2017年09月07日

オーストラリアの4-6月期GDPは前期比0.8%増~景気拡大の世界最長記録を更新~

経済研究部 研究員   神戸 雄堂

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9月6日、オーストラリア統計局(ABS)は、2017年4-6月期のGDP統計を公表した。4-6月期の実質GDP成長率は前期比0.8%増(季節調整系列、以下同様)と前期の同0.3%増から加速した。その結果、1991年から今期まで104四半期連続で景気後退(2四半期連続のマイナス成長)を回避し、世界最長記録を更新した1。また同日に公表された2016/17年度のGDPは前年度比1.9%増(原系列)と、外需の伸び悩みによって前期の同2.7%増から悪化した。
 
1 従来の最長記録は前期までのオーストラリアと1982年から2008年までのオランダの103四半期連続。

1.四半期GDP概況(需要側): 内需・外需ともに成長率を押し上げ。

需要項目別に見ると、内需は、家計(家計消費)と公的部門(政府消費、公的固定資本形成)が牽引し、成長率を押し上げた。外需は、輸出が堅調で純輸出が増加し、成長率を押し上げた(図表1)。
(図表1)【需要項目別】実質GDP成長率の推移 GDPの60%近くを占める家計消費は、前期比0.7%増と前期の同0.5%増から改善した。賃金の伸びこそ鈍いものの、低インフレによって堅調に推移している。

政府消費は、同1.2%増と前期の同1.0%増から改善した。2015年以降、連邦政府に加えて州・地方政府でも、景気の下支えとして運営費を急速に増加させている。

総固定資本形成は、公的部門が牽引し、前期比1.5%増と前期の同0.4%増から改善した。民間部門では、同1.1%減と前期の同1.0%増から悪化した。内訳は、住宅投資が同0.2%増(前期:同3.7%減)と改善したものの、企業設備投資が同2.1%減(前期:同2.6%増)と落ち込んだ。公的部門では、同11.9%増と前期の同2.1%減から改善した。

純輸出は、輸出が同2.7%増、輸入が同1.2%増となった結果、成長率寄与度が0.3%ポイント(前期:同 -0.9%ポイント)と前期から転じて成長率を押し上げた。ただし、通関ベースで見ると、対前期比で輸出は減少し、輸入は増加した結果、貿易収支黒字は減少した。輸出は、コモディティ価格の下落によって非農産物輸出額が大きく減少し、輸出総額を押し下げた。輸入は多くの項目で増加し、輸入総額は増加した。

2.四半期GDP概況(供給側): 全項目でプラス成長。引き続きサービス業が牽引役。

供給項目別に見ると、農林水産業が前期のマイナス成長からプラス成長に転じ、全項目でプラス成長となった (図表2)。
(図表2)【供給項目別】実質GDP成長率の推移 農林水産業は、前期比0.4%増と前期の同4.0%減から改善した。3月に北東部に上陸したサイクロンの影響が一巡し、農業が同0.5%増(前期:同4.6%減)、林業・水産業が同0.1%減(前期:同0.5%減) と改善した。

鉱工業は、前期比0.9%増と前期の同0.6%増から改善した。製造業が同1.8%増(前期:同0.9%減)、建設業が1.4%増(前期:同1.3%増)と改善した一方で、鉱業が同0.6%増(前期:同0.8%増)、電気・ガス・水道が同1.4%減(前期:同1.6%増)と悪化した。

GDPの約7割を占めるサービス業は、前期比0.6%増と前期の同0.9%増から悪化した。小売が同1.6%増(前期:同0.6%増)、宿泊・飲食が同2.1%増(前期:同1.6%増)、情報通信が同2.1%増(前期:同0.1%減)、専門・科学・技術サービスが同2.5%増(前期:同1.3%増)、娯楽が同0.6%減(前期:同0.9%減)、その他サービスが同0.3%減(前期:同4.7%減)と改善した一方で、卸売が同1.9%減(前期:同1.2%増)、運輸・郵便・倉庫が同1.5%減(前期:同2.1%増)、金融・保険が同1.4%増(前期:同1.5%増)、不動産・物品賃貸が同0.1%減(前期:同1.6%増)、行政サービスが同1.3%増(前期:同2.1%増)、政府行政・国防が同0.3%減(前期:同0.3%増)、教育・学習支援が同0.3%増(前期:同0.4%増)、医療・福祉が同0.5%増(前期:同1.4%増)と悪化した。

3.2016/17年度GDP概況:外需の伸び悩みによって、前年度比は悪化。一方で内需は堅調。

2016/17年度(16年7月-17年6月)のGDPが4-6月期GDPと同日に公表された(図表3)。2016/17年度は前年度比1.9%増と前期の同2.7%増から悪化した。これは外需が伸び悩んだことが原因であり、内需寄与度は前年度を上回った。内需では、企業部門(設備投資)が下押ししたものの、家計部門(家計消費)と公的部門(政府消費・公的固定資本形成)が牽引した。
(図表3)需要項目別結果

4.先行きのポイント

家計消費は、賃金上昇率がインフレ率を上回る期間が長く、実質ベースでの賃金上昇を背景に堅調に推移してきた(図表4)。しかし、賃金上昇率の鈍化傾向が続き、足元ではインフレ率と同水準まで低下している。賃金上昇率は2014年下期以降、民間部門が常に公的部門を下回っており、その差は拡大している。失業率については17年始からの就業者数の増加に伴い、改善基調にある(図表5)。足元ではフルタイム労働者の増加が顕著になっているほか、7月に最低賃金の引き上げが行われたため、今後賃金上昇率も伸びていくと見られる。足元のインフレ率は、トランプ米政権への不安による米ドル安やコモディティー価格の回復を受け、豪ドル高が進んでおり、インフレ圧力が後退している。先行きのインフレ率も鈍いと見られ、雇用環境の改善とあわせて家計消費は堅調に推移していくであろう。
(図表4)インフレ率と賃金上昇率の推移/(図表5)失業率と就業者数の推移(原系列)
公的部門では、景気の下支えとして2015年から緊縮的財政政策から拡張的に転換し、政府消費と公的固定資本形成が顕著に増加している。5月に公表された17/18年度予算においては、10年間で750億豪ドル規模のインフラ投資が盛り込まれており、中長期的にも景気を下支えする見通しである。企業部門では、設備投資が低調であるが、足元の企業景況感や関連指標が改善基調にあり、先行きは回復していくであろう。商品市況においても、年初に鉄鉱石価格が下落したが、堅調な中国経済によって鉄鉱石需要が押し上げられ、5月を底に価格は回復しており、今後も上昇が続くと見られる。したがって、輸出や関連企業の業績改善を通じた投資の拡大にも寄与するだろう。
(図表6)インフレ率・政策金利・為替レートの推移 なお、オーストラリア連邦準備銀行(RBA)は、2011年から金融緩和を進めており、政策金利を16年8月に史上最低の1.5%まで引き下げ、据え置いているが、足元ではインフレ目標の下限を下回っている(図表6)。一方で、連邦準備銀行は、加熱している住宅市場を警戒しており、更なる引き下げは困難と見られる。9月5日の声明の中で、当面緩和的な金融政策を維持する方針を示している。
 
 

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経済研究部   研究員

神戸 雄堂 (かんべ ゆうどう)

研究・専門分野
財政

(2017年09月07日「経済・金融フラッシュ」)

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