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- 7%台半ばの堅調な成長続くも、先行きのインフレリスクに注意
2018年11月05日
インド経済は16年11月の高額紙幣廃止や17年7月の物品サービス税(GST)導入を背景とする景気停滞局面を脱し、消費主導の力強い成長軌道が戻ってきている。4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比8.2%増と、高成長だった前期の同7.7%増から更に上昇し、2年ぶりの8%成長に到達した(図表1)。比較対象となる昨年4-6月がGST導入前の経済の混乱で消費と投資が鈍化していたことから、ベース効果1が成長率を押し上げたものと考えられる。
1 ベース効果とは、実質GDPを前年比で示す場合、比較対象となる前年の実質GDPの水準が高い(または低い)と今年の上昇率が低く(または高く)なる算術的な影響を意味する。
1 ベース効果とは、実質GDPを前年比で示す場合、比較対象となる前年の実質GDPの水準が高い(または低い)と今年の上昇率が低く(または高く)なる算術的な影響を意味する。
経済の先行きは、7-9月期まではGST導入による景気減速の反動から高めの成長が続くものの、ベース効果の剥落によって成長率の低下は避けられないだろう。しかし、来春の総選挙を控えて政府支出と農村部の消費が拡大することから、7%台半ばの堅調な成長は続こう。モディ政権は財政赤字目標(GDP比)を緩めることにより今年度予算のインフラ整備や農村・中小企業支援策に重点配分している。来春の総選挙を控えて政府支出は拡大しよう。もっともインドは中期的な財政健全化計画の途上にあり、総選挙後には財政再建を進める可能性が高い。19 年度後半には政府部門の景気の押上げは期待できなくなりそうだ。
民間投資については、まずインフラや住宅開発などの政府プロジェクトが呼び水となって建設投資をサポートするだろう。また内需拡大を背景に製造業の設備稼働率が上向くなど、企業は生産能力の拡張に前向きになってきているほか、景気が回復したインド市場が魅力的な投資先と判断されて外国直接投資が前年を上回っており、設備投資も底堅く推移しよう。さらに今後はGST導入や破産倒産法などモディ政権の構造改革のプラス効果が顕在化することも投資の持続的な拡大に寄与するものと見込まれる。一方、金利が上昇するなかで国有銀行が不良債権処理を進めていくことから、貸出の大幅な拡大は見込みにくい。設備投資の本格回復にはもう暫く時間が必要だ。
先行きの懸念事項はインフレの加速である。足元の物価は食品価格の下落により一旦落ち着きを取り戻しつつあるものの、燃料価格は上昇を続けている。石油の輸入依存度の高いインドでは、足元の国際原油価格の上昇は国内燃料価格の上昇に加え、経常赤字の拡大に繋がる。国際金融市場において米国の金融引き締めを背景とする新興国通貨安の動きが続く中では、慢性的な経常赤字というインド経済の脆弱性は通貨ルピー安を通じて輸入インフレを加速させる恐れがある。これに対してRBIは、今年6月と8月の金融政策決定会合で政策金利を0.25%ずつ引き上げている(図表5)。10月の会合では、金融政策は据え置かれたものの、12月には利上げを再開する可能性は高そうだ。物価を安定させて高インフレ体質から脱却しなければ、現在の消費主導の成長に水を差しかねないだけに、物価動向と金融政策の行方は引き続き注目を集めるだろう。
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経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
(2018年11月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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