2016年03月09日

米国経済の見通し-個人消費主導の景気回復持続も、懸念される資本市場の実体経済への影響

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 米国の10-12月期成長率(前期比年率)は、+1.0%と7-9月期の+2.0%から大幅に低下した。在庫投資、純輸出、設備投資が成長率を押下げたほか、労働市場の回復基調が持続しているにも係わらず、個人消費が+2.0と前期から伸びが鈍化したことが大きい。
     
  2. 16年以降に中国株式市場の下落や中東の地政学的リスクの高まりを受けて世界的にリスク回避姿勢が強まっており、米金融市場環境は引き締っている。今後、資本市場の不安定な状況が長期化する場合には実体経済への影響が懸念される。
     
  3. 成長率(前年比)は、資本市場の安定を前提に、16年は+2.3%、17年は+2.5%を予想する。引き続き、労働市場の回復が消費を下支える一方、原油安やドル高に伴い民間設備投資や外需の弱い状況が続こう。
     
  4. 金融政策は、物価目標達成時期が不透明であることに加え、16年以降の資本市場の動向が実体経済に与える影響を見極めるため、16年の追加利上げは2回程度に留まろう。
     
  5. 米国経済に対するリスク要因としては、中国や新興国を含めた海外経済や資本市場の動向に加え、大統領選挙を睨んだ政治リスクが挙げられる。トランプ氏が共和党の大統領候補に選出される可能性が高まっているが、トランプ氏が大統領に選出される場合に政策の予見可能性が大幅に低下することで米実体経済にネガティブに影響しよう。

 
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1. 経済概況・見通し
  ・(経済概況)10-12月期は成長率が大幅に低下。労働市場回復も個人消費の伸びが鈍化
  ・(経済見通し)成長率は16年+2.3%、17年+2.5%を予想
2.実体経済の動向
  ・(個人消費)労働市場の回復が消費を下支え、注目される資本市場の動向
  ・(設備投資)原油安、ドル高が重石。今後、原油安に伴う設備投資削減は緩やかに解消へ
  ・(住宅投資)住宅市場は伸び鈍化も回復が持続
  ・(政府支出、財政収支)17年度予算は既に大枠合意、注目される来年度以降の財政スタンス
  ・(貿易)外需の成長率のマイナス寄与持続もマイナス幅は縮小する見込み
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)総合指数の足元の上昇は一時的。総合指数とコア指数の乖離は持続
  ・(金融政策)16年の追加利上げは2回(0.50%)を予想
  ・(長期金利)緩やかな上昇を予想
 
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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