2016年04月28日

鉱工業生産16年3月~15年度を通して弱い動きが続いた生産活動

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.1-3月期は再び減産に

経済産業省が4月28日に公表した鉱工業指数によると、16年3月の鉱工業生産指数は前月比3.6%(2月:同▲5.2%)と2ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比2.9%、当社予想も同2.9%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比1.4%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比2.8%と3ヵ月ぶりの上昇となった。
3月の生産を業種別に見ると、大手自動車メーカーの工場操業停止の影響で2月に前月比▲8.8%と急速に落ち込んだ輸送機械が挽回生産により前月比8.8%と大幅に増加したほか、新興国経済減速の影響などから低調な動きが続いていたはん用・生産用・業務用機械も前月比3.2%と高めの伸びとなるなど、速報段階で公表される15業種中12業種が前月比で上昇、3業種が低下した。
16年1-3月期の生産は前期比▲1.1%(15年10-12月期:同0.1%)と2四半期ぶりの減少となった。鉱工業生産は直近4四半期のうち3四半期が減産となり、唯一増産となった15年10-12月期もわずか前期比0.1%の伸びにすぎない。鉱工業生産は15年度を通して弱い動きが続いた。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は15年10-12月期の前期比▲1.7%の後、16年1-3月期は同▲2.6%と4四半期連続で低下した。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は15年10-12月期の前期比▲1.7%の後、16年1-3月期は同▲1.0%と3四半期連続で低下した。
GDP統計の設備投資は15年7-9月期の前期比0.7%から10-12月期には同1.5%へと伸びを高めたが、16年1-3月期は企業収益の悪化などを受けて3四半期ぶりの減少となる可能性が高い。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は15年10-12月期の前期比1.4%の後、16年1-3月期は同▲1.9%と3四半期ぶりに低下した。耐久消費財が前期比▲3.4%(10-12月期:同1.6%)、非耐久消費財が前期比▲0.3%(10-12月期:同0.8%)といずれも弱い動きとなった。
16年1-3月期の消費関連指標は消費財出荷指数に加え、商業動態統計の小売販売額指数、家計調査の消費水準指数(除く住居等)も前期比でマイナスとなり、個人消費の弱さを示すものとなっている。

2.熊本地震の影響で4月の生産は大幅な下振れが不可避

製造工業生産予測指数は、16年4月が前月比2.6%、5月が同▲2.3%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(3月)、予測修正率(4月)はそれぞれ1.7%、▲1.2%となった。
4、5月の予測指数は4/10時点で調査されており、4/14に発生した熊本地震の影響は織り込まれていない。今回の震災では、直接被災した熊本県の工場に加え、熊本県の工場からの部品供給が滞ったことから熊本以外の地域でも自動車、電機メーカーを中心に工場の稼動停止が相次いだ。
大震災後の鉱工業生産 過去の震災時(阪神淡路大震災、新潟県中越地震、新潟県中越沖地震、東日本大震災)の生産活動を振り返ってみると、震災当月は前月比でマイナスとなる(ただし、新潟県中越沖地震発生月の生産はその後の統計の改定により震災当月も小幅プラスへと修正された)が、サプライチェーンの寸断などにより操業停止が長期化した東日本大震災のケース以外では、翌月には増産に転じ震災前の水準をほぼ回復している。今回も、一部の企業では海外からの部品調達を進めるなどして工場稼動を再開しており、地震による生産活動の落ち込みが長期化する可能性は低いと考えられる。
ただし、震災発生前から生産の基調は弱く、海外経済の減速、円高の進展、国内需要の低迷など下押し要因も多いため、生産が明確に上向くまでには時間を要するだろう。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年04月28日「経済・金融フラッシュ」)

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