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- 中国:25年4~6月期GDPの評価-夏霧が立ち込める中国経済。堅調な成長率とは裏腹に懸念材料は山積
2025年07月24日
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1. 2025年4~6月のGDPの評価
中国国家統計局が2025年7月15日に発表した25年4~6月期の実質GDP成長率は、前年同期比+5.2%と、前期(25年1~3月期)の同+5.4%から小幅に減速した。季節調整後の前期比(年率)は、+4.5%と前期の+4.9%から減速した(図表1)。
前年同期比成長率の需要項目別寄与度をみると、最終消費が+2.8%pt(前期+2.8%pt)、総資本形成が+0.9%pt(同+0.5%pt)、純輸出が+1.7%pt(同+2.1%pt)であった(図表2)。純輸出に関しては、輸出が堅調な一方、輸入の減少幅が縮小したことで寄与度が低下したとみられる。内需に関しては、経済対策の下支えが続いている。ただし、投資は実質ベースで減速しているとみられることから、在庫増により総資本形成の寄与度が高まった可能性がある。
前年同期比成長率の需要項目別寄与度をみると、最終消費が+2.8%pt(前期+2.8%pt)、総資本形成が+0.9%pt(同+0.5%pt)、純輸出が+1.7%pt(同+2.1%pt)であった(図表2)。純輸出に関しては、輸出が堅調な一方、輸入の減少幅が縮小したことで寄与度が低下したとみられる。内需に関しては、経済対策の下支えが続いている。ただし、投資は実質ベースで減速しているとみられることから、在庫増により総資本形成の寄与度が高まった可能性がある。
産業別の実質GDP成長率をみると、第1次産業は前年同期比+3.8%(前期同+3.5%)、第2次産業は同+4.8%(前期同+5.9%)、第3次産業は同+5.7%(前期同+5.3%)であった(図表3)。製造業や情報通信・ソフトウェア・ITが堅調なほか、金融業が改善した一方で、建築業が急減速した。不動産業の成長率は、辛うじて前年増を維持している。
米中摩擦によって対米輸出は悪化しているものの、輸出全体は堅調であり、外需と政策効果による安定が続いている。もっとも、自動車などで価格競争が深刻化しており、GDPデフレーターは9四半期連続で前年同期比でマイナスとなった(図表4)。当面は様子見姿勢での経済運営が続くと見込まれるが、政策の息切れ感が強まってきたなか、翌年も視野に追加経済対策が検討され始める可能性はある。米中交渉の動向や、足元で強化され始めた過当競争是正の動きなどにも引き続き注視が必要だ。
米中摩擦によって対米輸出は悪化しているものの、輸出全体は堅調であり、外需と政策効果による安定が続いている。もっとも、自動車などで価格競争が深刻化しており、GDPデフレーターは9四半期連続で前年同期比でマイナスとなった(図表4)。当面は様子見姿勢での経済運営が続くと見込まれるが、政策の息切れ感が強まってきたなか、翌年も視野に追加経済対策が検討され始める可能性はある。米中交渉の動向や、足元で強化され始めた過当競争是正の動きなどにも引き続き注視が必要だ。
2.実体経済の動向
(生産・投資・外需)
生産の動向について、6月の前年同月比の伸び率(実質)をみると、鉱工業部門では、前月から伸びが高まった(図表5)。化学や一般設備、コンピュータ・通信設備等では伸びが高まったのに対して、鉄鋼や自動車では伸びが小幅に低下した。サービス業部門では、伸びが前月から小幅に低下した。情報通信・ソフトウェア・ITでは伸びが高まった一方、卸・小売は伸びが低下した。
PMI調査の結果をみると、製造業では、25年2月から3月にかけて改善したが、4月以降は景気の好不況の境目である50を下回る水準で推移している(図表6)。サービス業では、25年に入り50をやや上回る水準で推移を続けており、6月は前月から小幅に低下した。同調査で需要不足と回答する企業の比率は、24年7月以降、具体的には発表されていないが、25年6月には、製造業で依然として拡大していると説明されており、需要不足は改善していない。
生産の動向について、6月の前年同月比の伸び率(実質)をみると、鉱工業部門では、前月から伸びが高まった(図表5)。化学や一般設備、コンピュータ・通信設備等では伸びが高まったのに対して、鉄鋼や自動車では伸びが小幅に低下した。サービス業部門では、伸びが前月から小幅に低下した。情報通信・ソフトウェア・ITでは伸びが高まった一方、卸・小売は伸びが低下した。
PMI調査の結果をみると、製造業では、25年2月から3月にかけて改善したが、4月以降は景気の好不況の境目である50を下回る水準で推移している(図表6)。サービス業では、25年に入り50をやや上回る水準で推移を続けており、6月は前月から小幅に低下した。同調査で需要不足と回答する企業の比率は、24年7月以降、具体的には発表されていないが、25年6月には、製造業で依然として拡大していると説明されており、需要不足は改善していない。
投資の動向について、6月の固定資産投資の前年同月比伸び率(名目、以下同)は、前月から大きく低下した(図表7)。業種別にみると、製造業の投資は、素材産業や設備産業を中心に伸びが低下した。設備投資は、依然として2桁の伸びを続けており、前月から加速した。インフラ投資も、ユーティリティを中心に前月から伸びが低下した。不動産開発投資は、前月に続きマイナス幅が拡大した。
外需の動向について、6月の輸出(ドル建て)の伸びは、前月から高まった(図表8)。国・地域別では、米国向けでマイナス幅が縮小した。ASEAN向けは高水準で推移しており、伸びは前月から高まった。EU向けは伸びが低下、日本向けは上昇した。財別では、自動車の伸びが高まったほか、携帯電話のマイナス幅が大きく縮小した。一方、鉄鋼やアルミでは伸びがマイナスに転じた。輸入(ドル建て)は、伸びがマイナスからプラスに転じた。貿易収支は、約1,150億ドルの黒字となり、前年同月比で増加した。
外需の動向について、6月の輸出(ドル建て)の伸びは、前月から高まった(図表8)。国・地域別では、米国向けでマイナス幅が縮小した。ASEAN向けは高水準で推移しており、伸びは前月から高まった。EU向けは伸びが低下、日本向けは上昇した。財別では、自動車の伸びが高まったほか、携帯電話のマイナス幅が大きく縮小した。一方、鉄鋼やアルミでは伸びがマイナスに転じた。輸入(ドル建て)は、伸びがマイナスからプラスに転じた。貿易収支は、約1,150億ドルの黒字となり、前年同月比で増加した。
(消費・家計)
消費の動向について、小売売上高の伸びをみると、6月は前月から高まった(図表9)。財、外食サービスともに伸びが低下した。とくに、外食サービスの減速が顕著となっている。フードデリバリー業界での値引き競争の激化や党・政府機関向けの接待等の倹約励行強化の影響が指摘されている。
一定規模以上企業を対象にした統計で財の品目別の動向をみると、衣類等や宝飾品で伸びが低下したほか、化粧品は伸びがマイナスに転じた(図表10)。耐久消費財の買い替え支援策の対象となっている商品は、引き続き高水準の伸びを続けているが、家電・AV機器や通信機器、(タブレットを含む)オフィス用品等では伸びが低下した。家具および自動車では伸びが小幅に高まった。不動産関連の財(建築・内装材)の伸びは低下した。
消費の動向について、小売売上高の伸びをみると、6月は前月から高まった(図表9)。財、外食サービスともに伸びが低下した。とくに、外食サービスの減速が顕著となっている。フードデリバリー業界での値引き競争の激化や党・政府機関向けの接待等の倹約励行強化の影響が指摘されている。
一定規模以上企業を対象にした統計で財の品目別の動向をみると、衣類等や宝飾品で伸びが低下したほか、化粧品は伸びがマイナスに転じた(図表10)。耐久消費財の買い替え支援策の対象となっている商品は、引き続き高水準の伸びを続けているが、家電・AV機器や通信機器、(タブレットを含む)オフィス用品等では伸びが低下した。家具および自動車では伸びが小幅に高まった。不動産関連の財(建築・内装材)の伸びは低下した。
(2025年07月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
三浦 祐介のレポート
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