2017年09月11日

米国経済の見通し-消費主導の景気回復持続も、当面ハリケーンの影響や、米国内政治状況などで経済は流動的

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 米国の4-6月期成長率(前期比年率)は、+3.0%(前期:+1.2%)と前期から伸びが加速。設備投資の好調に加え、前期に不振であった個人消費が復調し、消費主導の景気回復の持続を確認。
     
  2. トランプ政権発足から7ヵ月以上経過したものの、重要政策と位置付けたオバマケアの見直しが頓挫するなど、同政権は期待された成長重視政策で目立った成果を挙げていない。さらに、ロシア問題やトランプ大統領の失言によって政治資本の毀損が続いている。
     
  3. 一方、足元は米国を襲った大型ハリケーンが短期的な攪乱要因であるが、労働市場が順調に回復する中で消費が堅調推移しているほか、設備投資の回復も明確となるなど、米実体経済の回復基調は持続している。
     
  4. 当研究所では成長率(前年比)は、17年が+2.1%、18年が+2.6%と予想している。引き続き、減税などのトランプ政権による経済政策押し上げは、17年がゼロ、18年も0.3%程度に留まるとの従来からの見方に変更はない。
     
  5. 金融政策は、9月にバランスシートの縮小を開始した後、12月の追加利上げを見込んでいるが、物価が落ち着いている中、ハリケーンの影響に伴う米経済動向によっては利上げ時期を先延ばしする可能性がある。
     
  6. 米国経済に対するリスク要因は、北朝鮮をはじめとする地政学リスクに加え、米国内政治の混乱を引き起こしているトランプ大統領自身が最大のリスクである。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1.経済概況・見通し
  ・(経済概況)4‐6月期の成長率は前期から伸びが加速、個人消費が復調
  ・(経済見通し)成長率は17年+2.1%、18年+2.6%を予想
2.実体経済の動向
  ・(労働市場)賃金回復はもたついているものの、労働需給のタイト化は持続
  ・(設備投資)設備投資の回復が明確、今後はハリケーンの影響を見極め
  ・(住宅投資)住宅需要は強いものの、熟練労働者の不足が回復に水を差す可能性
  ・(政府支出、財政収支)
   当面は政府閉鎖が回避も、18年度予算編成、税制改革は不透明
  ・(貿易)外需寄与度は2期連続でプラスも、ハリケーンの影響が攪乱要因
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)エネルギー価格の物価押し上げが逓減
  ・(金融政策)
   ハリケーンの影響を見極めも、9月バランスシート縮小開始、12月追加利上げを予想
  ・(長期金利)18年末にかけて緩やかな上昇を予想
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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