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「おせち」と「初売り」-変貌する正月のライフスタイル
土堤内 昭雄
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ひとつは食文化としての「おせち」である。おせちは、数の子、黒豆、田作り、かまぼこ、伊達巻、栗きんとん、酢の物、焼き物など数々の海の幸と山の幸がお重に納まっている。正月に食べる祝いの料理として、ひとつひとつに意味があるのだ。数の子は子宝を、黒豆は無病息災を、田作りは豊作を願う食べ物であり、おせちに詰まった日本古来の食文化を次世代に伝えることはとても大事だろう。
もうひとつはライフスタイルとしての「おせち」だ。正月におせちを食べるのは、年末に日持ちする料理をたくさんつくり、普段は忙しい家族が一斉に仕事を休み、一家団欒するためではなかったか。かつて、元日はほとんどの店が休業し、初詣以外に出かけることも少なく、炬燵を囲んで家族団欒を楽しんだ。おせちは料理であると同時に、人々の正月の暮らし方を表徴するものでもあったのだ。
おせちを巡る変化は、われわれの正月のライフスタイルが大きく変わりつつあることを示している。近年では元日に「初売り」する商業施設が増え、デパートも元日から、多くは2日から営業をしている。消費行動と働き方は表裏の関係にあり、正月に消費者の需要があれば商業施設は営業し、働く人たちが必要になる。そのため正月を家族全員が揃って過ごすことが難しい家庭も多くなる。
元来、おせちには人々のライフスタイルや家族社会のあり方が内在していた。正月くらいはみんなが仕事を休み、不要不急の外出は控えて、家でのんびり過ごすのもいいものだ。今年、三越伊勢丹の首都圏8店舗は、従業員が正月をしっかり休めるようにと初売りを3日に延ばした。国際的にみても長時間労働が多い日本で、業界の横並び意識を超えた取り組みは重要ではないだろうか。
しかし、正月はみんなで仕事を休み、家族で団欒を楽しむ人もいれば、一人暮らしのために正月に家族団欒しようにもできない人もいる。正月3が日を一人で過ごす社会的孤立状況にあるお年寄りも増えている。元日から初売りに出かける人、経済的理由や初売りのために元日から働かざるを得ない人も少なくない。正月の「おせち」と「初売り」にみられる変貌する正月のライフスタイルは、少子高齢・人口減少時代を迎えた日本の新たな「消費」と「労働」のあり方を問うているように思えてならない。
(2016年01月19日「研究員の眼」)
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