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- 日経平均1万3,000円台も-最大のリスク要因は米国の景気後退
2016年02月25日

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■要約
米国景気の悪化が懸念され始めた。データや街の声からは現実味を帯びているように見える。実際に米国の景気後退を市場が織り込めば、米株安と円高のダブルパンチで、日経平均は年後半にも1万3,000円台まで下落するリスクがある。
■目次
1. 「株価=企業業績+市場心理」 の方程式
2. 16年3月期実績=上ブレ着地、17年3月期の期初予想=横ばい~微増
(1)16年3月期実績=5%程度の増益か
(2)17年3月期の期初予想=横ばい~微増
3. 17年3月期は10%以上の減益となる可能性も
(1)米国景気の先行き懸念
(2)1ドル=110円なら日経平均は1万3,500円も
米国景気の悪化が懸念され始めた。データや街の声からは現実味を帯びているように見える。実際に米国の景気後退を市場が織り込めば、米株安と円高のダブルパンチで、日経平均は年後半にも1万3,000円台まで下落するリスクがある。
■目次
1. 「株価=企業業績+市場心理」 の方程式
2. 16年3月期実績=上ブレ着地、17年3月期の期初予想=横ばい~微増
(1)16年3月期実績=5%程度の増益か
(2)17年3月期の期初予想=横ばい~微増
3. 17年3月期は10%以上の減益となる可能性も
(1)米国景気の先行き懸念
(2)1ドル=110円なら日経平均は1万3,500円も
1.「株価=企業業績+市場心理」 の方程式
2016年の株式市場は、日経平均が史上初の年初から6営業日続落を記録するなど世界的な下落で幕を開けた。主な要因は中国経済の減速懸念と人民元安、原油価格の急落、そして米国の追加利上げの不透明感だ。また、1月後半以降、日本企業の業績見通しが相次いで下方修正されたことも株価下落に拍車をかけた。
追い討ちをかけるようにドイツ銀行の信用リスク問題が表面化すると市場心理はさらに悪化し、安全資産とされる円に投資マネーが逃げ込んだ。その結果、一時1ドル110円まで進んだ円高が株安を加速させ、2月12日には終値で1万5000円を割り込んだ。日銀が量的質的金融緩和第2弾(バズーカ2)を導入する前の2014年10月21日以来だ。さすがにここまで下がると買い戻す動きも出て、週明け2月15日は日経平均が1,069円の急上昇、一気に1万6000円台を回復した。最悪の状態は脱したようにみえるが、この先も安心できない。最大のリスクは堅調とされる米国の景気悪化だ。
そもそも、株価を決める最大の要素は企業業績だ。図1の帯状は会社予想PER14倍~16倍に相当する株価水準で、筆者はこれを「適正ゾーン」としている。実際の株価は概ね適正ゾーンに沿って推移してきた。市場心理が強気に傾くと上限(PER16倍)を超えたり、弱気になると下限(PER14倍)を下回ることもあるが、すぐにゾーン内に戻るという動きを繰り返してきた。
図1からは年明け以降に業績予想が大きく下方修正されたことが見て取れる。中国や原油価格など外部要因の不安定さの増大に業績悪化が重なったため市場心理が極端に冷え込み、株価が急落したとみればよいだろう。以下では、株価の先行きを予想するため、企業業績を中心に議論する。
追い討ちをかけるようにドイツ銀行の信用リスク問題が表面化すると市場心理はさらに悪化し、安全資産とされる円に投資マネーが逃げ込んだ。その結果、一時1ドル110円まで進んだ円高が株安を加速させ、2月12日には終値で1万5000円を割り込んだ。日銀が量的質的金融緩和第2弾(バズーカ2)を導入する前の2014年10月21日以来だ。さすがにここまで下がると買い戻す動きも出て、週明け2月15日は日経平均が1,069円の急上昇、一気に1万6000円台を回復した。最悪の状態は脱したようにみえるが、この先も安心できない。最大のリスクは堅調とされる米国の景気悪化だ。
そもそも、株価を決める最大の要素は企業業績だ。図1の帯状は会社予想PER14倍~16倍に相当する株価水準で、筆者はこれを「適正ゾーン」としている。実際の株価は概ね適正ゾーンに沿って推移してきた。市場心理が強気に傾くと上限(PER16倍)を超えたり、弱気になると下限(PER14倍)を下回ることもあるが、すぐにゾーン内に戻るという動きを繰り返してきた。
図1からは年明け以降に業績予想が大きく下方修正されたことが見て取れる。中国や原油価格など外部要因の不安定さの増大に業績悪化が重なったため市場心理が極端に冷え込み、株価が急落したとみればよいだろう。以下では、株価の先行きを予想するため、企業業績を中心に議論する。
2.16年3月期実績=上ブレ着地、17年3月期の期初予想=横ばい~微増
これは下方修正を避けたいという企業側の心理などが理由と考えられ、16年3月期の着地も上振れが期待される。とはいえ、中国経済の減速や円高によるマイナスの影響が出始めており、増益幅は前期比5%程度にとどまるだろう。
(2)17年3月期の期初予想=横ばい~微増
次に17年3月期の期初予想は「横ばい~微増」が予想される。昨年8月のチャイナ・ショック以降、原油をはじめとする資源価格の急落、米国の利上げが新興国経済に及ぼす影響、米国経済の先行き、欧州銀行の信用懸念など不透明さが増している。これでは為替レートの見通しも定まらない。こうした中で企業側が強気の業績予想を出すとは考えにくい。かといって経営環境が決定的に変わったともいえず、前期比マイナスの期初予想を出すのも具合が悪い。
その結果、17年3月期の期初予想は横ばい~微増にとどまるだろう。実際、2月19日付けの日経新聞は先日出揃ったブリヂストンなど12月決算企業の16年12月期予想(連結経常利益)が前期比+2%増にとどまったと伝えている。
(2)17年3月期の期初予想=横ばい~微増
次に17年3月期の期初予想は「横ばい~微増」が予想される。昨年8月のチャイナ・ショック以降、原油をはじめとする資源価格の急落、米国の利上げが新興国経済に及ぼす影響、米国経済の先行き、欧州銀行の信用懸念など不透明さが増している。これでは為替レートの見通しも定まらない。こうした中で企業側が強気の業績予想を出すとは考えにくい。かといって経営環境が決定的に変わったともいえず、前期比マイナスの期初予想を出すのも具合が悪い。
その結果、17年3月期の期初予想は横ばい~微増にとどまるだろう。実際、2月19日付けの日経新聞は先日出揃ったブリヂストンなど12月決算企業の16年12月期予想(連結経常利益)が前期比+2%増にとどまったと伝えている。
(2016年02月25日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
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