2001年03月25日

セルフメディケーションにおける大衆薬の役割と医薬品規制

  高橋 敏信
社会研究部 上席研究員   百嶋 徹
  小本 恵照

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1.
医療保険財政の逼迫を背景として、軽医療分野におけるセルフメディケーション(自己治療)は重要な政策的選択肢と位置づけられるようになった。大衆薬(1)(以下OTC薬と略称する:Over the counter drug)をセルフメディケーションの主要なツールとして育成していこうとする機運は世界的に高まりつつあるが、わが国ではOTC薬の安全性を有効成分の減量で維持しようとする傾向が強く、十分な有効性を確保することが難しい状況にある。OTC薬の規制緩和では常に「安全性と有効性のバランス」が問題となるが、セルフメディケーションを推進するなら、有効性の見地から規制のあり方を見直すと同時に、副作用情報の開示や消費者教育の充実など、総合的な対策が必要である。
2.
スイッチOTCでは、厳格な承認審査基準が維持されてきた。スイッチ成分は、医療用として有効性、安全性が確認されているにもかかわらず、医療用と同様の厳格な臨床試験の実施が再度求められ、製薬企業の開発負担増を招いている。審査期間も相対的に長く、市場投入時期が遅れるリスクもある。一方、スイッチOTC市場は、セルフメディケーション意識の遅れや安全性重視の販売規制から、立ち上がりが著しく遅れている。過小な市場規模が開発費等の回収を困難にし、製薬企業の開発意欲を阻害する悪循環に陥っている。副作用に関する知識の啓蒙や情報公開の徹底を前提に、国民医療費の削減に寄与するスイッチOTCの開発を誘導する政策が望まれる。
3.
OTC薬の流通規制については、設備構造要件や薬剤師の員数要件といった新規参入要件が緩和されるなど改善が進められている。消費者の指名買いやセルフ販売の拡大を踏まえ、薬局などでの情報提供機能の見直しなどが、今後の重要なテーマになると考えられる。また、流通慣行では、リベートを中心とする日本的取引慣行の見直しが進むとともに、卸売業者の統合が急速に進展するなど、医薬品流通システムの変革につながる動きが加速している。

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