2016年03月28日

持ち家に住み替えて、良くなったこと、わるくなったこと‐昨今の住宅取得事情(その6)

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎

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■要旨

持ち家を取得して住み替えた層の住み替え前後の改善度でみると、住宅の快適さ・使いやすさの改善度が高く、住居費負担や光熱費が低くなっている。中古住宅の取得世帯の住居費負担は、持ち家取得世帯全体より改善度が高くなっている。

■目次

1――持ち家取得層の改善度
  ・住宅の広さや快適性は◎、住居費負担や光熱費は×
2――新築注文住宅取得層の改善度
  ・新築注文住宅取得世帯の住居費負担はさらに×
3――中古住宅取得層の改善度
  ・中古住宅取得世帯の住居費負担は△
 
 
「昨今の住宅取得事情」の第6回は、平成25年住生活総合調査から、持ち家への住み替え前後における、住宅や周辺環境の変化を見る。
 

1――持ち家取得層の改善度

1――持ち家取得層の改善度

住宅の広さや快適性は◎、住居費負担や光熱費は×
図表1は、2009年以降5年間に持ち家に住み替えた世帯が、住み替え前後の改善状況を、12項目毎に、「大変良くなった」、「良くなった」、「変わらない」、「悪くなった」から1つのみ選択して回答した割合を示している。「大変良くなった」と「良くなった」の合計を、ここでは改善度とする。
これを見ると、「(2)住宅の快適さ・使いやすさ」の改善度が90.1%で最も高く、続いて、「(1)住宅の広さ・間取り」が78.0%、「(4)住宅の断熱性、換気、採光など」が75.8%で高くなっている。
これに対し、「(6)ローン、家賃など住居費の負担」の改善度は25.7%で、最も低くなっている。住み替えに、住まいの快適性を求めた分、ローンの負担を高めている状況が分かる。また、「(5)光熱費の負担」の改善度が43.1%と比較的低く、住居が広くなった分、従前より光熱費負担が高くなっていると推察できる。
 
図表1 持ち家への住み替え前後の改善度

2――新築注文住宅取得層の改善度

2――新築注文住宅取得層の改善度

新築注文住宅取得世帯の住居費負担はさらに×
新築注文住宅を取得した世帯に限ってみると、この傾向はさらに顕著になる。「(2)住宅の快適さ・使いやすさ」の改善度は96.2%と高く、「大変良くなった」が6割近くを占めている。「(7)災害に対する安全性」(71.9%)や、「(9)自然とのふれあいや外部空間のゆとり」(65.0%)など周辺環境の改善度も高くなっている。
一方、「(6)ローン、家賃など住居費の負担」は21.1%と低く、「悪くなった」が5割近くに及んでいる。自分のこだわりをとことん追求できる注文住宅の特徴が出ていると言えそうである。
 
図表2 新築注文住宅取得世帯の住み替え前後の改善度

3――中古住宅取得層の改善度

3――中古住宅取得層の改善度

中古住宅取得世帯の住居費負担は△
中古住宅の取得世帯をみると、「(6)ローン、家賃など住居費の負担」の改善度は32.4%と、持ち家全体や新築注文住宅に比べ高い。「悪くなった」は24.5%と新築注文住宅の半分程で、「変わらない」が4割以上を占めている。これに対し、「(2)住宅の快適さ・使いやすさ」は82.4%で、持ち家全体や新築注文住宅より低いものの、8割以上を占めており、住居費負担を抑えて快適性を求めた結果、中古住宅を選択したという、ある種賢い消費行動がうかがえる。
 
図表3 中古住宅取得世帯の住み替え前後の改善度
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社会研究部   都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任

塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

経歴
  • 【職歴】
     1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
     2004年 ニッセイ基礎研究所
     2020年より現職
     ・技術士(建設部門、都市及び地方計画)

    【加入団体等】
     ・我孫子市都市計画審議会委員
     ・日本建築学会
     ・日本都市計画学会

(2016年03月28日「基礎研レター」)

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