コラム
2012年10月04日

幅広い分野で技術革新が進展する福祉機器

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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9月下旬、今年で39回目となる国際福祉機器展が、東京国際展示場で開催された。その広報紙によると約5万平方メートルの会場に約2万点の福祉機器等々が展示されているという。興味のあるブースで説明を受けながら歩くと、1日で観て回るのはとても困難である。来場者は福祉・介護関係の人々や学生から一般の高齢の夫婦連れまで大変幅広く、さらに今年は、介助者と共に又は単独で車椅子で来場している人の数も増えたように思われた。ここでは、今年の展示会で特に筆者の関心を引いたハイテク機器群を2つほど紹介したい。

一つ目のハイテク機器群はスマートフォンやタブレット端末を使い、コミュニケーションを支援する製品群である。例えば、聴覚障がい者向けのiPad用の手書き筆談用チャット・ソフト、またiPhoneやiPad用のBluetoothを使用したカードサイズの小型入力キーボード等々である。これらは、障がいを持つ人向けばかりでなく、タブレット端末の文字入力やタッチパネルの操作に馴染まないといった一般の高齢者のニーズに基づいて開発されたものではないだろうか。このほか、参考出品の生活支援ロボットのコントローラとしてタブレット端末を活用するなど、障がいを持つ人のコミュニケーションをICTで支援する製品や開発中の試作品の展示が、新しい動きとして目に留まった。近年普及が進むスマートフォンやタブレット端末は、福祉領域でも様々な応用開発が進んでおり、高齢者や障がいを持つ人の自立支援の強力なツールとなりそうである。
   二つ目のハイテク機器群は、近年、一段と注目度が高まっている生活支援用の各種ロボットである。既に実用化されている多様な形状のロボットも幾つか展示されていたが、以下で、参考出品されていた研究開発中の2つのロボットを紹介する。
   その一つはタブレット端末をコントローラに使った生活支援ロボットである。これは大手自動車会社が開発中のもので、形状は比較的小振りの円筒形のボディーに、カメラが組み込まれた平たい頭部とボディーの肩の位置に収まりのよい形の多間接型のアームが1本付いている。機能は、寝たきりの人などが部屋の中のモノを取る際に使う介助犬の働きを置き換えたものである。具体的には、利用者がタブレット端末でロボットの視覚認識システムを操作して床や棚などにある対象物を認識させ、その後はロボットが自動で対象物を拾い、初めに設定してあるベッドの横まで運んでくれるというものである。今後さらに、別の人が離れた場所から寝たきりの人の見守りを行ったり、遠隔操作で寝たきりの人を支援したりする新たな機能を開発するという。
   もうひとつは、介助者の簡単な操作で、ベッドから上体を起こして膝を立てた状態の対象者を抱え上げ、スムーズに車椅子への移乗を支援する移乗介助用のロボットで、デモンストレーションの際に多くの来場者の注目を集めていた。
   このように、今年の展示会は、介護現場の職員の負荷を減らしたり、利用者の困りごとを解決してQOLを高めたりする機器や器具の研究・開発が企業や大学等の研究機関で精力的に継続されているという状況が、以前にも増して実感される展示会であった。

これらの多種多様な福祉・介護機器や各種器具の研究・開発や改良のさらなる進展と普及によって、利用者のニーズを充足するとともに、家族を含めた介助や介護等に携わる関係者の様々な負荷を軽減することは、高齢化が急速に進行する社会全体にとって解決すべき重要な課題の一つである。人の労力だけに頼ることなく、日進月歩で進展する技術やITを最大限に活用した福祉機器の更なる開発と普及を望みたい。



<他の関連レポート>
   ・基礎研REPORT(冊子版) 2012年2月号 介護分野へ接近を始めた多様なロボット
   ・基礎研レポート 2012-07-31 高齢者のICT活用に向けて
   ・研究員の眼 2012-06-28 介護ロボットは普及するか
   ・研究員の眼 2012-07-19 高齢者とタブレット端末

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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

(2012年10月04日「研究員の眼」)

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