2016年05月17日

“かくれメタボ”の生活習慣病リスク(1)~健診受診年のリスク

保険研究部 研究員   村松 容子

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■要旨

肥満でなくても、血液や血圧のうち複数項目が基準外である場合(いわゆる“かくれメタボ”)が問題となっている。“かくれメタボ”は、メタボと同様に心臓病を発症するリスクが高いが、現在の肥満を前提とする保健指導では、指導の対象外となっている。

そこで、健康診断結果データとレセプトデータを使って、標準的に使用されているメタボ判定を細分化した判定基準を作成し、細分化した判定結果ごとの生活習慣病リスクを確認した。まず、本稿「“かくれメタボ”の生活習慣病リスク(1)」では、メタボ判定の結果と、健診受診年の生活習慣病による入院との関係や医療費を分析した結果を報告する。続く次稿「“かくれメタボ”の生活習慣病リスク(2)」では、最初のメタボ判定の結果別に、5年後の判定結果や5年後の生活習慣病との関係を分析した結果を報告したい。

■目次

1――“かくれメタボ”が914万人~これまでのメタボ判定の課題
2――分析方法
  1|分析対象者の概要
  2|メタボ判定基準の概要
3――分析結果
  1|メタボ判定結果
  2|メタボ判定の結果と医療機関の受診状況
4――“かくれメタボ”や40歳未満の生活習慣病への対策強化とリスクの周知が必要

1――“かくれメタボ”が914万人~これまでのメタボ判定の課題

1――“かくれメタボ”が914万人~これまでのメタボ判定の課題

今年1月、厚生労働省研究班による「“かくれメタボ”が推計914万人」という推計結果1が報告された。

「メタボ」(正式には「メタボリックシンドローム」。以下「メタボ」とする。)とは、内臓脂肪が蓄積されることで代謝異常が重なり、心臓疾患や脳疾患、糖尿病などの生活習慣病の発症リスクが高い状態を言う。生活習慣病の予防や重症化防止のために、2008年度から40~74歳を対象に「特定健康診査」(以下「特定健診」とする。)が義務づけられ、メタボの判定が行われてきた。肥満であり、かつ、血液(血糖、脂質)や血圧の測定値が基準外の場合に「メタボ」や「メタボ予備群」と判定され2、保健指導が行われてきた。

ところが、肥満でなくても、血液や血圧のうち複数項目が基準外である場合(いわゆる“かくれメタボ”)は、「メタボ」と同様に心臓病を発症するリスクが高い。今回の厚生労働省研究班による研究は、そういったリスクを抱えた“かくれメタボ”が全国で推計914万人にのぼると推計するものだ。肥満を前提とする保健指導では、“かくれメタボ”は対象外となっている。

そこで、こういった研究をうけて「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」は、これまでの肥満を条件に指導対象者を選んできた制度を見直し、肥満でなくても血圧などの検査値が基準を超えれば、「非肥満保健指導」の対象とする方針が打ち出した。

このような背景のもと、健康診断結果データとレセプトデータを使って、“かくれメタボ”などの生活習慣病リスクを分析した。分析では、冒頭で紹介した研究における“かくれメタボ”を参考に、標準的に使用されているメタボ判定を細分化した判定基準を作成し、細分化した判定結果ごとの生活習慣病リスクを確認した。まず、本稿「“かくれメタボ”の生活習慣病リスク(1)」では、メタボ判定の結果と、健診受診年の生活習慣病による入院との関係や医療費を分析した結果を報告する。続く次稿「“かくれメタボ”の生活習慣病リスク(2)」では、最初のメタボ判定の結果別に、5年後の判定結果や5年後の生活習慣病との関係を分析した結果を報告したい。
 
1    2016年1月「厚生労働省科学研究 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究 平成27年度研究成果発表会抄録集」より。「非肥満者のメタボリックシンドローム(かくれメタボ)に関する大規模縦断研究」(研究代表者:名古屋芸術大学 下方浩史教授)によって行われた「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究」の参加者3,983人(観察開始時年齢40~79歳)の健診データを分析した研究。
2    血液(血糖、脂質)と血圧のうち、2つ以上基準外がある場合「メタボ」、1つのみ基準外がある場合「メタボ予備群」と判定される。詳細は図表3をご参照ください。

2――分析方法

2――分析方法

1分析対象者の概要

(1) 使用したデータ
分析に使用したデータは、(株)日本医療データセンターによる健康診断結果データベースとレセプトデータベースである3。これらのデータベースは、個人を特定しうる情報を完全に削除した上で市販されており、各種研究で活用されている。健康保険組合のデータであるため、60歳以上のデータが少ないほか、2008年度以降は後期高齢者医療制度が施行されたため75歳以上のデータを含まない。
図表1 分析対象者の男女別年齢分布(1回目の健診時) (2) 分析対象者
本稿では、2007~2014年のデータのうち、2007~2009年と、それぞれその5年後にあたる2012~2014年の少なくとも2時点で健診4を受けたサンプルを分析対象とした。データ期間中に3回以上健診を受けているサンプルは、より新しい5年間を分析対象とした5

分析対象となったのは133,892人である。対象者の1回目の健診受診時の男女別年齢分布は、図表1のとおりだった。

 
図表2 健診項目の「基準外」の定義 2メタボ判定基準の概要
今回の分析では、メタボの判定基準は特定健診で標準的に測定されている健診項目を用いた。肥満の判定は腹囲で行い6、判定で使われる腹囲や血液(血糖と脂質)と血圧の「基準外」は厚生労働省のホームページに掲載されている定義(図表2)を用いた。このように標準的な健診項目と基準値を用いた上で、腹囲の測定値に注目して、通常のメタボ判定を細分化した判定基準を作成した(図表3)。
図表3 本稿で使用した「メタボ判定」 例えば、腹囲が基準内であり、血液や血圧が基準外である場合は、「腹囲基準内メタボ(かくれメタボ)」または「腹囲基準内メタボ予備群」とした。また、腹囲を測定していない場合で、血液や血圧の測定値が基準外である場合は、「腹囲なしメタボ」または「腹囲なしメタボ予備群」とした。これらはいずれも、標準的なメタボ判定では「メタボ」に該当しない。

なお、これらの判定がつかないものは「判定不能(未受診項目あり)」とした7

3    データの一部を2012年度財団法人かんぽ財団の研究助成で購入した。本稿の発行にあたっては、(株)日本医療データセンター倫理委員会(IRB)にて内容の確認を行っている。本稿は、(株)日本医療データセンターの提供したデータに依存しており、筆者はその質についてチェックしていない。
4    40歳以上が受ける特定健診を含む。
5    本稿では、2時点の健診のうち1回目の結果のみを使用する。続く「“かくれメタボ”の生活習慣病リスク(2)」で5年後の結果を使用する。
6    肥満の基準は、CT撮影で腹部の断面を撮影した場合に「内臓脂肪の面積が100cm²以上」に相当する水準で決まっている。健診においては、CT撮影を行うより簡易に測定できる腹囲やBMIによる基準を使うことが多い。腹囲とBMIの関係については最終ページの(参考)をご参照ください。
7    図表3の条件より、腹囲、血液(血糖、脂質)、血圧の測定値のうち1つでも基準外の項目があれば、「判定不能(未受診項目あり)」以外に分類される。そのため、「判定不能(未受診項目あり)」には、メタボ判定に必要な項目をすべては測定していないものの、測定した項目については基準内だったサンプルが分類されている。

3――分析結果

3――分析結果

図表4 年齢別 メタボ判定結果 1メタボ判定結果
1回目の健診でのメタボ判定の結果を年齢別にみると、図表4のとおりとなった。

まず、特定健診の対象である40歳以上についてみると、「メタボなし」は年齢が高いほど減り、60歳以上では13.8%にとどまった。「メタボ」は40歳代以降で概ね7%程度と年齢による大きな差はなかったが、今回注目している「腹囲基準内メタボ(かくれメタボ)」は、年齢が高いほど多く、60歳以上では7.6%にのぼった。

続いて40歳未満についてみると、20歳代の70.5%、30歳代の36.5%が「判定不能(未受診項目あり)」だった。この年齢は特定健診の対象外であるため、受診者によってはメタボ判定に必要な健診項目のすべては測定していなかったことによる8。40歳以上とは違って、血液や血圧で基準外が複数ある「メタボ」や「腹囲基準内メタボ(かくれメタボ)」は少なかったが、基準外が1つある「予備群」の割合を合計すると、20歳代で25%程度、30歳代で35%程度であり、40歳代以降の4割程度と大きな差はない。40歳未満でも特定健診項目を受診し、早めにリスクを認識する必要があるだろう。
「服薬中」についてみると、年齢が高いほど多く、60歳以上では約3分の1にのぼった。
 
8    20歳代と比べて30歳代では「判定不能(未受診項目あり)」が大幅に減っているのは、年齢を前倒して特定健診と同じ健診項目を受診させている企業があるからだと考えられる。
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保険研究部   研究員

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
共済計理人・コンサルティング業務、生保市場調査

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