コラム
2016年08月02日

人間ドックのスケジューリングについて思うこと-医療資源の効率的な活用と受診者の待ち時間の短縮化-

中村 亮一

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はじめに

毎年6月から8月にかけては、人間ドックを受ける季節となっている。私も、東京に移り住んでからのここ10年間は、6月か7月に、いつも同じクリニックで人間ドックによる検査を受けている。私の通うクリニックの場合、受付から最後の清算まで、全体として、約3時間程度で終了する形になっている。たかが3時間なので、あまり気にする必要もないのだが、時々、検査項目によっては長い待ち時間となり、全体のスケジューリングがどのように行われているのだろうか、とふと疑問に感じたりもする。さらに効率的な運営が行われていれば、待ち時間をより短縮できるのではないか、とも思ってしまう。これは、時間に追われている現代人の悪い癖なのかもしれない。

人間ドックの検査項目

人間ドックの検査項目には、(1)身体計測(体重、身長、腹囲)、(2)血圧、(3)採血、(4)視力、(5)眼底・眼圧、(6)聴力、(7)心電図、(8)肺機能(肺活量)、(9)胸部レントゲン、(10)腹部超音波、(11)胃部レントゲン(バリウム検査)、(12)問診、(13)診察、等が含まれている。また、受診者の希望に応じて、各種のオプション検査も行われることになる。例えば、(11)の代わりに、「胃カメラ」等が選択されたりする1。さらに、女性の場合には、女性特有の検査も行われることになる。

これらの検査項目において、検査に要する時間はそれぞれ異なっている。もちろん、病院サイドも、時間がかかる検査については、それがボトルネックになって、全体の効率を損なわないように、複数の検査ブース等を設定している。これによって、全体の検査が滞らないように管理されている。
私の通っているクリニックでは、(1)から(8)の検査については、基本的には1つか2つ(採血は3つ)の検査ブースを配置しているが、(9)、(10)、(11)、(12)については、3つ以上の検査ブースを配置しているようである。
 
1 さらに、最近では、虫歯や歯周病の早期発見等を含めた歯の健康を総合的にチェックする「歯科人間ドック」が広がりをみせてきているようである。

人間ドックの検査項目のスケジューリング

さて、これらの検査項目のスケジューリングは、一般的にどのように行われているのだろうか。
全員が同じ検査項目の順番に従って受診するケース
昔は、学校や職場等の健康診断と同様に、受診者全員が最初の検査項目から、順番に検査していたように思われる。今でも、そのようなクリニックも多いのかもしれない。
受診者をグルーピングして、いくつかのパターンを有しているケース
私の通っているクリニックでは、検査の順番は、受診者によっても異なっている。かといって、全く無秩序に順番を決めているわけでもなさそうで、どうも、いくつかのパターンがあるようにみえる。受診者をいくつかにグルーピングして、それぞれのパターンに従わせているようにみえる。

看護師に「次は○番の検査項目に行って下さい」と指示されて、言われるがままに、該当検査項目の場所の棚に検査ボードを立てかけている。時には、ボードが多く並んでいて、かなり待たされることになる。

加えて、特定の看護師が、各検査の繁閑を見る中で、看護師全体に対して、「○番の検査項目へ誘導して下さい」というようなことを述べて、全体のスケジューリングの管理を行っている。
個々の受診者をスマートフォンで管理しているケース
これに対して、聞くところによれば、最近は、個々の受診者にスマートフォンを配布・携帯させて、スマートフォンでスケジュール管理をしているクリニック等もあるようである。1つの検査が終了すると、スマートフォンが各検査項目の待ち状況を勘案して、各受診者に対して、最も適切な次の検査項目を指示してくれるようである。

これも何か機械に管理されているようで、必ずしもいい気持ちがしないと思われる人もいるかもしれないが、時間の効率的管理のためには、止むを得ない。
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中村 亮一

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