2021年09月15日

日銀短観(9月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは3ポイント上昇の17と予想、非製造業は低迷が続く見込み

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 9月短観では、海外経済回復に伴う堅調な輸出や設備投資需要の回復を受けて大企業製造業の景況感が堅調を維持するものの、原材料価格の高騰や半導体等部品不足の深刻化が抑制要因となり、改善ペースは大きく鈍化すると予想する。非製造業では原材料価格高騰に加えて緊急事態宣言の延長・拡大が重荷となり、景況感の低迷が続くと見込む。飲食・宿泊など対面サービス需要の低迷が続いたことで、業種間の大幅な格差も存続しそうだ。
     
  2. 先行きの景況感は総じて横ばい圏に留まると予想。内外でワクチンの普及に伴う経済活動の回復が期待されるものの、冬場に向けて感染力の強いコロナ変異株の拡大やブレークスルー感染によるコロナ感染の再拡大も懸念されるため、楽観に傾きにくい。
     
  3. 今年度の設備投資計画は前年度比7.3%増へと若干上方修正され、前年度から大幅に持ち直すとの計画が維持されると予想。例年、9月調査では計画具体化に伴って上方修正される傾向が強いうえ、製造業を中心に投資余力が回復していること、昨年度から先送りされた計画が存在することが理由となる。ただし、コロナ禍の収束が見通せないうえ、対面サービス業の投資低迷が抑制に働くため、6月調査からの上方修正幅は例年を下回るだろう。
     
  4. 今回の短観で景況感や設備投資計画以外で注目されるのは、まず仕入・販売価格判断DIだ。世界的に資源価格が高騰するなか、企業の仕入価格の上昇圧力がどれだけ高まり、どの程度が販売価格に転嫁されているのかが着目点になる。転嫁されない分は企業収益の圧迫要因となる。また、前回に大幅な増加がみられたソフトウェア投資計画の動向も日本企業のデジタル化に対する本気度を計る一つの試金石になる。業種別では、緊急事態宣言の悪影響を最も強く受けている飲食・宿泊サービスの動向が注目される。前回調査時点で人手余剰感や資金繰りの逼迫感が強い状況にあったが、今回改善がみられるかが着目点になる。
(図表1)日銀短観業況判断DIの予測表
■目次

9月短観予測:半導体不足の深刻化、原材料価格の高騰、緊急事態宣言の拡大が重荷に
  ・大企業製造業の景況感改善ペースは鈍化
  ・今年度設備投資計画は小幅な上方修正へ
  ・注目ポイント:仕入・販売価格判断DI、飲食・宿泊サービスの動向など
  ・日銀金融政策への影響は殆どなし
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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