2016年11月07日

【10月米雇用統計】堅調な雇用増加、賃金の伸びが持続。10月の結果は、12月利上げに向けた支援材料。

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数は予想対比で小幅に下振れ、失業率は予想通りの結果

11月4日、米国労働省(BLS)は10月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で16.1万人の増加1(前月改定値:+19.1万人)となり、上方修正された前月改定値から低下、市場予想の+17.3万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(後掲図表2参照)。

失業率は4.9%(前月:5.0%、市場予想:4.9%)とこちらは前月から低下、市場予想に一致した(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.8%(前月:62.9%)と前月から低下した(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:労働参加率低下も、賃金は伸びており、全般的な労働需給の改善は持続

10月の非農業部門雇用者数は市場予想を小幅に下回ったものの、前月が+3.5万人上方修正されたことを考慮すれば、悪い結果とは言えないだろう。また、8~10月の平均月間増加数は17.6万人と5~7月平均の18.2万人に比べて小幅な低下に留まっており、雇用者数は堅調な増加が持続していると考えられる。

一方、家計調査で失業率が前月から改善したものの、労働参加率の低下にみられるように労働力人口の減少によるものであり、労働需給の改善を示しているものではないことには注意が必要だ。来月以降も労働参加率の低下が持続するか注目される。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.4%(前月:+0.3%、市場予想:+0.3%)と、前月、市場予想を上回った。さらに、前年同月比では+2.8%(前月:+2.7%、市場予想:+2.6%)と、前月、市場予想を上回り、09年6月(+2.9)に次ぐ伸びとなった(図表1)。

このようにみると、10月の結果は労働参加率の低下は気になるものの、雇用者数や賃金が堅調な伸びを示しており、全般的な労働市場の改善基調が持続していることを確認できる内容であったと言える。

11月のFOMC会合では、12月の追加利上げが示唆されたが、10月の雇用統計はその路線を堅持させる内容であったと評価できる。足元、大統領選挙に対する不透明感から資本市場は不安定な動きとなっており、選挙結果次第では追加利上げが先送りされる可能性は否定できないが、当研究所では12月の利上げ予想を維持している。

3.事業所調査の詳細:製造業が3ヵ月連続の減少

(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+14.2万人(前月:+17.4万人)と前月を下回った(図表2)。

サービス部門の中では、医療サービスが前月比+3.1万人(前月:+2.9万人)、金融サービスも+1.4万人(前月:+0.4万人)と、前月から伸びが加速したものの、人材派遣業が+0.6万人(前月:3.1万人)となったこともあり、専門・ビジネスサービスが+4.3万人(前月:+7.8万人)と伸びが鈍化したほか、小売業が▲0.1万人(前月:+2.2万人)と前月から減少に転じた。

財生産部門は、前月比横這い(前月:+1.4万人)となった。建設業が+1.1万人(前月:+2.3万人)と伸びが鈍化したほか、製造業が▲0.9万人(前月:▲0.8万人)、資源関連も▲0.2万人(前月:▲0.1万人)と前月から減少した。

政府部門は前月比+1.9万人(前月:+0.3万人)となった。内訳をみると連邦政府が+1.2万人(前月:+0.6万人)と前月から伸びが加速したほか、州・地方政府が+0.7万人(前月:▲0.3万人)と前月から増加に転じた。
前月(9月)と前々月(8月)の雇用増(改定値)は、前月が+19.1万人(改定前:+15.6万人)と+3.5万人上方修正されたほか、前々月が+17.6万人(改定前:+16.7万人)とこちらも+0.9万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+4.4万人の上方修正となった(図表3)。
 
なお、BLSの公表に先立って11月2日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+14.7万人(前月改定値:+20.2万人、市場予想:+16.5万人)となり、前月、市場予想を下回った。雇用統計、ADP社ともに10月は雇用者数の伸びが前月から鈍化していることを示した。
 
10月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.92ドル(前月:25.82ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.4時間)とこちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は891.65ドル(前月:888.21ドル)と前月から増加した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)
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窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
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