2016年02月08日

住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向

基礎研REPORT(冊子版) 2016年2月号

社会研究部 准主任研究員   塩澤 誠一郎

文字サイズ

1――はじめに

2017年4月より、消費税率を10%に引き上げることが予定されている。それが国民の住宅取得にどのような影響を及ぼすのか、8%に引き上げられた2014年と、その前年を中心に「戸建注文住宅の顧客実態調査」結果の分析を行った。

2――消費税の影響

1|消費税率の引き上げを動機とする取得層が急激に増加

まず、建築動機について見ると、「消費税が上がりそうだから」を動機に挙げる割合が、全体で2012年に20.9%、2013年に30.8%と、急激に高くなっている。[図表1]

40歳未満に限ってみると、さらに割合が高くなっており、2012年、2013年では、全体との開きが約5~6ポイントと大きくなっている。消費税率の引き上げが、特に低年齢層に駆け込みを促す結果となっていたことがわかる。
建築動機回答結果推移
2|消費税率の引き上げは、取得層の資金計画への圧迫感を大きく高めた

 消費税の資金計画への影響を見ると、「資金計画にかなり圧迫感があった」、「資金計画に少し圧迫感があった」の合計である「圧迫感あり」の割合は2007年以降年々低下し続けたが、2013年に反転し、消費税率が引き上げられた2014年は、全体で75.5%となっている。40歳未満の割合はさらに高く8割を超えており、やはり低年齢層の資金計画への影響がより高いことがわかる。[図表2]
消費税の資金計画への影響推移
3|2013年に消費税率引き上げを考慮して取得を早めた取得層は75%以上

消費税増税の影響への対応に関する設問では[図表3]、2013年全体の「今後のアップを考慮して取得を早めた」の割合は75.2%に及び、2014年も66.6%と高くなっている。

40歳未満では、2013年が76.5%、2014年が69.5%と、全体をさらに上回っており、ここでも低年齢層における駆け込み需要の大きさがわかる。
消費税への対応回答比率の推移
4|消費税率の引き上げは、資金力の乏しい低年齢層の住宅の質を下げた

 消費税率引き上げが、住宅の質に与えた影響を、平均延べ床面積の推移でみると、平均延べ床面積が最も小さい20代は、2012年度から直線的に低下しており、30代は20代よりゆるやかではあるが同様に低下している。40代は2012年度の133.2㎡から2013年度は134.1㎡とやや上昇し、2014年は反転して、2012年を下回る131.5㎡となっている。

 これに対し、50代は、2012年の138.3㎡から、2013年が142.4㎡、2014 年が144.3㎡と直線的に上昇している。[図表4]

 このように、資金力のない低年齢層は、延べ床面積を縮小させることによって、資金的負担を調整していたと読み取れる。
世帯主年代別平均延べ床面積

3―消費税率引き上げに伴う負担軽減措置の効果

1|住宅ローン減税は、特に低年齢層に効果があった

「住宅ローン減税」は、消費税率の引き上げに対応して、平成25年度税制改正で適用期間が延長されるとともに、最大控除額が200万円から400万円に倍増され、住民税からの控除上限額も引き上げられるなど、大幅に拡充された。

「住宅ローン減税」が、住宅取得に効果があったかどうかを問う設問では、「大きい効果があった」と「まあ効果があった」との合計「効果あり」は、全体が、2013年に79%、2014年に83.2%で、4.2ポイントの増加である。

40歳未満では、2013年80.7%、2014年86.9%で、6.2ポイントの増加であり、全体に比べ、40歳未満に効果が高い結果となっている。[図表5]
住宅ローン減税の効果
2|すまい給付金も低年齢層に効果的

「すまい給付金」は、「住宅ローン減税」の効果が及びにくい低収入層に対し、住宅ローン減税とあわせて、消費税率引き上げによる負担の軽減を図るために導入された制度である。

すまい給付金が、住宅取得に効果があったかどうかを問う設問を見ても、2014年全体の「大きい効果があった」が15%、「まあ効果があった」が33.9%であるのに対し、40歳未満では、「大きい効果があった」が16.2%、「まあ効果があった」は37.6%と高くなっている。[図表6]

このように、「住宅ローン減税」、「すまい給付金」は、消費税増税に伴う負担軽減措置として導入されたが、比較的年収の低い低年齢層に、より効果が高かったことがわかる。
すまい給付金の効果

4――おわりに

以上のように、消費税率8%への引上げが行われた2014年と前年の調査結果を見ると、2017年に予定されている10%への引上げは、特に、年収の低い低年齢層の住宅取得に、間違いなく、大きな影響を与えると予想される。

2012年以降、建築費の高騰が続いており、今後も続くことになれば、消費税率の引き上げと相まって、取得資金負担がさらに高まり、取得を手控える層も増える可能性が高く、住宅の質のさらなる低下も懸念される。

低年齢層には、子どもの出生や成長を動機に住宅取得を検討する人も多い。住宅取得を手控える人が増えたり、取得できても、住宅の質が低下したりするならば、将来の日本を支えるために必要不可欠な少子化対策、次世代育成等に対しても、多大なマイナスの影響を及ぼすと考えられる。

「住生活の基盤である良質な住宅の供給」という住生活基本法の基本理念から遠ざかる状況にならないよう、現行の負担軽減策が十分かどうか、2015年以降の住宅取得の動向を見ながら、十分検証する必要があるだろう。

消費税率引上げの資金計画への圧迫感が8割にも達するという調査結果を見ると、住宅取得を望む収入の低い低年齢層を中心に、さらなる負担軽減策が期待されていると考えられる。

期待感の高い住宅取得という観点だけでなく、少子化対策、次世代育成等への影響という観点からも、年収の低い低年齢層に対する最も効果的な負担軽減策が検討・導入されることを期待したい。
 

 
  1 一般社団法人住宅生産団体連合会法人会員企業や関連団体を対象に、各企業において、毎年1~12月に成約した新築戸建注文住宅物件を無作為抽出し、営業担当者が調査票に記入する方法で実施。
  2 取得した住宅に居住した年から10年間、年末の住宅ローン残高に応じて毎年一定額を所得税から控除し、控除しきれない分は翌年の住民税から控除する制度。
  3 収入が一定以下の住宅取得者が対象。収入額の目安が消費税8%の場合510万円以下、10%の場合775万円以下で、収入に応じた額が現金で給付される。

このレポートの関連カテゴリ

64_ext_01_0.jpg

社会研究部   准主任研究員

塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

(2016年02月08日「基礎研REPORT(冊子版)」)

レポート

アクセスランキング

【住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向のレポート Topへ