2017年06月27日

資金循環統計(17年1-3月期)~個人金融資産は、前年比48兆円増加の1809兆円に、企業の現預金残高は過去最高を更新

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.その他注目点: 企業の現預金残高は過去最高を更新、国内銀行は外債を売り越し

2016年度の資金過不足を主要部門別にみると、従来同様、企業(民間非金融法人)と家計部門の資金余剰が政府(一般政府)の資金不足を補い、残りが海外にまわった形となっている(図表10)。前年度との比較では、企業の資金余剰が5.5兆円減少した一方で、家計の資金余剰は7.8兆円増加した。家計の資金余剰増加については、雇用者の増加によって雇用者報酬が伸びた割に消費が伸び悩んだことなどが背景にあるとみられる。民間部門(企業+家計)の資金余剰がやや増加した一方で、一般政府の資金不足が減少したため、海外部門の資金不足がやや拡大した。
 
3月末の民間非金融法人のバランスシートを見ると、現預金残高は255兆円とこれまでの過去最高であった昨年9月末(245兆円)を大きく上回り、過去最高を更新した(図表11)。企業が現預金を積み上げる動きが続いている。なお、12月末との対比では、現預金が11兆円増加した一方で借入金が6兆円増加したため、企業の純借入(借入金-現預金)は5兆円減の146兆円となった。
(図表10)部門別資金過不足(年度)/(図表11)民間非金融法人の現預金・借入
(図表12)預金取扱機関と日銀、海外の国債保有シェア/(図表13)国内銀行の資金フロー(主な資産)
国庫短期証券を含む国債の3月末残高は1083兆円で、12月末から横ばいとなった。

国債の保有状況を見ると(図表12)、これまで同様、預金取扱機関(銀行など)の保有高が減少(202兆円、12月末比10兆円減)し、保有シェアも低下した(18.7%、12月末は19.6%)。一方、大規模な国債買入れを継続している日銀の保有高は引き続き増加(427兆円、12月末比7兆円増)し、シェアも39.5%(12月末は38.8%)と4割に肉薄している。日銀は近頃、国庫短期証券の残高を落としているうえ長期国債の買入れペースも縮小しているため、増勢はやや鈍化しているものの、今後も大規模買入れ継続に伴ってシェアが上昇していくことになる。

なお、海外部門の国債保有高も116兆円と12月末から2兆円増加。シェアも10.8%(12月末は10.6%)と若干上昇している。海外勢はドル調達コストの関係で有利な条件で円を入手できる状況が続いており、国債に資金が流入している。
 
最後に、国内銀行の1-3月期の資金フローを確認すると(図表13)、近年同様、国債からの資金流出、現預金と貸出の増加が続いているが、対外証券投資は流出(取り崩し)となっている。対外証券投資は、昨年10-12月期に大幅な流出となったが、1-3月期もその流れが続いたことになる。昨年秋の米大統領選後に米国債利回りが急上昇(価格が急落)し、保有国債に損失が発生したことなどを受けて、地銀などで外債投資の動きが消極化したためとみられる。
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2017年06月27日「経済・金融フラッシュ」)

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