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- 令和の日本経済はどうなるか-経済予測の限界と意義
2020年02月07日
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1―経済予測は当たらない
昨年末の時点で、年末年始の休みの間に、イラン革命防衛隊幹部が殺害されて中東の緊張が一気に高まるといったことを予測していた人がいたとすれば驚きだ。昔は、気象庁と三回唱えて食べれば食当たりしないという冗談があり、当たらないものの代表として、天気予報とプロ野球の優勝球団の予想、経済予測があげられていた。しかし、スーパーコンピューターや衛星画像の利用などによって、気象予測の精度は大幅に高まった。一方残念ながら、プロ野球の優勝球団と経済予測の精度は相変わらずだというのが世の中の通り相場だろう。
両方に共通するのは、予測に大きな影響を与える想定外の事態が起こるが、それを予測するのは極めて難しいということではないか。野球であれば主軸選手が試合中にケガをして出場できなくなってしまうとか、過去に大した実績がない無名選手が突如大活躍するといったことが起こりうるが、事前には予測できない。経済についても、2016年の米国大統領選挙でトランプ大統領が誕生し、その後中国との間で関税の引き上げ競争をすることや、英国が国民投票でEUからの離脱を決めるなどと言うことは、予測できなかった。
経済活動には、人間が引き起こすものだけではなく、地震・台風といった大規模な自然災害も影響を与えるが、こちらも、いつ、何が起こるのかは、神のみぞ知ることであり、人知の及ばない領域だ。経済に大きな影響をあたえるが、予測不可能なことが何かしら起こるのだから、達観してしまえば経済予測は必ず外れる運命にある。筆者は長年経済予測をしてきたが、当てにならない経済予測などいらないと面と向かって言われたことも少なくない。
両方に共通するのは、予測に大きな影響を与える想定外の事態が起こるが、それを予測するのは極めて難しいということではないか。野球であれば主軸選手が試合中にケガをして出場できなくなってしまうとか、過去に大した実績がない無名選手が突如大活躍するといったことが起こりうるが、事前には予測できない。経済についても、2016年の米国大統領選挙でトランプ大統領が誕生し、その後中国との間で関税の引き上げ競争をすることや、英国が国民投票でEUからの離脱を決めるなどと言うことは、予測できなかった。
経済活動には、人間が引き起こすものだけではなく、地震・台風といった大規模な自然災害も影響を与えるが、こちらも、いつ、何が起こるのかは、神のみぞ知ることであり、人知の及ばない領域だ。経済に大きな影響をあたえるが、予測不可能なことが何かしら起こるのだから、達観してしまえば経済予測は必ず外れる運命にある。筆者は長年経済予測をしてきたが、当てにならない経済予測などいらないと面と向かって言われたことも少なくない。
2―経済予測の意義
そうは言っても、これからどうするかを決めようとすると、将来の経済がどうなるかを前提にせざるを得ない。短期間であれば現在と同じ経済状況が続くという前提でも何とかなることもある。しかし、長期的には今と同じ状況が続かないことは誰の目にも明らかなので、将来が今と同じという前提も受け入れ難い。結局のところ、できる限りのことをして将来を予測しようとすることになるのだが、人知を尽くしても予想外の事態が必ず起こってしまい、予測が外れたというお叱りを頂戴するのは想定される事態である。
経済予測の前提となる事象の予測ができないとは言うものの、将来発生する確度が高いものと、可能性が低いもの、発生の確率が全く分からないものがある。日本の人口構造が高齢化していくことはまず間違いないことで、他の要因がどうなっても令和の日本経済が対応しなくてはならない大きな課題だ。中国やインドなどの新興国がさらに発展して、欧米諸国や日本などのこれまでの先進諸国との間で、さまざまな摩擦が起こることも避けられまい。地球環境の変化が天候に影響を与え、経済にも様々な影響を与えることになる可能性も高いだろう。
歴史を振り返れば、後世の人達から見れば必然的に見える危機を回避できなかったということが何度も繰り返されている。経済予測は当たるとは言えないが、筆者はこれまで、経済予測の役割の一つは、これからおこる可能性の高い事象が日本経済にどのような影響を与えるかを示して、我々がどのように対応するかを考える材料とすることではないかと考えてきた。避けられるはずの危機を回避し、少しでも悪影響を緩和することが当たらないと批判される経済予測を作り続ける意義であり、これは恐らく今後も変わらないだろう。
経済予測の前提となる事象の予測ができないとは言うものの、将来発生する確度が高いものと、可能性が低いもの、発生の確率が全く分からないものがある。日本の人口構造が高齢化していくことはまず間違いないことで、他の要因がどうなっても令和の日本経済が対応しなくてはならない大きな課題だ。中国やインドなどの新興国がさらに発展して、欧米諸国や日本などのこれまでの先進諸国との間で、さまざまな摩擦が起こることも避けられまい。地球環境の変化が天候に影響を与え、経済にも様々な影響を与えることになる可能性も高いだろう。
歴史を振り返れば、後世の人達から見れば必然的に見える危機を回避できなかったということが何度も繰り返されている。経済予測は当たるとは言えないが、筆者はこれまで、経済予測の役割の一つは、これからおこる可能性の高い事象が日本経済にどのような影響を与えるかを示して、我々がどのように対応するかを考える材料とすることではないかと考えてきた。避けられるはずの危機を回避し、少しでも悪影響を緩和することが当たらないと批判される経済予測を作り続ける意義であり、これは恐らく今後も変わらないだろう。
3―切り替わる時代
年の途中で改元されたということもあって、令和元年はまだ平成の空気が強く漂っていた。令和二年の正月を迎え、時代は完全に平成から令和に切り替わろうとしている。平成の景気循環は昭和に比べて拡大期間が長いものが多かったが、その間の経済の拡大幅は小さく、足踏みを続けた期間も長かった。個人的には、様々なショックに見舞われて翻弄され、対応に追われたという印象が強い。
もっとも、昭和を通して生きてきた世代の人達からすれば、戦争や恐慌を経験した昭和の方がずっと激動の時代だったと思えるだろう。いつの時代も問題の種は尽きず、その時代を生きている人達には平穏だとは決して感じられないものなのかも知れない。
令和の日本経済もこれから様々な事件に遭遇し、令和を生きた人達が次の時代の変わり目に振り返ってみれば、令和は大変な時代だったと述懐することになるのだろうか。
もっとも、昭和を通して生きてきた世代の人達からすれば、戦争や恐慌を経験した昭和の方がずっと激動の時代だったと思えるだろう。いつの時代も問題の種は尽きず、その時代を生きている人達には平穏だとは決して感じられないものなのかも知れない。
令和の日本経済もこれから様々な事件に遭遇し、令和を生きた人達が次の時代の変わり目に振り返ってみれば、令和は大変な時代だったと述懐することになるのだろうか。
(2020年02月07日「基礎研マンスリー」)
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