コラム
2017年05月01日

2015年最新国勢調査結果・都道府県別生涯未婚率データが示す「2つのリスク」-お年寄り大国世界ランキング1位・少子化社会データ再考-

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

文字サイズ

はじめに

平成27年(2015年)国勢調査の結果をもとに都道府県別の男女別生涯未婚率(50歳時点で1度も結婚経験がない人の割合)が発表された。

未婚率は前回の2010年の国勢調査結果からさらに男女とも上昇した。まずは、生涯未婚率が高い10エリアと低い10エリアを参考までに示してみたい(図表1)。
【図表1】50歳までに1度も結婚したことがない人の割合が高い10エリア・低い10エリア(%)
ただランキングを眺めただけでは、各自治体の全国における位置づけをみることには便利であるものの、それが一体何を意味しているのかについては漠然とした理解にしかならない。

このため、次に、男女別に一体何人に1人が50歳になるまで結婚経験がない(以下、未婚)エリアとなっているのかを、検証してみたい。

男性は全てのエリアで6人に1人以上が未婚者

図表2からは、ランキングで見るよりもいかに男性が未婚化しているかが見えてくる。しかも、女性の未婚化と異なり未婚化の度合いに分散(ちらばり)が少なく、全エリアで6人に1人以上が未婚であるという結果が示されている。
【図表2】「何人に1人が未婚者か」統括表
日本は、国の調査では男女とも約9割が「いずれ結婚するつもり」1の社会である。

その希望が50歳までに叶っているエリアとは、上記の国の調査から男性の85.7%、女性の89.3%にいずれ結婚する意志があるとするならば、あくまでも全体として見てではあるが、未婚率が男性14.3%未満、女性10.7%未満であれば、50歳までに結婚希望がほぼ叶うエリアである、といえる。

そのような視点で図表1をみると、あくまでも全国レベルでの希望と各エリアでの現実との差異の比較ではあるものの2
50歳までに結婚希望がほぼ叶うエリアは
であり、

「男性の結婚希望とその現実が割合的にマッチングするエリアはない」「女性の結婚希望とその現実がマッチングするエリアは中部地方を中心としたわずか7エリアのみ」という、男性にとっては全エリアにおいて、女性においてもほとんどのエリアにおいて結婚希望への対策が必要とされていることがデータ的に見て取れる。
 
 
1 社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」:男性85.7%・女性89.3%
2 ただし、未婚者が結婚相手を求めてエリア間を移動することもあると考えると、エリアにおける未婚率を全国レベルで見た結婚希望割合にマッチングする程度に引き下げることは非常に意味があると考える。

エリアの未婚化がもつ2つのリスク

未婚化には「結婚希望が叶わない」という個人的なリスク以外に、社会的にはどんなリスクがあるだろうか。以下、大きく2つに分けることができるだろう。
 
1つ目は、日本の場合は婚外子比率が非常に低いために、未婚化はそのまま少子化につながる。少子化に伴う人口問題、すなわちそのエリアから人口がいなくなり自治体が存続不能となる「消滅可能性都市問題」3である。
消滅可能性都市リスク
2つ目、これが未婚化の議論においては非常に机上にのぼりにくいのであるが、単独世帯(総務省統計局による定義:世帯人員が1人の世帯)リスクである4

この単独世帯リスクについては、未婚化について様々な立場の方と議論する中でも、先方から筆者にこのリスクについて質問されることがまずない状態である。
単独世帯リスク
単独世帯は最新の国勢調査結果でも、前回調査と同様に3割を超えている(図表3)。

単独世帯は、1人世帯主が心身の病気を患って誰も気がつかない、倒れていたり亡くなっていたりしいても気がつかない、本人が就業不能・介護等になっても支える人がいない、すなわち、その家で何か問題が起こっていても周囲に気づかれにくい(気づくのに遅れる)という社会不安リスクが、単独ではない世帯のそれに比べて高くなってしまう。
【図表3】単独世帯比率の推移(1人住まい世帯の急増)
未婚化は、少子化によって多くの自治体が消滅する可能性が高まるだけではなく、生き残った自治体においても「単独世帯リスクの上昇」という社会不安の上昇可能性を孕んでいることを、今回の調査は改めて示す形となった。

そのあり方は何であれ、1人より2人、2人より3人、「ともに支えあう人がその世帯にいる社会作り」が急務となっているのではないだろうか。
 
3 2014年5月 「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務大臣)が分析結果を発表。
4 単独世帯増加のリスクの詳細については、「単身世帯の増加と求められる対応 ~高齢単身者の現実」みずほ銀行産業調査部「みずほ産業調査」2016No.1等を参考にされたい。
Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

(2017年05月01日「研究員の眼」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【2015年最新国勢調査結果・都道府県別生涯未婚率データが示す「2つのリスク」-お年寄り大国世界ランキング1位・少子化社会データ再考-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

2015年最新国勢調査結果・都道府県別生涯未婚率データが示す「2つのリスク」-お年寄り大国世界ランキング1位・少子化社会データ再考-のレポート Topへ