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- 「顧客本位の業務運営に関する原則」で投信の手数料は低下したか?
これまで法令改正等により投資家保護の取り組みが行われてきたが、一方で、これが最低基準(ミニマム・スタンダード)となり、金融機関の形式的・画一的な対応を助長してきた。そこで、金融機関の主体的な創意工夫によるベストプラクティスを目指して同原則を導入し、顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を促すことを狙ったものである。
投信の販売においても、これまで多くの問題が指摘されてきた(図表1右側)。売れ筋投信は特定のテーマを対象としたものが多く、販売手数料や信託報酬の高さも言われてきた。さらに従業員の業績目標が、販売手数料等収入に偏っていることや、系列の運用会社の販売がより重視されてきた。これらにより投信の回転売買(短期的な売買の繰り返し)が助長されてきた。
図表2の上段は、同原則が公表された2017年以降と、それ以前での新規設定ファンドの信託報酬率の比較である。左側の全ファンドでは2016年以前の信託報酬率の平均は年1.11%であったの対し、2017年以降に設定された投信では1.01%となり、わずかであるが、0.1%低下している。このうち、アクティブ・ファンドの信託報酬率では有意な低下は見られなかったが、インデックス・ファンドの信託報酬率は、2016年以前では年0.45%であったが、2017年には年0.25%になり、0.21%低下した。
図表2の下段は、最高販売手数料率の比較である。左側の全ファンドでは2016年以前の販売手数料率の平均は2.52%であったの対し、2017年以降に設定された投信では2.01%となり、0.52%低下している。このうち、アクティブ・ファンドの販売手数料は、2016年以前は2.82%であったが、2017年以降で2.50%になり、0.32%低下した。また、インデックス・ファンドでは、2016年以前の1.55%から、2017年以降は0.52%になり、1.02%低下した。なお、この比較は公表されている最高販売手数料率の比較であり、(キャンペーンなどを考慮した)実勢の手数料率ではないことに注意を要する。
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客員研究員 東北学院大学 経営学部
北村 智紀
研究・専門分野
(2020年06月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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