コラム
2017年04月25日

伝統的メディアとSNS・新興メディア

経済研究部 取締役 部長 宮垣 淳一

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信頼が揺らぐ伝統的メディア

BREXIT、トランプ大統領誕生と事前の予想がはずれ、新聞やテレビといった伝統的メディアに対する信頼が大きく揺らいでいる。世論調査と結果のずれに見られる情勢把握力・予想力に対する疑問が生じていると共に世論形成への影響力も低下している。

一方で、台頭してきているのが、インターネットを通じたSNSや新興メディアである。トランプ大統領は毎日のように重要な政策情報をツイッターで発信するなど、活用は大きく広がっている。また米国では、ネット広告費がテレビ広告費を上回りつつあると報道されている。それでは、今後伝統的メディアはその存在感をどんどん低下させて行くのであろうか。

一方で、信頼が獲得できないSNS、新興メディア

日本でキュレーションサイトが相次いで閉鎖されたのは記憶に新しい。PVの獲得をひたらすら求めた結果、著作権の侵害などの不適切な情報管理・発信があったからだ。みなさんも最近は、検索エンジンを使って検索をかけるとあちらこちらの情報をかき集めたまとめサイトにばかり行ってしまい、なかなか信頼のおける情報にたどりつけないという経験をされているのではないだろうか。

海外においても、多くのスポンサーが、不適切な動画と共に自社の広告が掲載されていることを嫌い、ユーチューブから離反している。テレビを見る時間より、ネットに接する時間が長くなり、ネットの影響力が強大になっていることは事実である。しかし、情報の入手先として、SNSや新興メディアが信頼を獲得できているわけでは決してない。

試される信頼

今、日本国内においても北朝鮮問題など国民行動に大きな影響を与えるようなセンシティブな情報が伝統的メディアでも、SNSを含めたネット上でも発信されている。東日本大震災の際もSNSは大きな役割を果たしたが、この6年間で国内のSNSアクティブユーザー数は大きく増加しており、その影響力は6年前とは比べ物にならないくらい大きくなっている。SNSに頼ると情報源が偏り、暴走行動を引き起こすという意見もある。本当だろうか。来月からトイレットペーパーが値上げされるそうだ。石油ショックを経験された読者は少ないかもしれないが、当時「トイレットペーパーがなくなる」といった正しくない情報は伝統的メディアでも簡単に拡散され、買占め、買いだめを引き起こした。

伝統的メディアとSNS・新興メディアの信頼性を試される機会が案外早く来るかもしれない。伝統的メディアが信頼を取り戻せるのか、SNSなどが信頼を勝ち取ることができるのか注目していきたい。
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経済研究部   取締役 部長

宮垣 淳一 (みやがき じゅんいち)

研究・専門分野
経済研究部統括

経歴
  • 【職歴】
    1983年 日本生命保険相互会社入社
    2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
    2013年 日本生命保険相互会社 支配人
    2014年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部部長
    2020年4月 専務取締役経済研究部部長
    2024年4月より現職

(2017年04月25日「研究員の眼」)

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