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2025年08月15日

QE速報:2025年4-6月期の実質GDPは前期比0.3%(年率1.0%)-トランプ関税下でも輸出が増加し、プラス成長を確保

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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● 4-6月期は前期比年率1.0%と5四半期連続のプラス成長

本日(8/15)発表された2025年4-6月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.3%(前期比年率1.0%)5四半期連続のプラス成長となった(当研究所予測7月31日:前期比0.2%、年率1.0%)。

国内需要は前期比▲0.1%の減少となったが、トランプ関税下でも輸出が増加し、外需が前期比・寄与度0.3%のプラスとなり、内需の低迷をカバーした。

高水準の企業収益を背景に設備投資が前期比1.3%の高い伸びとなり、民間消費も同0.2%と増加を続けたが、民間在庫変動が前期比・寄与度▲0.3%の大幅マイナスとなったため、国内民間需要は前期比0.0%の横ばいにとどまった。公的需要は、政府消費が前期比0.0%の横ばい、公的固定資本形成が同▲0.5%の減少となり、前期比▲0.3%と3四半期連続で減少した。

外需寄与度は前期比0.3%(前期比年率1.3%)と2四半期ぶりのプラスとなった。財貨・サービスの輸出が前期比2.0%となり、財貨・サービスの輸入の伸び(同0.6)%を上回った。

米国の関税引き上げが4月から本格化しているが、日本の輸出企業が自動車を中心に価格の引き下げで対応したこと、米国で関税引き上げ分の価格転嫁が本格化しておらず、米国の国内生産財に対する日本の輸出財の相対価格上昇が顕在化していないことから、実質ベースの財輸出は底堅い動きとなった。

名目GDPは前期比1.3%(前期比年率5.1%)と5四半期連続で増加し、実質の伸びを大きく上回った。GDPデフレーターは前期比1.0%(1-3月期:同0.8%)、前年比3.0%(1-3月期:同3.3%)となった。国内需要デフレーターが前期比0.3%(1-3月期:同1.0%)の上昇となったことに加え、円高・原油安の影響などから輸入デフレーターが前期比▲5.5%となり、輸出デフレーターの下落幅(同▲2.8%)を大きく上回ったことがGDPデフレーターを押し上げた。
 
2025年4-6月期のGDP1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定された。2025年1-3月期の実質GDP成長率は民間消費の上方修正などから、前期比年率▲0.2%のマイナス成長から同0.6%のプラス成長へ上方修正された。この結果、実質GDPは2024年4-6月期から5四半期連続のプラス成長となった。
<需要項目別結果>
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比0.2%と5四半期連続で増加した。物価高による下押し圧力は残っているが、生鮮食品を中心に物価の上昇ペースが鈍化したことが消費を下支えした。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、自動車、家電などの耐久財は前期比2.6%の高い伸びとなり、被服・履物、家具などの半耐久財も同0.4%の増加となったが、外食、旅行、宿泊などのサービスは前期比▲0.0%の横ばいにとどまり、価格高騰が続く食料品などの非耐久財は同▲0.5%と減少した。

雇用者報酬は、名目・前年比3.7%となり、1-3月期の同4.4%から伸びが鈍化した。実質雇用者報酬は前年比0.6%(1-3月期:同1.0%)と5四半期連続で増加したが、前期から伸びが鈍化した。名目雇用者報酬の伸びが鈍化したことに加え、家計消費デフレーターの上昇率が拡大したことが実質の伸びを抑えた1
 
住宅投資は前期比0.8%と2四半期連続で増加した。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は建築物省エネ法・建築基準法改正前の駆け込み需要で2025年1-3月に88.8万戸と2024年10-12月期の77.8万戸から大きく増加した後、4-6月期はその反動で60.1万戸へ急減した。

GDP 統計の住宅投資は工事の進捗ベースで 計上され、着工の動きが遅れて反映されるため、駆け込み需要の反動が顕在化する7-9月期は大幅な減少となる可能性が高い。
 
設備投資は前期比1.3%と5四半期連続で増加し、1-3月期の同1.0%から伸びを高めた。日銀短観2025年6月調査では、2024年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア・研究開発投資額、除く土地投資額)が3月調査から▲1.4%下方修正され、前年度比6.9%(実績)となった後、2025年度の設備投資計画は2025年3月調査から4.8%上方修正され、前年度比8.7%となった。

設備投資は、高水準の企業収益を背景に、人手不足対応の省力化投資、デジタル化に向けた情報関連投資、Eコマース拡大に伴う建設投資などを中心に回復基調が続いている。ただし、トランプ関税の影響もあり、先行きの企業行動は慎重化する可能性が高い。
 
公的需要は、政府消費が前期比0.0%の横ばい、公的固定資本形成が同▲0.5%の減少となった。
 
外需寄与度は前期比0.3%(前期比年率1.3%)と2四半期ぶりのプラスとなった。財貨・サービスの輸出が前期比2.0%の増加、財貨・サービスの輸入が前期比0.6%の増加となった。

米国の関税が引き上げられたが、自動車を中心に輸出企業が価格の引き下げで対応したことなどから、米国向け輸出は横ばい圏で踏みとどまった。
 
1 内閣府は2025年1-3月期1次速報から、従来の名目雇用者報酬を家計最終消費支出(除く持ち家の帰属家賃及びFISM)デフレーターで除したものに加え、家計最終消費支出デフレーターで除した実質雇用者報酬を公表することとなった(いずれも参考値)。2025年1-3月期の実質雇用者報酬は前者が前年比0.6%、後者が同1.0%である。
20257-9月期はマイナス成長となる公算大)
当研究所では、2025年1-3月期GDP2次速報が公表された6月時点では、2025年4-6月期はトランプ関税の影響を主因としてマイナス成長になると予想していたが、数量(実質)ベースの輸出が想定よりも上振れたことを主因として、プラス成長を確保した。

しかし、米国向けの輸出価格引き下げは国内企業の収益悪化をもたらしており、このことが先行きの国内需要の下押し要因となることが懸念される。また、収益の大幅悪化を伴う値下げを長期間続けることは難しく、すでに日本の主要自動車メーカーは米国での販売価格の引き上げに踏み切っている。米国での値上げは日本車の価格競争力の低下につながり、米国向けの輸出は数量ベースでの下押し圧力が高まる。現時点では、7-9月期は関税引き上げの影響が顕在化し、輸出が減少することに加え、建築物省エネ法・建築基準法改正前の駆け込み需要の反動で住宅投資が大きく落ち込むことから、6四半期ぶりのマイナス成長になると予想している。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年08月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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