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- 若年層の消費実態-収入が増えても、消費は抑える今の若者たち
2016年08月05日
1――はじめに
今の若者は「お金がない」「お金を使わない」と言われるが、実際のところどうなのだろうか。本稿では、総務省「全国消費実態調査」を用いて、今の若者と消費意欲が旺盛と言われた「バブル期」の若者を比べる。第一弾の本稿では家計収支の状況を確認する。
2――可処分所得・貯蓄現在高の変化
1|若年単身勤労者世帯~バブル期より概ね増加、男性で増加が目立つ
30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得は、2014年では男性23.0万円、女性18.3万円である[図表1]。推移を見ると、男性は2009年でやや減少しているが、概ね増加傾向にある。女性は2014年で減少しているが2009年までは増加傾向にある1。また、バブル期の1989年と直近の2014年を比べると、男性は+4.6万円、女性は+2.0万円増加しており、消費者物価指数を考慮した実質増減率は男性+12.2%、女性+0.5%である[図表2]。
また、30歳未満の単身勤労者世帯の貯蓄現在高は、2014年では男性190.3万円、女性148.9万円である。女性は調査年による増減が大きいが、男性は概ね増加傾向にある。1989年と2014年を比べると、男性は+52.3万円(実質+23.8%)、女性は+16.9万円(同+1.3%)である。
以上より、30歳未満の単身勤労者世帯では、男性はバブル期より可処分所得が1割、貯蓄が2割増え、女性でもいずれも若干増えている(2009年では1989年を大きく上回る)。
つまり、30歳未満の単身勤労者世帯に注目すると、決して「今の若者はお金がない」わけではない。
30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得は、2014年では男性23.0万円、女性18.3万円である[図表1]。推移を見ると、男性は2009年でやや減少しているが、概ね増加傾向にある。女性は2014年で減少しているが2009年までは増加傾向にある1。また、バブル期の1989年と直近の2014年を比べると、男性は+4.6万円、女性は+2.0万円増加しており、消費者物価指数を考慮した実質増減率は男性+12.2%、女性+0.5%である[図表2]。
また、30歳未満の単身勤労者世帯の貯蓄現在高は、2014年では男性190.3万円、女性148.9万円である。女性は調査年による増減が大きいが、男性は概ね増加傾向にある。1989年と2014年を比べると、男性は+52.3万円(実質+23.8%)、女性は+16.9万円(同+1.3%)である。
以上より、30歳未満の単身勤労者世帯では、男性はバブル期より可処分所得が1割、貯蓄が2割増え、女性でもいずれも若干増えている(2009年では1989年を大きく上回る)。
つまり、30歳未満の単身勤労者世帯に注目すると、決して「今の若者はお金がない」わけではない。
2|若年非正規雇用者~20代後半大卒以上はバブル期の一人暮らしより多い
一方、若年層では非正規雇用者が増えており2、経済状況の厳しさから親元同居率も上昇している3。よって、今の単身勤労者世帯、つまり、一人暮らしができる若者には、同年代の中でも経済状況に余裕のある層が多い可能性がある。そこで、より経済状況の厳しい層として、非正規雇用者に注目して月々の可処分所得を推計する。
図表3に、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から非正規雇用者の月当たりの手取り額を推計した結果を示す。なお、同調査で示される賃金は所得税や社会保険料等を控除する前の税込み額である。よって、可処分所得を確認するために、同調査から推計した月収推計から、総務省「全国消費実態調査」の30歳未満の単身勤労者世帯の非消費支出(実収入と可処分所得の差分)を差し引いた。しかし、「正社員・正職員以外」の非消費支出は単身勤労者世帯のものより少ない可能性がある。さらに、20~24歳では年齢区分の違いも加わるため、図表3の非正規雇用者の推計値は実際より少ない可能性がある。
以上を踏まえて図表3を見ると、非正規雇用者の月当たりの手取り額は、男性の学歴計では20~24歳が16.6万円、25~29歳が19.8万円、女性の学歴計では20~24歳が15.4万円、25~29歳が17.6万円であり、いずれも2014年の30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得を下回る。また、非正規雇用者の月当たりの手取り額は、20代前半より後半の方が多く、同じ年齢階級では女性より男性、学歴計より大学・大学院卒の方が多い。この中で比較的手取り額の多い大学・大学院卒の25~29歳では、男性は22.1万円、女性は20.2万円であり、年齢区分の違いもあるが、いずれも1989年の30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得を上回る(実質ベース)。さらに、大学・大学院卒で25~29歳の非正規雇用女性は2014年の30歳未満の単身勤労者世帯をも上回る。なお、「正職員・正社員以外」のうち大卒・大学院卒は、20~24歳では男性15.2%、女性15.9%、25~29歳では男性32.8%、女性30.5%である。
以上より、20代の非正規雇用者の収入は、男性では同年代の一人暮らしの若者より少ないが、女性では20代後半で大卒以上であれば上回る。また、非正規雇用者でも、男女とも20代後半で大卒以上であれば(同年代の非正規雇用者の約3分の1)、月々20万円以上得ており、バブル期の一人暮らしの若者の収入を上回る。つまり、経済状況の厳しい非正規雇用者でも、20代後半で大学・大学院卒であれば、バブル期よりも収入があり、一律に「今の若者はお金がない」わけではないようだ。
一方、若年層では非正規雇用者が増えており2、経済状況の厳しさから親元同居率も上昇している3。よって、今の単身勤労者世帯、つまり、一人暮らしができる若者には、同年代の中でも経済状況に余裕のある層が多い可能性がある。そこで、より経済状況の厳しい層として、非正規雇用者に注目して月々の可処分所得を推計する。
図表3に、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から非正規雇用者の月当たりの手取り額を推計した結果を示す。なお、同調査で示される賃金は所得税や社会保険料等を控除する前の税込み額である。よって、可処分所得を確認するために、同調査から推計した月収推計から、総務省「全国消費実態調査」の30歳未満の単身勤労者世帯の非消費支出(実収入と可処分所得の差分)を差し引いた。しかし、「正社員・正職員以外」の非消費支出は単身勤労者世帯のものより少ない可能性がある。さらに、20~24歳では年齢区分の違いも加わるため、図表3の非正規雇用者の推計値は実際より少ない可能性がある。
以上を踏まえて図表3を見ると、非正規雇用者の月当たりの手取り額は、男性の学歴計では20~24歳が16.6万円、25~29歳が19.8万円、女性の学歴計では20~24歳が15.4万円、25~29歳が17.6万円であり、いずれも2014年の30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得を下回る。また、非正規雇用者の月当たりの手取り額は、20代前半より後半の方が多く、同じ年齢階級では女性より男性、学歴計より大学・大学院卒の方が多い。この中で比較的手取り額の多い大学・大学院卒の25~29歳では、男性は22.1万円、女性は20.2万円であり、年齢区分の違いもあるが、いずれも1989年の30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得を上回る(実質ベース)。さらに、大学・大学院卒で25~29歳の非正規雇用女性は2014年の30歳未満の単身勤労者世帯をも上回る。なお、「正職員・正社員以外」のうち大卒・大学院卒は、20~24歳では男性15.2%、女性15.9%、25~29歳では男性32.8%、女性30.5%である。
以上より、20代の非正規雇用者の収入は、男性では同年代の一人暮らしの若者より少ないが、女性では20代後半で大卒以上であれば上回る。また、非正規雇用者でも、男女とも20代後半で大卒以上であれば(同年代の非正規雇用者の約3分の1)、月々20万円以上得ており、バブル期の一人暮らしの若者の収入を上回る。つまり、経済状況の厳しい非正規雇用者でも、20代後半で大学・大学院卒であれば、バブル期よりも収入があり、一律に「今の若者はお金がない」わけではないようだ。
3――消費支出の変化
1|若年単身勤労者世帯~消費は抑える、男性より女性で消費意欲は高い
30歳未満の単身勤労者世帯の消費支出は、2009年までは男女とも概ね増加傾向だが、2014年では減少している[図表4・5]。2014年の消費支出は、男性は15.6万円(対1989年実質△9.3%)、女性は16.1万円(同△5.4%)である。
なお、前節では、30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得は男女とも概ね増加傾向にあった。また、調査年毎に可処分所得と消費支出の対1989年の実質増減率を比べると、いずれも可処分所得の方が高い。つまり、バブル期以降、若年単身勤労者世帯の消費支出は、可処分所得の増加ほどは増えていない。直近の2014年ではむしろ減っており、消費性向は低下傾向が続いている。
なお、消費性向は、概ね男性より女性の方が高いことが特徴的だ。実は、年収階級別に男女の消費性向を見ても、いずれの年収階級でも女性の方が高く4、女性は男性より消費意欲が高い。
以上より、今の若者は「お金を使わない」と言われるが、2009年頃までは特に男性ではバブル期と比べて「お金を使わない」わけではない。しかし、消費性向は低下傾向にあり、手元のお金が増えても消費を抑える傾向は強まっている。さらに、2014年ではバブル期より消費も減ることで、今の若者は「お金を使わない」状況にある。
30歳未満の単身勤労者世帯の消費支出は、2009年までは男女とも概ね増加傾向だが、2014年では減少している[図表4・5]。2014年の消費支出は、男性は15.6万円(対1989年実質△9.3%)、女性は16.1万円(同△5.4%)である。
なお、前節では、30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得は男女とも概ね増加傾向にあった。また、調査年毎に可処分所得と消費支出の対1989年の実質増減率を比べると、いずれも可処分所得の方が高い。つまり、バブル期以降、若年単身勤労者世帯の消費支出は、可処分所得の増加ほどは増えていない。直近の2014年ではむしろ減っており、消費性向は低下傾向が続いている。
なお、消費性向は、概ね男性より女性の方が高いことが特徴的だ。実は、年収階級別に男女の消費性向を見ても、いずれの年収階級でも女性の方が高く4、女性は男性より消費意欲が高い。
以上より、今の若者は「お金を使わない」と言われるが、2009年頃までは特に男性ではバブル期と比べて「お金を使わない」わけではない。しかし、消費性向は低下傾向にあり、手元のお金が増えても消費を抑える傾向は強まっている。さらに、2014年ではバブル期より消費も減ることで、今の若者は「お金を使わない」状況にある。
4――おわりに
「お金がない」「お金を使わない」と言われる今の若者だが、30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得はバブル期より増加傾向にあり、今の若者は決して「お金がない」わけではない。また、経済状況の厳しい非正規雇用者でも、20代後半で大卒以上であれば月々20万円以上得ており、一律に「お金がない」わけではない5。
また、消費支出については、30歳未満の単身勤労者世帯では、2009年頃まではバブル期より概ね増えており、「お金を使わない」わけではない。しかし、消費性向は低下傾向にあり、また、2014年ではバブル期より消費も減っていることから、可処分所得が増えても消費は抑える傾向は強まっている。
よって、今の若者はバブル期と比べて決して「お金がない」わけではなく、2009年頃までは特に男性では「お金を使わない」わけでもなかった。しかし、手元のお金が増えても消費は控える傾向は強まっており、今の若者は「お金を使わない」傾向は強まっている。
「若年層の消費実態(2)」以降では、同様に総務省「全国消費実態調査」のデータを用いて、社会環境の変化にも触れながら、若者の消費行動の変化について捉えていく。
また、消費支出については、30歳未満の単身勤労者世帯では、2009年頃まではバブル期より概ね増えており、「お金を使わない」わけではない。しかし、消費性向は低下傾向にあり、また、2014年ではバブル期より消費も減っていることから、可処分所得が増えても消費は抑える傾向は強まっている。
よって、今の若者はバブル期と比べて決して「お金がない」わけではなく、2009年頃までは特に男性では「お金を使わない」わけでもなかった。しかし、手元のお金が増えても消費は控える傾向は強まっており、今の若者は「お金を使わない」傾向は強まっている。
「若年層の消費実態(2)」以降では、同様に総務省「全国消費実態調査」のデータを用いて、社会環境の変化にも触れながら、若者の消費行動の変化について捉えていく。
1 単身世帯の集計世帯数は減少傾向にあるため(特に30歳未満女性)、過去からの傾向にも留意する必要有り。
2 総務省「労働力調査」より、雇用者に占める非正規雇用者の割合は上昇傾向。2015年では15~24歳の男性47.2%、女性53.6%、25~34歳の男性16.5%、女性41.3%。
3 総務省「親と同居の若年未婚者の最近の状況(壮年未婚者も含む)(2012年)」
4 総務省「平成26年全国消費実態調査」
5 一方、非正規雇用者は将来的な年収増を望みにくく、独身の生活では「お金がない」わけではないが、家族を持つ生活を考えると厳しい状況。
03-3512-1878
(2016年08月05日「基礎研マンスリー」)
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