2016年12月27日

消費者物価(全国16年11月)~物価の基調は弱いが、コアCPIは16年度末までにプラス転化

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は9ヵ月連続のマイナス

消費者物価指数の推移 総務省が12月27日に公表した消費者物価指数によると、16年11月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比▲0.4%(10月:同▲0.4%)と9ヵ月連続のマイナスとなり、下落率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.4%、当社予想は▲0.3%)通りの結果であった。

コアCPIはマイナスが続いているが、天候不順の影響で生鮮食品の上昇率が高まった(10月:前年比11.4%→11月:同21.6%)ため、総合は前年比0.5%(10月:同0.1%)と前月から上昇幅が拡大した。生鮮食品だけで消費者物価は0.8ポイント押し上げられた。

食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は前年比0.1%(10月:同0.2%)であった。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、電気代(10月:前年比▲6.8%→11月:同▲6.9%)、ガス代(10月:前年比▲7.8%→11月:同▲7.9%)の下落幅は前月からほぼ変わらなかったが、ガソリン(10月:前年比▲7.7%→11月:同▲4.1%)、灯油(10月:前年比▲19.0%→11月:同▲13.7%)の下落幅が縮小したため、エネルギー価格の下落率は10月の前年比▲7.9%から同▲6.7%へと縮小した。

一方、被服及び履物(10月:前年比1.2%→11月:同1.0%)、教養娯楽(10月:前年比1.0%→11月:同0.8%)、諸雑費(10月:前年比0.7%→11月:同0.4%)の上昇幅が縮小したことがコアCPIを押し下げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.52%(10月:▲0.62%)、食料(生鮮食品を除く)が0.12%(10月:0.14%)、その他が0.01%(10月:0.08%)であった。

2.12月の東京都区部は予想から大きく下振れ

16年12月の東京都区部のコアCPIは前年比▲0.6%(11月:前年比▲0.4%)と10ヵ月連続の下落となり、下落率は前月から0.2ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.4%、当社予想も▲0.4%)を下回る結果であった。
消費者物価指数(生鮮食品除く、東京都区部)の要因分解 ガソリン(11月:前年比▲3.2%→12月:同2.6%)、灯油(11月:前年比▲10.5%→12月:同1.0%)が2年1ヵ月ぶりに上昇に転じたことから、エネルギー価格の下落幅が11月の前年比▲9.8%から同▲8.5%へと縮小した。

一方、既往の円高による輸入物価下落の影響などから食料(生鮮食品を除く)(11月:前年比0.5%→12月:同0.2%)、教養娯楽(11月:前年比1.2%→12月:同0.6%)の上昇幅が縮小し、被服及び履物(11月:前年比0.3%→12月:同▲0.5%)がマイナスに転じた。

東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲0.45%(11月:▲0.52%)、食料(生鮮食品を除く)が0.04%(11月:0.11%)、その他が▲0.20%(11月:0.01%)であった。

3.コアCPIは16年度末までにプラス転化

景気は緩やかに回復しているが、消費の回復力が弱いこと、16年初からの円高による輸入物価の下落が幅広い品目で下押し圧力となっていることから、物価の基調は弱まっている。

一方、円安、原油高の進展を受けて、エネルギー価格の下落率は縮小傾向が明確となっており、東京都区部の12月分ではガソリン、灯油の前年比がプラスに転じた。エネルギー価格全体でも16年度末までには上昇に転じることが見込まれる。

既往の円高による物価下押し圧力はしばらく残るが、現状程度の水準が続いた場合、ドル円レートは16年度末にかけて前年よりも円安水準となる。現時点では、コアCPI上昇率は16年度末までにプラスとなった後、17年度入り後にはエネルギー価格の上昇を主因として0.5%程度まで伸びが高まると予想している。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年12月27日「経済・金融フラッシュ」)

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