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- ブラジルの4-6月期GDPは前期比0.2%増~民間消費の回復で景気拡大~
1.四半期GDP概況(需要側):民間消費が10四半期ぶりのプラス成長
政府消費は、同0.9%減と前期の同0.7%減からさらに悪化し、4期連続のマイナス成長となった。過去2年の景気後退による税収不足から政府は財源難に陥っているため、景気の下支え役となるには至らなかった。
総固定資本形成は、同0.7%減と前期の同0.9%減から改善したものの、4期連続のマイナス成長となった。民間部門においては、銀行貸出金利が低下したものの、依然として資本財輸入の減少傾向が続いているほか、設備稼働率も70%台で推移しており、回復の兆しは見られない。公的部門においても政府消費同様、緊縮的な財政政策が足かせになっていると見られる。
純輸出は、輸出が同0.5%増、輸入が同3.5%減となった結果、成長率寄与度が0.5%ポイント(前期:同0.6%ポイント)と前期に引き続き成長率を押し上げた。
通関ベースで見ると、輸出は、前期に引き続きコモディティ価格の回復と数量ベースの増加による一次産品輸出額の増加が輸出総額を押し上げた。輸入は、資本財こそ数量ベースで大きく減少したものの、輸入総額では微増であった。結果として、上半期の貿易収支黒字は1989年の統計開始以来最大の水準に達した。
1 労働者を不当な解雇から保護する制度であり、労働者が正当な理由なく解雇された場合等に積立金の引き出しが可能となる。17年3月から7月末まで自己都合退職者に対して、引き出し要件の緩和が認められた。
2.四半期GDP概況(供給側):サービス業が2期連続プラス成長
鉱工業は、前期比0.5%減と前期の同0.7%増から悪化した。鉱業が同0.4%増(前期:同1.8%増)、製造業が同0.1%増(前期:同1.1%増)、電気・ガス・水道が同1.3%減(前期:同3.1%増)、建設業が2.0%減(前期:同0.5%減)と全部門において悪化した。
GDPの約6割を占めるサービス業は、前期比0.6%増と前期の同0.2%増から改善した。小売が同1.9%増(前期:同0.2%減)、金融・保険が同0.2%減(前期:同0.6%減)、不動産が同0.8%増(前期:同0.2%増)と改善した一方で、運輸・倉庫・郵便が同0.6%増(前期:同3.1%増)、情報通信が同2.0%減(前期:同1.9%増)、その他サービスが同0.8%増(前期:同0.9%増)と悪化した。保健衛生・教育は同0.3%減(前期:同0.3%減)と横ばいであった。
3.先行きのポイント
4-6月期における民間消費拡大の要因は、インフレ率の低下とFGTSの引き出し開始である。インフレ率は、16年始から緩やかに低下し、足元の17年7月には前年比2.7%と、インフレ目標(3.0%~6.0%)の下限を下回るまでに至った。中央銀行は17年7月に4年ぶりに政策金利を1桁台(9.25%)にまで引き下げるなど継続的に金融緩和を進めている(図表3)。中央銀行公表のレポートでは、2017年のインフレ率は引き続き3%程度で推移すると見込まれており、引き続き消費拡大の要因になると見られる。
一方で、自己都合退職者に対するFGTSの引き出し緩和期間は17年7月末をもって終了しており、一時的な押し上げ要因であると考えられるため、今後は雇用環境の改善が必要となるだろう。雇用環境は、15年以降失業率が悪化しており、17年3月には統計開始以来最悪の水準に達したが、足元ではやや低下している(図表4)。賃金上昇率は堅調に推移しており、就業者の拡大によって消費拡大が見込まれるが、足元の失業率の改善は非正規雇用者の増加によるものであり、本格的な雇用環境の改善には時間を要するであろう。
財政赤字の大半は社会保障院の赤字であり、手厚い年金制度が原因となっている。財政状況の改善には年金制度改革が不可欠であるが、テメル大統領の汚職疑惑浮上等によって年金改革法案の審議は遅々としている。法案の成立には、上下院で2回ずつ5分の3以上の賛成を得る必要があり、これまでの審議において当初案からの譲歩を迫られ、実効性の低下が懸念されている。一方で年金改革実現によって消費マインドを悪化させる懸念もある。テメル政権は財政状況が悪化している中、財政再建とさらなる景気拡大の両立という難しい舵取りを迫られるだろう。
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(2017年09月06日「経済・金融フラッシュ」)
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