- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- ジェロントロジー(高齢社会総合研究) >
- 高齢者の医療・介護 >
- 介護施設の選定-終の住処 (ついのすみか) は、どう選ぶか?
介護施設の選定-終の住処 (ついのすみか) は、どう選ぶか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
通称、「サ高住」と呼ばれる。サ高住は、2011年より新設されている施設だ。通常、入居時に頭金は不要なことが多いが、一般の賃貸住宅のように敷金等がかかる。月々の利用料は、特養より高いが、有料老人ホームよりは安い。介護サービスは、地域の居宅介護サービス等を利用する。施設といっても、起床や食事時間が自由で、外出の制限がなく、来客の宿泊も可能であるなど、賃貸住宅の感覚に近い。そのため、入居ニーズが急騰しており、それに応える形で、新設ラッシュが続いている。
(4) ケアハウス
ケアハウスは、軽費老人ホームの類型の1つである。軽費老人ホームは、その名前のとおり、費用の安い老人ホームであり、実際に有料老人ホームより利用料は安いことが多い。軽費老人ホームには、食事付きで所得制限のあるA型、食事なし(自炊)で所得制限のないB型、食事付きで所得制限のないケアハウス(C型)に分かれる。A型とB型は、健康な人が対象。要介護状態の人は、ケアハウスに入居する7。更に、ケアハウスは、自立型と介護型に分かれる。介護型ケアハウスでは、通常、施設の介護スタッフが介護サービスを行う。全室個室の上、利用料が安いため、近年、人気が高まっている。
認知症高齢者グループホームは、その名のとおり、認知症の高齢者が共同生活を送る施設となっている。法令上、1ユニットの定員は5~9人と定められている8。2ユニット構成の施設が多い。入居者は、家庭的な雰囲気の中で生活する。認知症の知識のある介護スタッフが常駐している。介護スタッフから、介護サービスや日常の世話を受けつつ、機能訓練を行い、認知症の緩和を図ることを目指す9。
認知症高齢者グループホームは、「地域密着型」の介護サービスである。地域密着型とは、施設や事業所が、同じ市区町村に住んでいる人に限定して、介護サービスを行うことを意味する。
この他にも、経済的理由から自宅での生活が困難な高齢者が入居する「養護老人ホーム」や、公営住宅等の公共賃貸住宅をバリアフリー化した「シルバーハウジング」、比較的健康な高齢者が共同生活をする「グループリビング」など、多様な高齢者向け入居施設がある。
なお、実際の施設は、各類型の中で、様々な形で運営されている。入居費用も、施設によって異なる。例えば、介護付き有料老人ホームには、頭金がかからないものから、数千万円するものまである。このため、介護施設の選定の際は、施設見学や体験入居をするなど、十分な検討が必要と言える。
7 都市部の入居ニーズに応える「都市型ケアハウス」もある。定員20人以下で、住民票が、施設と同じ市区町村の人が対象。
8「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年3月14日厚生労働省令第34号)第93条
9 認知症の症状の進行などにより、重度の要介護状態になると、共同生活が難しくなり、退去が必要となる場合もある。
5――介護施設を選ぶことの難しさ
1|突然型の要介護状態では、介護施設の選定が難題
漸次型の要介護状態では、入居者の意向や、費用負担等を十分に踏まえて、プランを設計することができる。ただし、首都圏近郊の特養等、人気が高い施設では、待ち期間が数年に及ぶこともある。
突然型の要介護状態の場合、介護施設の選定は、難題となる。脳卒中等で入院、治療を受けた結果、幸いにも一命をとりとめ、身体機能の麻痺を軽減すべく、リハビリを開始したとする。患者本人も、家族も、やれやれと一安心するところだ。ただ、この頃から、退院後の患者の行き先が問題となる。
病気が完治すればよいが、身体の麻痺が残り、要介護状態となることも多い。その場合、自宅で療養しつつ、訪問介護等のサービスを受けるか。それとも、介護施設に入居して、介護サービスを受けるか、を決めなくてはならない。その際、自宅での介護の場合の、家族の負担と、施設での介護の場合の、施設の空き状況や費用負担等とを、天秤にかけることとなる。仮に、高額の入居費用を賄うだけの資力があるとしても、終の住処(ついのすみか)として、施設を選定することは、容易ではない。
2|サ高住に入居して、検討時間を確保することも考えられる
突然型の要介護状態の場合、サ高住に入居して、介護を選ぶための検討時間を確保することも考えられる。サ高住は、敷金等はかかるが、頭金は不要なことが多い。月々の料金も、有料老人ホームほど高くはない。また、老健のような入居期間の制約はなく、いつでも入居・退去が可能である。
サ高住は使い勝手がよいため、入居のニーズが高まっている。これを受けて、事業参入が相次いでおり、事業者により、サービスの質が玉石混淆(こんこう)となっている懸念もある。政府は、サ高住の質を確保しつつ、戸数を、2020年までに60万戸に増やすべく、促進策をとっている。
6――おわりに (私見)
今後、介護施設の整備や、介護人材の育成が進んでいく。政府は、2015年に掲げた新三本の矢の3本目「介護離職ゼロ」に向けて、動きを加速させている。その進捗に、引き続き、注目していきたい。
(2016年04月18日「基礎研レター」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/28 | リスクアバースの原因-やり直しがきかないとリスクはとれない | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/04/22 | 審査の差の定量化-審査のブレはどれくらい? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/04/15 | 患者数:入院は減少、外来は増加-2023年の「患者調査」にコロナ禍の影響はどうあらわれたか? | 篠原 拓也 | 基礎研レター |
2025/04/08 | センチネル効果の活用-監視されていると行動が改善する? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【介護施設の選定-終の住処 (ついのすみか) は、どう選ぶか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
介護施設の選定-終の住処 (ついのすみか) は、どう選ぶか?のレポート Topへ