2016年09月08日

2016・2017年度経済見通し~16年4-6月期GDP2次速報後改定

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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2012年後半以降、大幅な円安が進む中でも生産拠点の海外シフトなどを背景に輸出は横ばい圏の推移が続いたが、2016年入り後の大幅な円高にもかかわらず内閣府作成の輸出数量指数、日本銀行作成の実質輸出(いずれも季節調整値)は今のところ横ばい圏で踏みとどまっている。しかし、為替変動の影響が輸出数量の変化に現れるまでにはタイムラグがあるため、円高による下押し圧力は今後さらに高まる可能性が高い。

海外経済は新興国を中心に減速傾向が続いている。日本の輸出ウェイトで加重平均した海外経済の成長率は2012年以降、過去平均(1980年~)を下回り続けているが、2016年の伸びは2015年からさらに低下することが予想される。当研究所では米国の利上げ再開、日本の金融緩和継続を背景とした日米の金利差拡大を主因として徐々に円安・ドル高が進むと予想している。このため、輸出は2016年度後半以降持ち直しに向かうが、海外経済の低成長が続くことから輸出の伸びが大きく加速することは見込めない。一方、輸入は国内需要の持ち直しに伴い伸びを高めることから、外需が景気の牽引役となることは当分期待できないだろう。外需寄与度は2016年度に前年比▲0.3%と3年ぶりのマイナスとなった後、2017年度は▲0.0%とほぼ横ばいにとどまると予想する。
実質輸出、輸出数量指数(季節調整値)の推移/日本から見た海外経済の成長率
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2016年3月から下落が続いており、7月には前年比▲0.5%までマイナス幅が拡大した。
財・サービス別の消費者物価(生鮮食品を除く) 人手不足に伴う人件費の上昇などを背景にサービス価格はプラスの伸びを維持しているが、原油価格下落に伴うエネルギー価格の大幅低下に加え、ここにきて円高による輸入物価低下の影響を受けやすい食料品、耐久財などでも上昇率の鈍化が目立つようになっている。エネルギー価格の低下幅は夏場以降縮小に向かう公算が大きいが、輸入品を中心とした財の物価下押し圧力が強まることから、消費者物価は当面マイナス圏の推移が続く可能性が高い。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測 コアCPI上昇率がプラスに転じるのは、円高、原油安の影響がほぼ一巡する2016年度末頃になると予想する。その後は円安、原油高に伴うエネルギー価格の上昇、景気回復持続に伴う需給バランスの改善が消費者物価を押し上げることから、コアCPIは2017年度にはゼロ%台後半まで伸びを高めるが、2017年度中に日本銀行が目標としている2%に達することは難しいだろう。コアCPI上昇率は2016年度が前年比▲0.2%、2017年度が同0.7%と予想する。
日本経済の見通し(2016年4-6月期2次QE(9/8発表)反映後)
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年09月08日「Weekly エコノミスト・レター」)

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【2016・2017年度経済見通し~16年4-6月期GDP2次速報後改定】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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