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福祉用具・介護ロボット実用化支援事業の現状と今後-介護現場との協働と共創が必須の介護ロボットの開発-
青山 正治
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はじめに
本稿では後者の2015年度「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」について、その概要と年々充実してきている取組内容に触れる。さらに厚生労働省の平成28年度予算案にある介護ロボット等の開発支援事業による主な取組について確認し考察を加える。
1 ここでは、介護ロボット(ロボット介護機器)の開発・実用化の支援事業を中心に取り上げるが、この他にも、厚生労働省による「介護ロボット導入支援事業」など介護現場への介護ロボットの普及を支援する事業がある。
1――厚生労働省・テクノエイド協会による「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」の概要
初めに、平成27(2015)年度の同事業の主な4つの具体的な取組内容を確認する(図表-1)。
この具体的な取組の一つ目は、図表-1の「相談窓口の設置(左上)」であり、企業からの福祉用具や介護ロボットの開発に関する質問などを受ける電話相談窓口が設置、運営されている。
二つ目の「実証の場の提供(右上)」は、後述する三つ目の「モニター調査の実施(左下)」のために、調査実施に協力意向を有する介護施設等を登録、リスト化して、それらの施設等に対して、公募で採択された調査実施企業の協力募集等に関する最新情報を提供するという取組である。
三つ目の「モニター調査の実施(左下)」には、後述する「専門職によるアドバイス支援事業」と「介護ロボット等モニター調査事業」の大きく二つの事業がある。
四つ目の「普及・啓発(右下)」には、全国での普及・啓発事業以外にも、現在使用可能な福祉用具や介護ロボットの貸出事業等も新たに含まれている。
2――主要な4事業の内容と具体的な取組状況
1|開発企業や介護施設などからの「相談窓口の設置」の取組について
この「相談窓口の設置」は、企業からの福祉用具や介護ロボット等の機器開発などに関する質問や、介護施設からの介護ロボット導入などに関する様々な質問や相談に対応している。勿論、メールによる問い合わせも可能である。このほか、インターネットによる最新情報の発信も行われている。
2|「実証の場の提供」の取組について
この事業は概要で述べたとおり、次節の「モニター調査の実施」のために、機器の検証や実証に協力意向を有する介護施設や事業所等を登録(現在、500強の登録)、リスト化し、登録介護施設等に対して、モニター調査の実施を希望する企業の協力施設募集情報や様々な説明会などの最新情報をメールマガジンで発信するという取組である。
現時点では、介護ロボット等の開発企業が独力で介護関係者への相談や実証試験などの「場」を確保することが容易ではないため、国の主導によりこの取組が行なわれている。
3|支援事業の中心となる「モニター調査の実施」の取組について
この事業は4事業の中での中核事業ともいえる事業であり、事業内容は大きく二つに分けられている。一つ目は「専門職によるアドバイス支援事業」であり、二つ目は「介護ロボット等モニター調査事業(実証試験2も可能)」である。また、前者には開発企業の機器開発段階に応じて「介護職等との意見交換」と「専門職によるアドバイス支援」の二つがある。
以降では各事業について、具体的事業の目的や背景、さらに、現在確定している公募採択の開発機器(企業)と協力機関を示し、その状況を簡略に概観する。
2 ここでは、開発された介護ロボット等の試作機などを実際に介護現場で使用し、安全性や機能、効果等に関する確実な証拠を得るための試験
この事業は、機器開発初期段階の企業が、施設関係者と自由な意見交換を行なう内容である。試作機の開発に着手する前後に、企業が開発する機器のコンセプトや開発の方向性などについて、施設の介護職等と意見交換することで開発コンセプトなどにズレがないか、さらに新たなニーズがないかなどを確認することが出来る。この事業は介護施設の職員などに意見を聞く機会を得ることが難しい、福祉用具等の事業への新規参入を検討する中小企業等にとって、大変有益な事業である。
2015年度事業の機器(採択企業)と意見交換協力機関を図表-2に示す。公募により採択された6機器の企業(重複あり)のうち、4企業は高齢者や介護とは直接の接点がないと思われる異業種の企業となっている。
意見交換協力機関は介護施設や福祉用具などの専門評価機関となっている。また、開発企業の大半は、既に初期の試作機等を有する企業である。
次に、「専門職によるアドバイス支援」事業は、企業の試作機の開発初期段階以降における、介護現場や福祉機器等の専門職によるアドバイス支援事業である。基本的に、上述の「介護職等との意見交換」より開発段階が進んでいる機器・事業が対象となっている。
完成前の試作機について専門職からのアドバイスを得るメリットは、試作機の完成度を上げることによって開発の手戻りを少なくし、効率的に機器開発を進められる点である。現在までに10機器(企業)の事業が採択されており、企業の特徴としては、半数強は介護サービス事業や福祉機器関連の事業を行っており、あと半数弱は、電子機器や電子部品の製造業やコンサルティング業等の、様々な業種の企業となっている。なお、10社のうち9社が試作機を有している。また、アドバイス支援協力機関はリハビリの専門機関や介護施設等となっている。(図表-3)。
(2016年02月03日「基礎研レポート」)
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