2016年06月30日

【5月米個人所得・消費支出】消費は前月から伸び鈍化も、高かった前月の反動、基調は底堅い。

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:消費は、大幅な伸びとなった前月から鈍化も、底堅い伸びが持続

6月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は5月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.2%(前月改定値:+0.5%)となり、高い伸びとなった前月から伸びが鈍化、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%も下回った。一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.4%(前月改定値:+1.1%)と、こちらも前月から伸びは鈍化したものの、市場予想(+0.4%)には一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比+0.3%(前月改定値:+0.8%)と、前月から伸びは鈍化したものの、市場予想(+0.2%)を上回った(図表5)。貯蓄率1は5.3%(前月:5.4%)と前月から低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:+0.3%)と、前月から小幅低下したものの、市場予想(+0.2%)には一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.2%(前月値:+0.2%)となり、こちらは前月、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+0.9%(前月:+1.1%)、コア指数が+1.6%(前月値:+1.6%)となり、コア指数は前月と同水準となったものの、総合指数は前月から小幅に低下した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:2ヵ月連続で消費が所得の伸びを上回る

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費支出(前月比)は、好調な雇用増加を反映して所得が底堅い伸びを示す中でも、16年1-3月期は所得対比で伸び悩む状況となっていた。しかしながら、4月以降は2ヵ月連続で消費の伸びが所得を上回っており、貯蓄率も漸く昨年秋口の水準まで低下してきた。このため、所得対比で消費が伸び悩む状況は相当程度解消されてきたとみられる。

16年初からの株式市場の大幅下落は、2月中旬以降に回復基調となっていることと併せて考えると、1-3月期の消費不振は株式市場の下落が消費マインドの悪化を通じて影響を与えた可能性が高いとみられる。もっとも、足元では、英国のEU離脱が決まり世界的に資本市場が再び不安定になっているほか、これまで好調であった米労働市場の回復持続可能性に懸念もでていることから、6月に消費が好調を維持できるか注目される。

一方、物価は原油価格が2月を底に上昇したこともあり、3月以降は前月比でみてプラスで推移している。もっとも、前年比では1%近辺に留まっており物価の大幅な加速がみられないほか、FRBの物価目標(2%)を大幅に下回る状況が持続している。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は3ヵ月連続で前年比+1.6%となっており、こちらも加速はみられない。

3.所得動向:賃金・給与が前月の反動もあり、伸びが鈍化

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.2%(前月:+0.5%)と前月に高い伸びとなった反動もあり、前月から伸びが鈍化した(図表2)。5月の雇用統計では時間当たり賃金の伸びは堅調であったものの、雇用増加数の伸びが大幅に鈍化していたことから、雇用者報酬への影響も含めて来月以降の雇用統計で雇用増加ペースが回復するか注目される。一方、利息・配当収入は+0.4%(前月:+0.4%)とこちらは、3月の+0.6%には及ばないものの、底堅い伸びが持続している。

個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が+0.2%(前月:+0.5%)、価格変動の影響を除いた実質ベースも+0.1%(前月:+0.2%)と、前月から伸びが鈍化した(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:前月の反動もあり、全般的に伸びは鈍化

個人消費の内、財消費は前月比+0.5%(前月:+2.0%)、サービス消費は+0.4%(前月:+0.7%)と、財、サービスともに伸びは鈍化した(図表4)。これは前月に高い伸びとなった反動とみられるが、それでもプラスを維持したことから消費の基調は強いと言える。

財消費では、耐久財が+0.4%(前月:+2.6%)、非耐久財が+0.6%(前月:+1.7%)となった。耐久財では、自動車・自動車部品が▲0.02%(前月:+6.3%)、家具・家電が▲0.1%(前月:+0.8%)と前月からマイナスに転じた。非耐久財ではガソリン・エネルギーが+3.0%(前月:+7.9%)、食料・飲料が+0.6%(前月:+1.2%)と伸びが鈍化した。

一方、サービスでは交通が+0.9%(前月:▲0.1%)と前月の反動でプラスに転じたほか、外食・宿泊が+0.7%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速したものの、住宅・公共が+0.6%(前月:+1.3%)と伸びが鈍化したほか、娯楽サービスが▲1.1(前月:+1.3%)とマイナスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前月比でプラスも前年同月比では大幅なマイナスが持続

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.4%(前月:+3.8%)と3ヵ月連続でプラスを維持しており、エネルギー価格からの物価下落圧力は後退している(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.5%(前月:+0.2%)と、こちらは物価の抑制された状況が持続している。

前年同月比では、エネルギー価格指数が▲11.0%(前月:▲8.1%)と、前月からマイナス幅が拡大するなど、依然として物価を押下げる状況が持続している(図表7)。食料品価格指数は、▲0.3%(前月:+0.1%)と、こちらも小幅ながら物価を押下げる状況が持続している。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2016年06月30日「経済・金融フラッシュ」)

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【【5月米個人所得・消費支出】消費は前月から伸び鈍化も、高かった前月の反動、基調は底堅い。】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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