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利益調整に関する財務指標に着目した信用リスク分析-「粉飾」に起因した企業倒産の予見は可能か?

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹
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6――まとめ
さらに、信用リスクモデルの観点から、Accruals Ratioを用いた分析が有効だと考えられることを紹介した。過去5年間のAccruals Ratioの加重和で表現されるAR Scoreを用いることで、AltmanのZ Scoreモデルでは捕捉できない信用リスクについて補完できる可能性を示した。従来から分析対象となることの多い「営業利益」「売上高」「運転資本」等の財務指標に関して、信用リスクを把握するための数値そのものが企業によって調整されている場合には、通常の財務分析のみによる信用リスク分析では正しくそのリスクを捕捉できない怖れがあることを指摘した。特に2005年以前の倒産企業と2006年以降の企業倒産を比較すると、「売上高」や「営業利益」の項目に特徴的な変化が見られる企業が増えていることを示した。このことは、2006年以降の一部の倒産企業において倒産直前までAccruals Ratioが大きな数字になる傾向があることと平仄が合うものであり、本レポートで提示した方法は従来の信用リスクモデルでは説明することが難しい信用力悪化の要因について補完する役割として有用ではないかと思われる。
最後に、本レポートで採用した方法を金融機関に適用するにはさらなる分析が必要となると思われる。一般的に金融機関においては、金融取引による利益調整が用いられることから、現金を含めた財務活動についても考慮が必要となるためである。この点については、今後の課題としたい。
大城直人 (2014), 「不正会計の早期発見に関する海外調査・研究報告書」, FSA Institute Discussion Paper Series, 2014年8月
木島正明, 小守林克哉 (1999), 「信用リスク評価の数理モデル」, 朝倉書店
帝国データバンク (2015), 「2014年度 コンプライアンス違反企業の倒産動向調査」(2015.4.17)
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(2016年07月13日「ニッセイ基礎研所報」)

03-3512-1848
- 【職歴】
2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
2021年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)
【著書】
成城大学経済研究所 研究報告No.88
『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
出版社:成城大学経済研究所
発行年月:2020年02月
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