2017年08月10日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(8月号)~輸出はレバラン休暇の影響で下振れ

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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シンガポールの17年6月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比5.9%増(前月:同1.4%減と上昇し、3ヵ月ぶりのプラスとなった。輸出の伸びは医薬品の変動に加え、ベース効果も剥落して勢いが鈍ってきているものの、基調としては主力の半導体と石油化学製品を中心に増加傾向を維持していると見られる。なお、総輸出額は前年同月比5.6%増(前月:同10.3%増)、総輸入額も同4.6%増(前月:同16.2%増)と、それぞれ大きく低下した結果、貿易収支は43.3億ドルの黒字と、前月から9.2億ドル黒字が拡大した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同3.1%増と、前月の同26.6%増から大きく低下した(図表12)。電子製品の内訳を見ると、IC(同18.1%増)と好調を維持する一方、通信機器(同9.7%減)とダイオード・トランジスタ(同22.1%減)が下げ幅を拡大、PC(同2.4%減)、PC部品(同5.4%減)も減少した。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学は同7.3%減と、前月の同3.3%増から再びマイナスに転じた。化学製品の内訳を見ると、石油化学製品が同11.2%増(前月:同17.1%増)と好調を維持する一方、医薬品が同35.6%減(前月:同15.7%増)と下げ幅を拡大させた。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの17年6月の輸出額は前年同月比0.8%増と、前月の同14.0%増から大きく低下した。年前半の輸出は海外経済の回復を受けて一次産品と電子製品を中心に二桁増で推移していたが、ベース効果が剥落して輸出の勢いは弱まりつつある。一方、輸入額は前年同月比2.5%減(前月:同16.6%増)とマイナスに転じた。結果、貿易収支は21.5億ドルの赤字と、前月から5.9億ドル赤字が縮小した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同4.4%増と、前月の同18.8%増から低下した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、電子データ処理機(同11.0%増)が高水準を維持したものの、半導体デバイス(同6.1%増)が緩やかな伸びに止まり、計測制御機器(同2.6%減)や電気遠距離通信機器(同32.7%減)、家電製品(同76.6%減)も落ち込んだ。その他9品目については電子機械・部品(28.6%増)や金属部品(同18.7%増)、イグニッション・ワイヤーセット(同13.7%増)、機械・輸送用機器(同1.1%増)が増加した一方、木工製品・家具(同42.0%減)、その他鉱業製品(同16.9%減)、化学(同5.0%増)、ココナッツオイル(同4.5%減)、その他製造品(同2.0%減)が減少するなど、品目毎にバラつきが見られた。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年08月10日「経済・金融フラッシュ」)

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