2016年04月04日

最近の人民元と今後の展開(2016年4月号) 

三尾 幸吉郎

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  • 3月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・市場実勢ともに上下動を繰り返しつつ上昇する展開となった。前回レポートでは1米国ドル=6.5元台での展開と予想していたが、想定以上に堅調な動きとなった。また、人民元と他通貨が変化方向の面で同調する傾向が強まった。中国人民銀行が通貨バスケットに対する安定を重視する姿勢を鮮明にした結果と見られる。

  • 4月の人民元(市場実勢)は1米国ドル=6.4元台で戻りを試す展開を予想している。また、米国では利上げの時期や利上げペースに対する見方が割れており、市場コンセンサスが定まっていないことから、同6.4~6.6元と幅広な取引レンジを想定している。

[ 3月の動き ]

3月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・市場実勢ともに上下動を繰り返しつつ上昇する展開となった。市場実勢(スポット・オファー、中国外貨取引センター)は、第1営業日(3/1)に当月安値となる1米国ドル=6.5542元を付けた後はじりじりと上昇、中旬には同6.5元を挟んで比較的大きめの上下動を繰り返すこととなった。その後月末には再び上昇、3月末は前月末比1.5%元高・ドル安となる同6.4575元で高値引けとなった。一方、基準値は市場実勢とほぼ連動して推移、1-2月のように両者が大きく乖離することもなく、第2営業日に当月安値(同6.5490元)、最終営業日に当月高値(同6.4612元)と高安値もほぼ同時に付けることとなった(図表-1、2)。
前回レポートでは「3月の市場実勢は引き続き1米国ドル=6.5元台で弱含みの展開が続く」としていたが、月末には同6.4元台半ばまで上昇するなど人民元は想定した以上に堅調だった。
 
(図表-1) 人民元(対米国ドル)の価格推移/(図表-2) 最近の人民元レート(対米国ドル)
一方、世界通貨を見ると、米利上げが遠退いたとの見方が支配的になったことから米国ドル全面安となった。欧州ユーロが米国ドルに対して前月末比4.9%上昇したほか、ロシア(ルーブル)やブラジル(レアル)も反転上昇、アジアでも韓国(ウォン)が同8.1%上昇した。こうした環境下で、人民元は同1.2%上昇と相対的に小幅な上昇に留まった(図表-3)。また、3月は人民元と他通貨が変化方向の面で同調する傾向が強まった。欧州ユーロや韓国ウォンの値動きと重ねて見ると、変動性(ボラティリティ)こそ小さかったものの相場が上下に変動する時期はほぼ同時だった(図表-4)。中国人民銀行が通貨バスケットに対する安定を重視する姿勢を鮮明にした結果と見られる。
 
(図表-3)3月の主要新興国通貨の変化率(対米国ドル、前月末比、WM/Reuters)/(図表-4)人民元と他通貨(対米国ドル)

[ 今後の展開 ]

(図表-5)製造業と非製造業のPMI さて、4月の人民元(市場実勢)は1米国ドル=6.4元台で戻りを試す展開を予想する。また、米国利上げに対する見方が割れていることから、同6.4~6.6元と幅広なレンジを想定している。
まず、中国で4/1に発表された製造業PMIは50.2%と8ヵ月ぶりに拡張収縮の境界となる50%を上回り、非製造業PMI(商務活動指数)も高水準を維持したことから、景気下振れのリスクが低下した(図表-5)。人民元をショートしていた投機筋(ヘッジファンドなど)がポジションを整理する動きに出れば思わぬ急伸もありうるだろう。但し、中国はまだ構造改革の渦中にあり、改善が一時的なものとなる可能性が高いことから、同6.3元台をトライするのは難しいと見ている。一方、米国では利上げの時期や利上げペースに対する見方が割れておりコンセンサスが定まっていない。従って、コンセンサスが一定範囲に収束するまでは、景気指標の動きに一喜一憂しやすくボラティリティは高まるだろう。また、米利上げの時期が早まるとの見方に傾けば、投機筋が再び人民元をショートする可能性もあるが、中国政府は下落を阻止する姿勢を鮮明にしており、外貨準備も十分なことから、同6.6元台に下落する可能性は低いと見ている。
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(2016年04月04日「経済・金融フラッシュ」)

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