2015年12月24日

保険業法の法改正は保険比較サイトのあり方を変えるか?そして消費者契約法改正の動向は

保険研究部 取締役 研究理事・ジェロントロジー推進室兼任   松澤 登

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2保険規制における新たな整理

金融庁は金融審議会の報告書を受け、監督指針改定案を出した。それによればa.保険募集に該当するもの、b.募集関連行為に該当するもの、c.aにもbにもいずれにも該当しないもの、すなわち規制対象となる募集行為とは関連性を認められないもの4、に分けている。aとbについて改定監督指針案に沿って説明を加えよう。
 
a.は通常の勧誘行為が入るとしているが、特に、「保険会社等から報酬を受けるなど募集行為と一体性・連続性を推測される事情があ」り、かつ「具体的な保険商品の推奨・説明」する行為については該当するかどうか総合的に判断するとしている5。商品比較サイトに関して言えば、特定商品を具体的な商品内容説明つきで推奨表示(ランキング1位!など)し、このように表示を行なうことに関して保険会社等から報酬を受け取っている場合などが該当する可能性があると思われる。これらの行為は保険募集に該当すると判断されれば、サイト運営者自身が保険募集人でなければならない。ちなみに今回の法改正においては、この例のように中立的と見せかけて特定の会社の商品を勧めるような行為の問題性に鑑みて、保険募集人が特定の商品を推奨する場合には客観的な基準や理由を示さなければならないこととされた(改正監督指針案II-4-2-9(5)c)。
 
b.は保険募集に該当しない行為ではあるが、cともいえない中間的な行為を指すとされている。改正監督指針案では例として保険募集人紹介サイトや保険会社からの情報を転載しただけの商品比較サイトが挙げられている。上述の、顧客に不利益を及ぼしかねない行為に関する対応として設けられたものである。これらの行為は募集ではないので保険募集人でなくても行なうことができる。そしてサイト運営主体を直接行政が監督するのではなく、保険会社や保険募集人が注意・指導すべきものとしている。これは募集といえない以上、行政にサイト運営主体に対する監督権限があるとはいいにくいため、保険業法上で適正販売の責務を負う保険会社等に管理責任を負わせたものと考えられる6。そのため保険会社等との契約がなければ保険業法では何らの規制はかからないことになる。
 
4 監督指針改定案では (ア)保険会社または保険募集人の指示を受けて行う商品案内チラシの単なる配布、(イ)コールセンターのオペレーターが行う、事務的な連絡の受付や事務手続き等についての説明、(ウ)金融商品説明会における、一般的な保険商品の仕組み、活用法等についての説明、(エ)保険会社または保険募集人の広告を掲載する行為、が挙げられている。これらについては保険募集行為としての規制はかからない。
5 厳密には改正監督指針案では勧誘行為とは別に「その他の保険契約の締結の代理又は媒介」のひとつとしてこの行為が挙げられている。しかし募集の一類型と区分している以上、勧誘プロセスの一段階として位置付けていると考えられる。
6 金融審議会の審議の過程では保険募集人紹介サイトが、紹介を申し込んだ顧客に対して金銭的利益を供与することについて議論がなされている(平成25年3月1日付金融審議会保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ議事録参照)。改正監督指針案では保険募集人等はこれらの行為が行なわれている場合、保険募集人に禁止されている特別利益提供の禁止(保険業法第300条1項5号)の潜脱行為に該当しないかどうかなどそれが合法かどうか注意すべきものとされた(II‐4‐2‐1(2)a)。

4――まとめ

上記の通り、勧誘(募集)に該当するかどうかは一定の判断基準を示しつつ総合的に判断するとした。また勧誘(募集)そのものには該当しないが、募集に関連する行為というカテゴリーを設け、そこに規制を間接的にかけていく方式をとった。後者のような規制を間接的としても設けたのは保険業法が保険に関連する事業者の業務ルールを定める監督法規であるからであろう。

一方で、消費者契約法においては契約の取消権を認めるかどうかという二択が重要であり、「関連する行為」といったカテゴリーを作る意味はない。そのため「勧誘」に該当するかどうかの解釈の明確化が非常に重要である。消費者契約法は、契約当事者間の利害調整のための法であり、必ずしも監督法規である保険業法と同じ解釈となるとは限らないが、保険業法上の考えを消費者契約法の勧誘概念に単純に当てはめると「販売主体自体が、もしくは販売主体との募集行為と一体性・連続性を推測させ」かつ「具体的な商品の推奨・説明を行なう」というのが判断の主要素のひとつとなりそうである。しかし、一般にイメージされる保険商品ほどの具体的な商品説明を要せず購入される商品は多く、その場合にどう考えるべきか。この場合、単なる広告との差異をどのように判断するのであろうか。

このように見てくると、世の中すべての消費者契約に適用される消費者契約法における「勧誘」の意義・範囲を明確化することが相当に難しいことがわかる。今後の消費者委員会や消費者庁での議論・検討に注目したい。
 
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保険研究部   取締役 研究理事・ジェロントロジー推進室兼任

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
一般法務、企業法務、保険法・保険業法

(2015年12月24日「基礎研レター」)

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【保険業法の法改正は保険比較サイトのあり方を変えるか?そして消費者契約法改正の動向は】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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