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- 中国経済と住宅バブル~住宅バブルか財政悪化かの選択を迫られる局面へ
住宅価格が上昇している背景には、住宅購入制限の緩和と金融緩和により、住宅販売が増勢を強めたことがある。2015年には住宅を購入する際の戸数や戸籍などの規制の緩和が各地で相次ぎ、住宅ローンを借りる際の頭金比率の条件も緩和されていった。また、2014年11月以降、中国人民銀行(中央銀行)は6度に渡って利下げを実施、預金基準金利(1年定期)は当初の3.0%から現在の1.5%へと1.5ポイント引き下げ、貸出基準金利(1年以内)も当初の6.0%から現在の4.35%へと1.65ポイント引き下げた(図表-10)。それに伴って住宅ローン金利が低下して、住宅ローン残高は高い伸びを示した(図表-11)。
その結果、住宅販売(面積)は2014年には1割近い前年割れだったが、2015年4月には前年を上回る水準に回復、その後は住宅在庫の高さを懸念する声が上がって一旦は息切れしかかったものの、2016年1-3月期には前年同期比35.6%増と再び勢いを取り戻した(図表-12)。
住宅価格は前述のとおり「半値戻し」したところだが、深圳市では2014年4月の直近高値より61.1%高い水準まで上昇するなど巨大都市を中心に10都市が(全70都市中)最高値を更新しており、バブルが再び膨張し始めた。一方、温州(浙江省)市では2011年8月の直近高値よりも22.7%安いレベルで低迷するなど下値不安が拭いきれない都市も多い(図表-15、16)。中国政府は、下値不安の払拭できない多くの都市では住宅購入制限の緩和(頭金比率の引き下げなど)や税制優遇(不動産取得税、営業税)などで住宅販売を推進して在庫圧縮を支援する一方、深圳市や上海市などバブル懸念が再燃した都市では、住宅購入制限の強化や土地供給の積極化などでバブル再燃を防止しようとしている。即ち、住宅サイクルは地域毎に2極化しており、それぞれの事情に応じて、住宅販売の促進とバブルの抑制という正反対の政策が同時に実施されている。従って、全国一律で同一方向に作用する金融政策の発動タイミングは極めて難しい状況におかれている。
4.今後の注目点
このまま景気が下ぶれせずに推移すれば、前述の住宅販売の促進とバブルの抑制という正反対の政策を同時に実施できるため、住宅サイクルの2極化は徐々に収束に向かうと思われる。
しかし、過剰設備・過剰債務の整理が本格化する中で、下半期にインフラ投資の財源のひとつである中央予算が残っていないようだと、景気が再び下ぶれする可能性もある。その時、中国政府は住宅バブルの抑制を優先して財政赤字の拡大で対応するのか、それとも財政の健全性を優先して、住宅バブル膨張を許容する形で成長率を押し上げるのか、今後の景気動向と政策運営は要注目である。
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三尾 幸吉郎
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(2016年04月28日「Weekly エコノミスト・レター」)
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