2016年11月25日

【東南アジア経済】ASEANの消費者物価(11月号)~原油安による物価下押し圧力が弱まり上昇

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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(図表5)シンガポールCPI上昇率(寄与度) シンガポールの16年10月のCPI上昇率は前年同月比0.1%減と、前月(同0.2%減)から小幅に上昇した(図表5)。CPI上昇率は今年5月を底に緩やかな上昇傾向にある。

主要品目別に見ると、運輸は同0.2%減(前月:同0.5%減)と、ガソリン価格の下落幅の縮小によって5ヵ月連続で上昇した。また電気料金の下落幅が縮小して住宅・光熱費も同3.8%減(前月:同4.3%減)と上昇した。一方、食品は同1.9%増(前月:同2.2%増)と、パン・シリアルや肉類、フードサービスを中心に低下した。サービス価格は同1.4%増(前月:同1.5%増)と、通信サービス料金の低下が医療費の上昇を相殺して小幅に低下した。

自動車と住宅を除いたMAS(シンガポール金融管理局)のコアCPI上昇率は同1.1%増(前月:同0.9%増)と低水準ながらも、電気料金や液化ガス料金を中心に小幅に上昇した。

MASはインフレ予想を2016年が平均▲0.5%と低水準に止まり、2017年が0.5%~1.5%まで緩やかに上昇すると予測している。
(図表6)フィリピンCPI上昇率(寄与度) フィリピンの16年10月のCPI上昇率は前年同月比2.3%増と、前月(同2.3%増)から横ばいとなった(図表6)。

主要品目別に見ると、全体の4割を占める食品・飲料(酒類除く)が同3.4%増(前月:同3.1%増)と、大型台風を受けて農産物の生産が落ち込み、野菜・果物・コメを中心に上昇した。なお、今春から上昇傾向が続いていた住宅・水・電気・ガス・燃料は同0.9%増、運輸は同0.2%増と前月から横ばいとなった。

食品とエネルギーの一部を除いたコアCPI上昇率は同2.3%増と、前月の同2.3%増から横ばいとなった。

中央銀行はインフレ率予想を16年平均が目標を若干下回り、17-18年は目標圏内半ばまで上昇すると予測している。11月10日の金融委員会では、中央銀行はインフレ率が目標圏内(2~4%)の管理できる水準とし、政策金利を据え置いた。
(図表7)ベトナムCPI上昇率(主要品目別) ベトナムの16年10月のCPI上昇率は前年同月比4.1%増と、前月の同3.3%増から上昇した(図表7)。CPI上昇率は依然として政府目標の5%を大きく下回る水準で推移しているものの、昨年後半から上昇基調が続いており、2014年8月以来の4%台に達した。

主要品目別に見ると、保健・ヘルスケアは同46.8%増と、3月と8月に続いて医療費が引き上げられたことから一段と上昇した。また住宅・建材が同3.4%増(前月:同3.1%増)と上昇したほか、運輸が同3.7%減(前月:同5.7%減)もガソリン価格の値上げによってマイナス幅が縮小した。さらに教育は10.9%増と、新学年が始まった9月に続いて高水準となった。なお、食品は前月から横ばいの同2.6%増となった。

食料品とエネルギー、政府の価格統制品目(医療・教育)を除いたコアCPI上昇率は同1.9%増(前月:同1.9%増)となり、年明けから概ね横ばい圏の推移が続いている。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2016年11月25日「経済・金融フラッシュ」)

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