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1――マイナス金利の導入
2――見えにくい金融政策のコスト
マイナス金利政策は為替レートの操作を主目的としたものではないが、マイナス金利の採用によってユーロが大幅に下落したように、円高を抑止する効果もあると考えられる。日銀がマイナス金利を導入した直後に一時的に円安となっただけで、その後はすぐに円高に転じてしまったが、これは海外経済の様々な要因が働いた結果であり、マイナス金利の導入が円高を招いたわけではないと考えるべきだ。
マイナス金利の効果を否定してしまうのは行き過ぎだが、金融政策では誰も損をせずに全員が得をするような手品ができるような話も間違いだ。国債を発行して減税や公共事業の追加などで景気を刺激するような政策では、政府が借りたお金は最終的に税金で返さなくてはならないことが簡単にわかるので、国民の負担が見えやすい。これに比べると日本銀行が行う金融政策のコストは見え難く、一見すると誰の負担にもならないように見えてしまう。しかし、見えにくいというだけで金融政策でもさまざまな負担が発生する。
例えば、マイナス金利の導入によって日本では10年国債の利回りまでもがマイナスとなっているが、これによって、現在は見えていないものの、将来は大きな負担が発生する恐れがある。一例をあげると、国民年金や厚生年金などの公的年金や企業年金などでは、資金を一定の利回りで運用できることを前提に保険料や支払われる年金額が決められている。このため前提となっている運用利回りが実現できなければ、将来的には保険料の引き上げや年金額の削減、あるいは税金の投入といったことが必要になるからだ。
3――長期間続ける政策ではない
そもそも2013年に導入した量的・質的金融緩和自体が、普通の景気後退に対処する政策としては使うべきではないとされていたような非常手段だ。このとき目標とされた「2%の物価上昇」は2年程度で実現するとされていて、これほど長期に続けることは想定されていなかった。マイナス金利を追加したことで、金融緩和政策はより強力なものとなったが、さらに強い薬の副作用は当然のことながらより強烈だ。いずれ弊害が大きくなってしまう恐れが大きく、長期間続けるべき政策ではないと考える。
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櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
研究・専門分野
(2016年03月31日「エコノミストの眼」)
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