貿易収支は6,928億円と2ヵ月ぶりの黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:4,948億円、当社予想は4,249億円)を上回った。輸入の減少幅が前月から拡大(5月:前年比▲13.8%→6月:同▲18.8%)する一方、輸出の減少幅が前月よりも縮小(5月:前年比▲11.3%→6月:同▲7.4%)したため、貿易収支は前年に比べ7,537億円の大幅改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比2.9%(5月:同▲2.4%)、輸出価格が前年比▲10.0%(5月:同▲9.1%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比0.4%(5月:同3.6%)、輸入価格が前年比▲19.1%(5月:同▲16.8%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移/輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は3,350億円の黒字となり、5月の2,945億円から黒字幅が若干拡大した。輸出入ともに増加したが、輸出の増加幅(前月比1.3%)が輸入の増加幅(前月比0.6%)を上回ったことが貿易黒字の拡大に寄与した。原数値の貿易収支は2ヵ月ぶりの黒字だが、5月の赤字はGWに伴う生産停止の影響でもともと輸出量が少なく赤字になりやすい月という季節性によるものであった。季節調整値の貿易収支は15年11月に東日本大震災以降初の黒字となった後、8ヵ月連続で黒字となっている。

2.輸出数量は横ばい圏の動きが継続

6月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比2.9%(5月:同▲6.2%)、EU向けが前年比8.0%(5月:同▲1.4%)、アジア向けが前年比1.8%(5月:同▲2.1%)となった。

4-6月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲2.1%(1-3月期:同2.6%)、EU向けが前期比▲3.1%(1-3月期:同5.7%)、アジア向けが前期比▲1.2%(1-3月期:同0.5%)、全体では前期比▲0.2%(1-3月期:同▲0.4%)と小幅ながら2四半期連続の低下となった。1-3月期とは逆に4-6月期は主要3地域向けが弱め、中東、中南米、ロシアなどその他地域が強めとなったが、輸出数量全体では海外経済の減速、円高の進展を背景に横ばい圏の動きが続いている。

4-6月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前期比▲0.9%(1-3月期:同1.2%)と2四半期ぶりの低下となった。国内需要の低迷を反映し輸入は弱めの動きとなっている。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移

3.4-6月期の外需寄与度はほぼゼロに

6月までの貿易統計と5月までの国際収支統計の結果を踏まえて、16年4-6月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出、輸入ともに前期比▲0.5%程度の減少となり、4-6月期の外需寄与度は前期比でほぼゼロ%となることが予想される。

当研究所では鉱工業生産、家計調査、建築着工統計等の結果を受けて、7/29のweeklyエコノミストレターで4-6月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需がほぼ横ばいとなる中、民間消費、住宅投資、公的固定資本形成などの国内需要が増加することから、小幅ながら2四半期連続のプラス成長を予想している。
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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年07月25日「経済・金融フラッシュ」)

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