- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 雇用・人事管理 >
- 「幸せ」のライフデザイン-“What”から“How”の時代へ
私は週末に自宅近くの大型スーパーマーケットによく出かける。そこにはレジが20台ほどあるが、たいていどこも長い列ができている。並んでいる間に特にすることもないので、時々、レジ係の動作を観察してみる。レジ係の業務はマニュアル化されており、どのレジに並んでも、まずは両手を揃えて「いらっしゃいませ」、最後に「ありがとうございます」と言う。
どのレジ係もジョブディスクリプションに基づき業務を遂行していると思われるが、実際の所作は千差万別だ。しっかり顧客と目を合わせて挨拶する人もいれば、気もそぞろに形式的に言葉をかける人もおり、仕事の質という点では雲泥の差がある。レジ係にはパートタイム雇用の人が多いが、同じマニュアルに基づく業務を行う場合も、心のこもった対応は扱う商品まで新鮮に感じさせる。そして何よりも従業員自身が活き活きと幸せそうに輝いて見える。
スーパーマーケットでは多くの高級食材も売っている。100グラム2000円の霜降り和牛や1万円を超えるマスクメロンなどもある。高級料理には高級食材が必要だが、高級食材を使った料理が必ずしもおいしい食事とは限らない。仕事上の接待で神経をすり減らしながら高級料理を食べても、あまりおいしいとは感じないだろう。気が置けない仲間と楽しく語りながらの食事は、簡素な素材を使った料理でも旨い。料理も何を食べるか“What”ではなく、どのように食べるか“How”が大切だ。
経済成長が物の豊かさをもたらしてきたが、それが一定の水準を超えると人々の生活満足度や幸福度の向上と一致しない「幸福のパラドクス」が生じる。今、日本では訪日外国人による「爆買い」が話題になっているが、多くの日本の人々が幸せな暮らしを求めてたくさんの物を必要とした大量生産・大量消費の時代は終焉を迎えた。本当に豊かで幸せな暮らしを実現するためには、「何」“What”ではなく、「どのように」“How”が重要な時代になっているのである。“What”から“How”へ、そこには時代と共に移り変わる「幸せ」のライフデザインを描くためのヒントがあるように思う。
土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2016年01月26日「研究員の眼」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月23日
他国との再保険の監督に関する留意事項の検討(欧州)-EIOPAの声明 -
2024年04月23日
気候変動-温暖化の情報提示-気候変動問題の科学の専門家は“ドラマが少ない方向に誤る?” -
2024年04月23日
今後お金をかけたいもの・金融資産 -
2024年04月23日
今週のレポート・コラムまとめ【4/16-4/22発行分】 -
2024年04月22日
2024年3月、グローバル株式市場は上昇が継続
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【「幸せ」のライフデザイン-“What”から“How”の時代へ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
「幸せ」のライフデザイン-“What”から“How”の時代へのレポート Topへ